2018年09月19日

とぐろを巻く


「とぐろを巻く」の「とぐろ」は,


蜷局,

と当てる。しかし「塒」(呉音ジ,漢音シ)は,

「『土+音符時』で,鶏がじっととまって休む土の囲い」

で,

ねぐら,
ないし
鶏舎,

の意である。「蜷局」の字は,当て字。「蜷」(漢音ケン,呉音ゲン)は,曲がる意で,我が国では,巻貝の名に当てている。「とぐろ」と訓ませると,「蜷局」は,

「ヘビなどが、渦巻き状に体を巻くこと。また、その巻いた状態」

の意となるが,「けんきょく」と訓ませると,「虫の屈まりいくさま」から,

縮まって進まないさま。背をまるくして伸びないさま。転じて、順調でないさま,

の意であり,これは中国の語意をそのまったく受けている。なぜ,「とぐろ」この「蜷局」と「塒」を当てたのかはわからないが,あまりピッタリではない。そのはずで,「塒」を「とぐら」とも訓ませる。「とぐら」は,

塒,
鳥栖,
鳥座,

と当て,『広辞苑第5版』には,

「(『くら』は人・動物が居る所,また物を乗せておく所)鳥の夜寝る所,ねぐら」

の意である。『岩波古語辞典』は,「とぐら」は,

トリクラの約。

とし,『大言海』は,

鳥座(トグラ)の義

とする。これなら「塒」の字の意味のままである。

「くら」は,

座,

と当て,『岩波古語辞典』は,

クラ(鞍)と同根,

とする。

人や物が乗る台,

とすると,「とぐろ」は,どうやらこの言葉とつながる。『日本語源大辞典』は,

トグラ(所坐)の転か(大言海・上方語源辞典=前田勇),
藁縄を螺旋状に巻いた円筒をいうツグウと関係する語か(蝸牛考=柳田國男),

を載せる。『日本語源広辞典』は,

「ト(所)+グラ(座)」の転訛説,

と,

朝鮮語(tong-korami)で,モンゴル語(tugurik)語源説,

を挙げるが,「どくろを巻いている状態」が,

鳥がじっととまって休む,

意の「塒」から,「とぐら」を連想し,その転訛,つまり,

「ト(所)+グラ(座)」の転訛が,

とぐろ,

となったとしてもおかしくはない。思いつきをこねくり回しても,原義に辿りつけるとは思えない。

そうすると,「とぐろを巻く」は,

蛇などが、からだを渦巻き状に巻いた状態でいること。また、その状態,

という状態表現から,この場合,ねぐら(塒)を連想するほど,ニュートラルな意味だったのが,

数人が一ヵ所にたむろして不穏の気勢を示すさま,
その場所に腰を落ち着けてなかなか動こうとしないさま,

と,あまりいい意味ではない価値表現へと転じたということになる。

『笑える国語辞典』(https://www.waraerujd.com/blank-99)は,

「とぐろを巻くとは、渦巻状に丸くなってくつろぐという意味(ただし、ヘビにとって)。または、数人でうんこ座りし、タバコをふかてムダ話をしながらくつろぐという意味(ただし、ヤンキーにとって)。または、他人の家などに居座ってくつろぐという意味(ただし、招かれざる客にとって)。『とぐろ(塒、蜷局)』は、わらで編んだ釣鐘形、半球形の籠である『つぐら(ちぐらともいう)』の形に似ているところから来ていると言われる。つぐら(ちぐら)は、赤ん坊や飯びつなどを入れて保護するための籠で、最近は猫の寝床『猫つぐら』『猫つぐら』で知られる。」

と,「つぐら」説を採る。「つぐら」は,

「わら製の保育用具。イヅミとか,エジコなどともよぶ。大小いろいろに作って冬期には飯の保温用にも使う。イヅミは飯詰の意である。秋田ではイヅミ,青森・岩手ではイヅコ,エジコ,信州北部から越後にかけてはツグラ,フゴ,佐渡ではコシキ,東海地方ではエジメ,クルミ,三重県ではヨサフゴという。イヅミは多く中部地方から東北地方の寒い地方で使われている。」(『世界大百科事典 第2版』)

で,いづめ(飯詰)ともいうのは,保温用飯びつ入れと同形のためなので,とうてい「とぐろ」とは似ても似つかない。「塒」の字を当てた謂れとつながらない。ちなみに,「つぐら」を猫用にしたものが,

猫つぐら,

が訛って,

猫ちぐら,

となる。「猫ちぐら」は,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8C%AB%E3%81%A1%E3%81%90%E3%82%89

に詳しい。

Akiyamago.jpg


参考文献;
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8C%AB%E3%81%A1%E3%81%90%E3%82%89
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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