2018年11月08日

かめ


「かめ」は,

甕,
瓶,

と当てる。「甕」(漢音オウ,呉音ウ)は,

「会意兼形声。雍のもとの字は,癰(ヨウ)の疒を除いた部分と同じで,外枠で囲んで鳥を守ることを表す。のち雍(ヨウ)という形になった。甕は『瓦(土器)+音符雍』で,中に避けや水をとじこめるかめ」

で(『漢字源』),「かめ」を意味し,「瓶」(唐音ビン,漢音ヘイ,呉音ビョウ)は,

「会意兼形声。幷は『人二人+=印二つ』の会意文字で,二つ合わせて並べることを示す。瓶は『瓦(土器)+音符幷(ヘイ)』。もと二つ並べて上下させる緯度のつるべ,のち水を汲む器や,液体を入れる小口の容器をさすようになった」

とあり(仝上),口の小さいつぼ,とっくり型の容器,を意味する。「ガラス製のビン」の意や「鉄瓶(てつびん)」という用例は,我が国だけのものらしい。

「かめ」は,

「カ(瓮)メ(瓶)の複合語。メはベの転」(『岩波古語辞典』),
「甕(か)と瓮(へ)と合したる語ならむ」(『大言海』)

とある。「へ」を見ると,

瓮,

の字を当て,「瓶(かめ)」としつつ,

名義抄「甕・瓮,ヘ」

を引き,

「朝鮮語pyöng(瓶)と同源か」

とする(『岩波古語辞典』)。

「酒や水を入れたり,花を挿したりなどする底の深い容器」

である。「甕」「瓶」をあてて,

みか,

とも訓ませるが,これは,

「ミは接頭語。カは(瓮)は容器類」(『岩波古語辞典』)
「『み』は接頭語あるいは水の意か。『か』は飲食物を盛る器の意」(『デジタル大辞泉』)

で,

「大きなかめ。水や酒を貯えたり,酒を醸したりするのに使った」(『岩波古語辞典』)
「昔、主に酒を醸造するのに用いた大きなかめ。」(『デジタル大辞泉』)

と,「かめ」と「みか」は区別されているが,もとは「か(瓮)」である。「瓮」は,

もたひ(い),

とも訓ませ,「水や酒を入れる噐」であり,

和名抄「甕,毛太非(もたひ)」

とするので,「甕」と「瓮」が使い分けられているようでもない。「瓮」(漢音オウ,呉音ウ)の字は,

「形声。『瓦(土器)+音符公』で,甕(オウ)と全く同じ。擁(ヨウ 抱え込む,いれこむ)と同系で,中に液体を入れ込む大かめ。」

とあるので,「甕」と「瓮」は,大きなかめということになる。別に「甕」は,

たしらか,

とも訓ませ,「水を入れる土製素焼きのうつわ。大嘗会(だいじょうえ)のときなどに天皇の手水(ちょうず)の水を入れる」とある(『デジタル大辞泉』)。特殊な用途のものと見ていい。

「甕は古くはその用途・大きさによって、ユカ、ミカ、ホトギとよばれたが、ユカ(由加)は祭事に用い、ミカ(瓺)は主として酒を醸すために用いられ、これらはいずれも大甕が使用された。一方、ホトギ(缶)は小さな瓦器(がき)で、湯水などを入れるのに用いられた。」(『日本大百科全書(ニッポニカ)』)

とあり,

「古くカメとよばれた(和名抄)のは,ふくらんだ胴,あるいは丈高の胴のうえでいったんすぼまってから口にいたる形の〈瓶〉であって,むしろ壺に含まれる形の液体容器である。酒をいれて人に供するための瓶子(へいし)もその一種であり,現在の瓶(びん)が古称のカメの実体を伝えている。古くは,ミカ(記紀),モタヒ(和名抄),ユカ,サラケなどとよばれていた液体容器(おもに酒の)が,〈甕〉と表記されカメとよばれるようになったのは,中世以降のことである。」(『世界大百科事典 第2版』)

とあるので,「みか」の「み」は接頭語とすると,「か(瓮)」が,「かめ」の古形と言うことになる,とすると,『日本語源広辞典』の,

説1 「カム(醸)の変化」。つまり醸造路の容器,醸造用壺,
説2 「カ(ケ・笥)+メ(水)」。液体容器。ミカは「ミ(水)+カ(容器)」で,「水の容器」,

とするが,説1は,捨てるほかない。『大言海』は,「甕・瓮(か)」は,

「笥(け)と通ず」

とし,「へ(瓮)」は,

「隔つる意(水火)の間に」

とする。『日本語源大辞典』は,「みか」「もたひ」「かめ」それぞれの語源説を列挙している。

「みか」については,

ミは発語。カは甕の義(大言海),
カはケ(笥)の転(箋注和名抄),
ミケ(水笥)の転(日本古語大辞典=松岡静雄),
ミカ(水瓶)の義(言元梯・名言通・大言海),
ミは深の義。カはヤク(焼)の意(東雅),
ミは大の義。カはカメの略(和訓栞),

