2018年09月15日

くだを巻く


「くだを巻く」は,

とりとめのないことをしつこく言う,
とか,
酒によってとりとめないことをくどくど言う,

意味だが,『広辞苑第5版』には,

「糸車の筟(くだ)を巻く音がぶうぶうと音を立てることに結び付けて」

とある。『デジタル大辞泉』も,

「管(くだ)の連想からとも、この管に糸を巻きつけるとき、ぶうぶう音を立てるところからともいわれる。」

『大辞林第三版』は,

「『管』を連想して『巻く』といったもの」

とあるので,管の意味の,

糸繰り車の紡錘(つむ)に差して糸を巻きつける軸,

に準え,そこから,その音を連想し,喩えた,という流れになる。「管」にはいろいろな意味があるが,ここでは,

「機の具。緯絲(すきいと)を巻き付けて,梭(ひ)に納(い)れて,緯を遣るもの。筟,籰」(つまり,機はたを織るとき、緯よこ糸を巻きつける芯)

の意と,

「糸車の左の方にある紡錘(つむ)に挿む,小さき軸」(つまり,糸繰り車のつむに差して、糸を巻きつける軸)

の意とが問題だが,どうも,「糸車の,糸を巻きつける軸」の意ではないか,と思われる。

「くだを巻く」

の管は,

「筟」(フ)ないし「籰」(ワク)の字を当てていた「くだ」ではなく,「管」なのではないか,と思われる。つまり,『広辞苑第5版』の「糸車の筟(くだ)を巻く音」ではなく,「糸を巻きつける管」なのではないか。字鏡に,

「籰,纏絲者也,久太」

とあり,「和名抄」に,

「筟,纏(まく)絲管也,管子,久太」

とある(『大言海』)「くだ」は,「機」の「くだ」である。で,『大言海』は,糸車の軸の説明の後,

「車をめぐらせば,オビイトより,ツムに伝ひと,ぶうぶうと音をたつ。これに因りて,酔漢の,漫語(たわごと)をぶうぶう言ふを,くだをまくと云ひ,又何事にも,くだくだしく繰言するをも,くだをまく,くだまく,と云ひ,略して,くだとのみ云ふ。」

とある。

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管に糸を巻く作業を「管巻き」というらしいので,ぶうぶういう音に喩えて,「くだまき」といったものとみられる。

『語源由来辞典』(http://gogen-allguide.com/ku/kudawomaku.html)は,

「『くだ(管 )』とは機織りで糸を紡ぐときに用いる軸のことで,これを『糸繰車(いとくりぐるま)』にさして糸を巻くと『ぶうんぶうん』と単調な音で鳴る」

としているのは,機織と糸巻を混同しているのではないか。「糸繰り車」とは,「糸車」と同じで,

「車の回転を利用して、綿花や繭から糸を紡ぎ出したり、また、紡いだ糸を縒(よ)り合わせたりする道具。」

である。

『由来・語源辞典』(http://yain.jp/i/%E7%AE%A1%E3%82%92%E5%B7%BB%E3%81%8F)の,

「『管』は糸車の紡錘(つむ)にさして糸を巻き取る軸のこと。糸を巻き取るとき、その管がぶうんぶうんと単調な音を立てることからの形容。また、『管』はくだくだしいの『くだ』にも掛けている。」

のが正確である。

なお,「くだ」は,

クタケ(空竹)の義(言元梯),
吹き下し,飲み下すところからクダス(下)の義(名言通・和訓栞),
クダは韓語か(東雅),

と諸説あるが(『日本語源大辞典』),『日本語源広辞典』は,

「クダル(下る)クダス(下す)のクダ」

説を採る。「丸く細長く中のウツロなもの」とある。竹を思い浮かべるが,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/461199145.html

で触れたように,「竹」は,中国から輸入されるまで,笹竹しか知らないので,竹とのつながりがないようである。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
簡野道明『字源』(角川書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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