2018年10月29日

間抜け


「間抜け」は,

間(ま)の抜けたこと,
する事に抜かりがあること,またその人,
とんま,

とある(『広辞苑第5版』)。『大言海』は,さらに,

為る事の,程に外れるを罵る語,又,その程に外るるもの,

として,

しれもの,あはう,ばか,

と罵る言葉を並べる。

『日本語源広辞典』は,

「『マ(間・芝居や音楽での調子や拍子)+抜け』です。変な調子の意です。転じて,行動会話などで,他人との歩調が合わずテンポが狂ってしまう人を言います。ぼんやり,うすのろなどの意です。」

とし,『語源由来辞典』(http://gogen-allguide.com/ma/manuke.html)も,

「まぬけの『間(ま)』は,時間的な感覚の間である。芝居や舞踏,漫才などで『間』は,音の動作や休止の時間的長短のことを言い,拍子やテンポの意味にも用いられる。『間が抜ける』ことは,『拍子抜けする』『調子が崩れる』ことであり,填補が悪ないことを意味した。転じて,行動に抜かりがある意味になり,さらに愚鈍な人を罵る言葉になった。」

とする。それは,

拍子が合わない,
テンポが合わない,
間が合わない,

のであり,要は,

調子っぱずれ,

の意で,「間抜け」とは,微妙に違うのではないか。『岩波古語辞典』は,

「物事の間が抜けて馬鹿らしく見えること。またそういう言動をする人を罵って言う語」

とある。「間抜く」という言葉かあり,

間にある物を抜き取ること,
間引く,

という意味である。古くから使われ,

「(ママコ立ての遊びで,石を)またまた數ふれば,かれこれまぬきゆく程に,いづれものがれざるに似たり」(徒然草)

が引かれている。間引きが過ぎれば,スカスカになる。「間抜け」はこちらではないか。

「間」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/395727101.html)で触れたが,「間」は,「閒」の俗字とある。その意味は,

「門」と「月」。門の間から月の光が差し込んで「間」という意味を表したもの,

だとする。およそ,意味は,

①「あいだ」二者間の物理的,時的又は形而上のへだたりのこと。間一髪,間隔,空間,隙間。年間,期間,時間。
②人と人との関係。人間,世間,仲間。
③隙を探る。間者,間諜。

等々。用例から,細かく見ると,

①(あいだ,ま,かん,けん)二者間の物理的へだたり。隙間,間隔,間合,眉間
②(あいだ,ま,かん)二者間の時間的へだたり。この間,いつの間にか,間近い,時間,合間,間食
③(あいだ,ま)二者間の概念上のへだたり。間違い,間引く,間抜け
④(ま)言葉のやり取りのタイミング。話す時に言葉を言わないでおく時間。間が悪い,間の取り方
⑤(ま,あいだ)人と人との関係。仲間,間柄,間に入る,間男
⑥(ま)部屋。板の間,居間,謁見の間,床の間
⑦(ま)めぐりあわせ,運,タイミング。間がいい,間が悪い,間に合う

等々。

どうも,鍵は,「間(ま)」の意味にある。ここからは勝手な妄想だが,合間と間合と隙間の違いを考えてみる。

合間,というのは,ニュートラルで,あいた「間」をさす。それが,主体的に意味を持てば,

間合,

になり,意味がなければ,

隙間,

になる。しかし,隙間は,

本来空いているべきでない,「間」が,空いていることだから,

隙,

にもなる。隙間は,あってはならないものだから,詰めるべきものだが,間合いは,その距離に意味があ。

間(ま),

を詰めれば,命取りにもなる。合間は,それを意識すると,意味ある,

距離,ないし空白,

となり,意識した側に,アドバンテージがある。だから,意識しなければ,

隙間,

に変わる。しかし,隙間は,間合いにはならない。本来空いていてはいけないというか,詰まっているべきものがあいているのたがら,

空穴来風,

という言葉があるそうだが,隙間があるから穴に風が入ってくる。その意味では,「間抜け」は,この意味ではあるまいか。

しかし,ほとんどが,「拍子外し」「間合いのずれ」に語原を求めている。 たとえば,

http://www.zatsugaku-trivia.com/gogen/%E3%80%8C%E9%96%93%E6%8A%9C%E3%81%91%E3%80%8D%E3%81%AE%E8%AA%9E%E6%BA%90%E3%81%AF%E3%80%81%E6%AD%8C%E8%88%9E%E4%BC%8E%E3%81%A7%E9%96%93%E3%82%92%E5%8F%96%E3%82%8A%E5%BF%98%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%81%93.html

では,

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1211677342

は,

「『間』は、芝居や音楽での調子や拍子といった意味です。この間が抜けると芝居の雰囲気がくずれ、音楽も変な調子になってしまいます。そこから、動作や会話などにおいて他人と歩調が合わず、テンポの狂ってしまう人を、ぼんやり者、うすのろという意味で「間抜け」といいました。」

等々。

『笑える国語辞典』

https://www.fleapedia.com/%E4%BA%94%E5%8D%81%E9%9F%B3%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9/%E3%81%BE/%E9%96%93%E6%8A%9C%E3%81%91%E3%81%A8%E3%81%AF%E4%BD%95%E3%81%8B/

は,

「間抜けとは、おろかで要領が悪いこと、また、そういう人をいう。『間』とは、物と物や音と音に挟まれた『抜けている』部分を意味し、『抜けているところ(間)』が『抜けて』いるとは、『抜けているところがさらに何かが抜けている』のか、『抜けているところがちゃんと抜けていない』のか、いまいちよくわからない言葉だが、要は『抜くべきところ(間)』の抜き方が悪くて、物と物や音と音の間隔がアンバランスになっていることをいうらしい。もっとも、語源についてあれこれ考えなくても、間抜けなやつというのはふたことみこと言葉をかわせばすぐ判別できる(自分が間抜けだったら、わからないかもしれないが)。」

と,ちょっと鋭い。「間」を抜くことと,「間」を外すこととは,違う。

因みに,

バカ = 知能の働きが鈍い性質
間抜け = 軽率に行動する性格
間抜けは、鈍いわけでもないのに何でも軽々しくやってしまう性格,

と区別しているものがあった(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12102787022)。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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posted by Toshi at 05:02| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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