2018年10月20日

二束三文


「二束三文」は,

売値が非常に安い,

意味だが,『広辞苑第5版』には,

「二束でわずか三文の意。江戸初期の金剛草履の値から出たという」

とあり,

数が多くて値段の極めて安いこと,多く,物を捨て売りにする場合にいう,

とある。

二足三文,

とも当てる。『岩波古語辞典』には,「金剛」は,

大型の藁草履,

とある。『大言海』に,

「聚楽にて,金剛太夫,勧進能に,芝居銭三十文づつ取りければ『こんごう(藁草履)は,二束三文するものを,三十取るは,席駄太夫か』」(『昨日は今日の物語(正和)』)

が引かれている(『岩波古語辞典』にも載る)。

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「草履」は,

藁・竹皮・灯心草・藺等々を編んでつくり,緒をすげた履物,

のこと。「金剛草履」は,

「堅固で破れないからいう」

とある(『広辞苑第5版』)が,

「藁や藺いで編んで作った丈夫で大きい草履」

で,

「普通のものより後部の幅がせまい」

とある(『デジタル大辞泉』)。ただ,

「野辺送りに近親者がはく草履は〈アッチ草履〉とか〈金剛草履〉などといい,座敷から直接地面にはいたまま下りるほか,墓地や辻などに脱ぎすててくる習慣がある。このため,ふだん履物をはいたまま家から外へ下りるのは忌まれているが,野辺送りの履物を拾ってはくと百難を逃れるとか,蚕のあがりがよいという所もある。」

とある(『世界大百科事典』)ので,棄てても惜しくない履き物と思われる。因みに,「草鞋(わらじ)」は,

ワラグツの転,ワランジの約,

とあり,

藁で足型に編み,つま先にある二本の藁緒を左右の縁にある乳(ち)に通し,足に結び付ける履き物,

で,そもそもが「くつ」とされていたものらしい。

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「中国大陸や朝鮮半島の植物繊維を編んで作った草鞋(わらくつ)から、平安時代に、わが国特有の鼻緒はきものとして生まれた。長い緒で足にしばりつけてはく草鞋は旅や労働に、鼻緒を足にかけてはく草履は、日常のはきものとして用いられることが多かった。」:日本はきもの博物館

とあり,靴の変じたものだろう。

「草鞋は前部から長い『緒(お)』が出ており、これを側面の『乳(ち)』と呼ばれる小さな輪およびかかとから出る『かえし』と呼ばれる長い輪に通して足首に巻き、足の後部(アキレス腱)若しくは外側で縛るものである。鼻緒だけの草履に比べ足に密着するため、山歩きや長距離の歩行の際に非常に歩きやすく、昔は旅行や登山の必需品」

とあり(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8D%89%E9%9E%8B),「草鞋」も安そうに見えるが,相場は,

「江戸時代の旅の道中の出納帳には、OO宿ワラジ12文、OO宿ワラジ16文のように書かれています。宿場によって多少ワラジの値段にもバラつきがあるようですが、ほぼ12~16文ぐらいの値段であったようです。」

とあるので,二束三文の値ではない。ただ,『語源由来辞典』(http://gogen-allguide.com/ni/nisokusanmon.html)は,

「二束三文の『文』は,昔のお金の低い単位で,二束三文は、二束(ふたたば)でも三文 というわずかな金額にしかならないことに由来する。『二足三文』と書くこともあり,江戸 初期の『金剛草履(こんごうぞうり)』の値段が,二足で三文の値段であったことに由来するともいわれる。『二足』と『二束』のどちらが先に使われ始め,どちらが変化したものかは未詳である。『三文』という言葉は『三文判』や『三文芝居』など安物や粗末な物の意味で使われており,『二束三文』の『三文』も実際にその金額で売られていたわけではなく,安いことを表したものと考えると,『二足三文』の説はやや難しい」

と,「三文」を安さの象徴の意味としている。確かに,『岩波古語辞典』には,

「極めて価の低い,また僅少なことのたとえ」

とあるので,実際に「三文」だったかどうかは定かではない。『江戸語大辞典』には,

「金剛草履二足三文に起る」

とあるし,

「二束(ふたたば)でも三文」(『由来・語源辞典』)

とする説もある。これだと,確かにもっと安い感じはするが,『日本語源広辞典』の説では,「束」は,別の意となる。

「藁二束(二百タバ,稲藁塚,ススキ,二基分を二括りにしたもの)で,わずか三文,つまりタダ同様の値段の意です。ちなみに,藁二束は両端の尖った担い棒を使い,一括りずつ両端に刺して運ぶもので,大人が運べる最高のカサと重量です。」

として,「二足で三文」とする説を否定し,「二足」を誤字としている。しかし,もっともらしいが,原材料のことが,安値の原因とするのは,無理がある気がする。「三文」が象徴であるように,「二足」「二束」も象徴と見ていいのではないか。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
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