2018年10月27日

もぬけ


「もぬけ」は,

もぬけの殻,

といった言い回しをする。

蛻,
裳脱け,
藻抜け,

等々と当てる。「蛻」の字は,

蛻変(ぜいへん),

という言葉があるらしい(造語かもしれない)。昆虫が「さなぎ」から「蝶々」羽化する状態 を言う。「脱皮」である。

蚕蛻(さんぜい),
蛇蛻(だぜい),
蟬蛻(せん ぜい),

という言葉もある。「蛻」(ゼイ,漢音セイ,呉音セ)は,

「会意兼形声。兌(タイ)は『八(左右にはぎとる)+兄(頭の大きい子ども)』からなる会意文字で,人が衣を脱ぐさまを表す。脱の原字。蛻は『虫+音符兌』で,虫が殻を脱ぐこと」

とある。おそらく,他の「裳脱け」「藻抜け」は後の当て字と思われる。「蛻」は,

脱皮すること,またその抜け殻(外皮),

を意味する。で,

もぬけがわ(蛻皮),
もぬけのから(蛻の殻),

という言い回しをする。いずれも,残された方を言う。しかし「蛻」自体に殻の意味もあり,重複している。そのせいで,

裳脱け,
藻抜け,

とあてたものと思われる。おそらく,「抜け殻」をメタファにした使い方をするようになって以降のことと思われる。『日本語源広辞典』は,「もぬけのから」の項で,

裳脱けの殻,

と当て,

「人が抜けだしたあと,の比喩的な用法」

としている。

さて,「蛻」と当てた和語「もぬけ」の語源だが,『岩波古語辞典』は,

「モはミ(身)の古形ムの母音交替形で,モ(身)ヌケ(脱)の意か」

とする。併せて,和名抄を引き,

「蛻,訓毛沼久(もぬく),蟬・蛇之解皮也」

を載せる。『大言海』は,「もぬく」の項で,

「身脱(むぬ)くの轉」

としているし,『日本語の語源』も,同じく,

「ミヌケ(身抜け)の殻はモヌケ(蛻)の殻になった」

と音韻変化説を採る。

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他には,『日本語源大辞典』に,

モヌケ(最抜)の義(名言通),
モヌケ(茂抜)の義(柴門和語類集),
モノケ(衣抜)の義(言元梯),
モヌケルはムヲヌケルの義。モはムロの反(俚言集覧),
マロヌケの義,モはマロの反(名語記),

と諸説載せるが,やはり,

身抜け説,

でいいのではあるまいか。

『笑える国語辞典』

https://www.fleapedia.com/%E4%BA%94%E5%8D%81%E9%9F%B3%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9/%E3%82%82/%E3%82%82%E3%81%AC%E3%81%91%E3%81%AE%E6%AE%BB-%E8%9B%BB%E3%81%AE%E6%AE%BB%E3%81%A8%E3%81%AF-%E6%84%8F%E5%91%B3/

は,

「もぬけの殻(蛻の殻)とは、捜査情報ダダ漏れの間抜けな警察が強制捜査に入ったさいの、麻薬密造グループのアジトのありさま。『蛻(もぬけ)』は、ヘビやセミなどのぬけがらのことで、『身抜け』が転じたものかといわれる。もぬけの殻は、ヘビやセミの抜け殻のように、魂の抜け去った体、死骸のことをいった。そこから、肝心の中身がない空っぽの空間、つまり、逮捕すべき麻薬密造者や麻薬製造の材料や機器類がすっかり逃げ去り持ち去られたあとの何もない部屋などを比喩的にいうようになったものである。」

と,意味の範囲をまとめている。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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