かめのぞき


「かめのぞき」は,

瓶覗,

と当てて,

「藍瓶に,ちょっと浸したる意」

として,

「藍色の極めて淡きもの」

と,『大言海』には載る。略して,

のぞき

とも,

覗色,

とも,

白殺し(しろころし),
藍白(あいじろ),

とも言うらしい。恥ずかしながら,知らなかったので,ちょっと調べてみた。『広辞苑第5版』には載らない。『江戸語大辞典』には,

「藍甕をちょっと覗いただけの意。手拭いをこれに染める」

とある。

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色見本は,
https://www.color-sample.com/colors/165/
http://moineau.fc2web.com/color/blue1.html

等々にあるように,薄い水色という感じである。

瓶覗き(かめのぞき)とは、

「白に近いごく薄い藍色。英語色名のペールアクア(ごくごく薄い水色)に近い。藍色系統に属するが殆ど色味が無いため、オフホワイト(日本語の染色用語なら「白殺し」)に属すると考える場合も有る。」

とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%93%B6%E8%A6%97%E3%81%8D)。

藍色系統の中でも,

留紺>黒紺>紺(勝色)>藍>花色>浅葱>水浅葱>瓶覗き,

ともっとも薄い色で、

「染色の際も藍瓶に漬けてすぐに引き上げてしまう」

ことから「瓶覗き」と呼ばれる(仝上)。どうやら「覗く」を,

サッと浸す,

という意味で使ったものらしい。僕は,とっさに,

甕に張った水に映った空の色,

と思ったが,

「水瓶に映りこんだ青空の色を表現したので瓶覗きと呼ぶという説もあるが、江戸時代、瓶覗きと空色はどちらも同時期使われており、染色指南などを見るに空色のほうが濃い色で派生の色も数多く存在する。」

とある(仝上)ので別らしい。

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空色というのは見当たらなかったが,似た色が一杯。日本は色の種類が世界一とか。

「藍染めは藍甕に糸や布を浸し、これを絞って大気中で酸化させ、これを何度も繰り返しながら徐々に濃い藍色をつくってゆくのだそうです。しかし染色業がまだ専業化する以前は、藍甕の中を一度くぐらせただけの淡い藍色の染め物がほとんどだったと言われます。
このように一度だけ藍甕をくぐらせただけの染め物を一入染(ひとしおぞめ)というそうですが、何度も何度も甕をくぐって次第に濃くしてゆく普通の藍染めからすると、一入染で現れる淡い藍色は、

ちょっと甕を覗いただけの色

ということでこの名が付いたのだと言う説があります。」

とあり(http://koyomi.vis.ne.jp/doc/mlko/200704180.htm),やはり,

「大きな甕に張られた水を覗き込むと、うっすらと青みがかった色に見える」

から甕覗だとする説もあるようである。で,

「海が急に深くなって、それが水の色がそこだけ藍色に見えるような場所を『甕』と呼ぶことが有ります。深い水は藍色に見えるから、水の色は藍色で、甕に入る程の少量の水だと薄い薄い藍色に見えると考えた」

と付言している(仝上)。この方が,言葉の奥行がある気がするが,「藍四十八色」と言われるほどのバリエーションがあるらしく,藍染めは染める回数によって濃淡が生まれるそうで,淡い藍は色相が緑みに傾き、濃い藍は紫みに傾く。「瓶覗」は藍染めのなかでも最も初期の段階の染め色で、やや緑がかった淡い藍色。藍瓶を覗いた程度にちょっと染めた,というのが江戸の語感にはふさわしいのかもしれない(https://toyokeizai.net/articles/-/159722)。

「ほんの少し染まって白い布が白でなくなるため、「白殺し」とも言われていました。」

とある(https://colornavi.net/52/h7.html)語感と合うのかもしれない。

「藍甕の中に布を一回潜らせただけ、すなわち、布は藍甕の中をちょっと覗いただけで出てきてしまったから染まり方も薄いという」

説の方が,

「甕(かめ)に張られた水に空の色が映ったような淡い色合」

という説よりは,江戸の語感が,個人的にはする(https://colornavi.net/52/h7.html)。

なお「藍」という色も,

「藍は世界最古の染料といわれ、日本でも古くから用いられてきた。『延喜式』では藍と黄蘗(きはだ)を用いた染色が藍色で、やや明るい緑みの青の色名であったが、その後は濃い色を表すようになった。」

とある(『色名がわかる辞典』)。少し色が違うようだ。

参考文献;
https://www.pinterest.jp/
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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