「とばく」は,
賭博,
と当てる。『語源由来辞典』(http://gogen-allguide.com/to/tobaku.html)は,
「賭博の『賭』には、『かけごと』『かけをする』などの意味がある。賭博の『博』は、双六などサイコロを用いた遊びを意味する。双六の類は金品を賭けて行われることが多いことから、『博』は『賭』と同様に『かけごと』や『ばくち』の意味がある。」
としかかかないが,『日本語源広辞典』は,
「中国語で,『賭(金銭をかける)+博(大いに得る)』が語源です。博奕でどっさり儲けるが語源です」
とする。「博奕(ばくえき)」が中国語であるように,どうやら中国語と関わるようである。
「ばくち」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/462516379.html?1541102236)で触れたように,
「博」(ハク,バク)の字は,
「会意兼形声。甫は,圃の原字で,平らで,ひろい苗床。それに寸を加えた字(音フ,ハク)は,平らに広げること。博はそれを音符とし,十(集める)を添えた字で,多くのものが平らにひろがること・また拍(ハク うつ)や搏(ハク うつ)に当て,ずぼしにぴたりと打ち当てる意を表す」
で(『漢字源』),確かに,
ばくち,
の意があり,特に,
すごろく(局戯)又それを為す,
とある(『字源』)。「賭」(漢音ト,呉音ツ)の字は,
「会意兼形声。『貝(財貨)+音符者(集中する,つぎこむ)』」
で,
賭ける,
意,つまり,
金品を出して,勝った者がそれを得る約束で勝負を争う,
意であり,それが転じて,
いちかばちかやってみる,
意になった(『漢字源』)。
賭戯(トギ,賭け事の遊び),
賭賽(トサイ,ばくち),
賭場(トジョウ,ばくち場),
賭坊(トボウ,ばくち場),
という語句があり,「賭場」も,中国由来だが,
とば,
と訓ませる。
(カルタ賭博と独楽賭博(『金平異国めぐり』) https://japanplayingcardmuseum.com/kansei-karuta-bakuchi-kinnsei/より)
「賭博」は,
「起源は有史以前にさかのぼる。日本では賭け事の偶然性のゆえに,古くは生産を占う年占の一つとしてその方法が利用された。祭礼のときなどに行う綱引きや相撲などの勝負事と相通じるものであった。福引などはもちろん,さいころやかるた,花札などを,金銭や物品を賭けて遊ぶことも,正月や祭礼のときには全国的に普通に行われていた。」
とあり(『ブリタニカ国際大百科事典』),
「《古事記》に秋山之下氷壮夫(あきやまのしたびおとこ)と春山之霞壮夫(はるやまのかすみおとこ)が伊豆志袁登売(いずしおとめ)をめぐり妻争いをし,衣服をぬぎ山河の産物を備えて,かけごとを行ったとある。遊戯としての賭博の初見は,685年(天武14)9月に天武天皇が大安殿に御して王卿らを呼び行わせた博戯で,御衣,袴,獣皮などを下賜した。」
とある(『世界大百科事典 第2版』)。暴論かもしれないが,
盟神探湯(くかだち、くがたち),
と呼ばれた,
「探湯瓮(くかへ)という釜で沸かした熱湯の中に手を入れさせ、正しい者は火傷せず、罪のある者は大火傷を負うとされる。」
という神明裁判も,一六勝負に似ている。
うけい(うけひ)は、古代日本で行われた占いである。宇気比、誓約、祈、誓などと書く。
うけいの一種,
とされる(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%9F%E7%A5%9E%E6%8E%A2%E6%B9%AF)。「うけい」とは,
宇気比,誓約,祈,誓,
等々と書く。
「ある事柄(例えば「スサノオに邪心があるかどうか」)について、『そうならばこうなる、そうでないならば、こうなる』とあらかじめ宣言を行い、そのどちらが起こるかによって、吉凶、正邪、成否などを判断する。」
という(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%86%E3%81%91%E3%81%84)。いわば,
言と事,
が同源とされるように,言った(誓った)ことが起きる(成否)という前提で成り立つ。いわば,「卜(占)い」も,
賭け,
に似ている。「うらなう」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/452962348.html)で触れたように,
「ウラ(心,神の心)+ナウ(事をなす)」(『日本語源広辞典』)
であり,
「占いや占うの『占(うら)』は、『心(うら)』である。『心(うら)』は『表に出さない裏の心』『外面に現れない内心』の意味」(『語源由来辞典』http://gogen-allguide.com/u/uranai.html)
を推しはかることになる。因みに,「占」の字は,
「『卜(うらなう)+口』。この口は,くちではなく,あるものある場所を示す記号。卜(うらない)によって,ひとつの物や場所を選び決めること」
「卜」の字は,
「亀の甲を焼いてうらなった際,その表面に生じた割れ目の形を描いたもの。ぼくっと急に割れる意を含む。」
で,「亀卜(きぼく)」の,
「中国古代,殷の時代に行われた占い。亀の腹甲や獣の骨を火にあぶり,その裂け目(いわゆる亀裂)によって,軍事,祭祀,狩猟といった国家の大事を占った。その占いのことばを亀甲獣骨に刻んだものが卜辞,すなわち甲骨文字であり,卜という文字もその裂け目の象形である。亀卜は数ある占いのなかでも最も神聖で権威があったが,次の周代になると,筮(ぜい)(易占)に取って代わられ,しだいに衰えていった。」(『世界大百科事典 第2版』)
ということらしい。やはり,賭けに似ている。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95