と挙げる。カは瓶では同義反復である。「け(笥)」は,『岩波古語辞典』には,

「古形カ(瓮)の転」

とある。ものを盛り,又入れる器の意である。『大言海』は,

「籠(コ)と通ずるか,食ふと云ふ語も此器より移れるなり。」

とし,「餼子(けご)」と関わるとする。「餼子」は「食籠(けご)の義」とあるので,「笥」と同じである。

どうも,「笥(か→ケ)」と「瓮(ヘ→カ)」とは,通じる気がする。『日本語の語源』のような,

「底深く内広くつくった大型の陶器をイカメシキ(厳めしき)陶器(すえもの)といい,その省略形がカメ(瓶・甕)になった。また,イカメシキ(偉めしき)陶器は,カメシの部分がメシの縮約でカミになったが,『神』との混同をさけてミカ(甕)に転意された。酒をかもす大型のカメをいう。」

という,ミカ→カメの流れも面白いが,大小を区別して使っていたことを考えると,少し首を傾げざるを得ない。

「もたい」(瓮・甕・罇)は,『日本語源大辞典』は,

盛湛瓮(もりたたへ)の略轉(大言海),
モタは持つ意。ヒは器の義(東雅)
持堪るの義か(俚言集覧・和訓栞),
モチアヒ(持合)の義(名言通),
モツヒ(持椀)の義(名言通),
モタタヘ(水湛)の義(言元梯),
マロカタヘイ(円高瓶)の反(名語記),

とある。どうも,「瓶子(へいし)」のイメージである。「酒を盛る噐」である。

そして,「かめ」であるが,「かめ」が,

「カ(瓮)メ(瓶)の複合語。メはベの転」(『岩波古語辞典』),
「甕(か)と瓮(へ)と合したる語ならむ」(『大言海』)

であるとすると,「カ(瓮)」が,

笥,

なら,「ヘ→メ」と転訛した「へ(瓮)」の意味を明確にする必要がある。同義に近い「かめ」と「カ(瓮)」と「メ(瓶)」を合成することで指し示す何かがあったからなのではないか。

『日本語源大辞典』は,

ケ(笥)と通じるカ(甕)と,水と陽の間を隔てる意のへ(瓮)との結合語か(大言海),
カ(瓮)メ(瓶)の複合。メはベの転(岩波古語辞典),

以外に,

カはケ(笥),メはミ(身)の転か(日本古語大辞典=松岡静雄),
カは,ミカ(瓺)のカ,メは器をいう語(東雅),
カミベ(醸瓶)の約転(類聚名義抄・和訓集説),
サカヘ(酒瓮)の約転(言元梯),
酒をカモス(醸)器であるところから(日本釈名・俚言集覧・名言通・言葉の根しらべの=鈴木潔子),
気の抜けないように堅めるものであるところから,カタメ(堅め)の略(本朝辞源=宇田甘冥),
形が亀に似るところから(和句解・円珠庵雑記),

等々を載せる。どうやら「酒」に特定していたのではないかと思わせるが,しかし,

「古くは,ミカ(記紀),モタヒ(和名抄),ユカ,サラケなどとよばれていた液体容器(おもに酒の)が,〈甕〉と表記されカメとよばれるようになったのは,中世以降」(仝上)

なのだが,

「甕は水・酒・酢・しょうゆ・油など液体飲料物の貯蔵・製造用具として使用されたが、塩・梅干し・漬物などの保存・加工用具のほか、藍(あい)汁・肥(こえ)だめの容器、また遺骸(いがい)を納める棺としても用いられた。しかし、鎌倉末期から室町時代にかけて桶結(おけゆい)技術が発達し、酒・油など液体の運搬・貯蔵に便利な桶・樽(たる)が出現するに及んで、重量が重く、かつ破損しやすい在来の甕・壺の類にとってかわ」(仝上)

られるともある。つまり,「酒」に限定するようになるに連れて,「かめ」は「樽」にとってかわられる。その僅かな間,大型の「甕」に「かめ」と名づけたように思える。あるいは,醸す意の「カム(醸)」と掛けたのかもしれない。

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