2018年11月25日

どきどき


「どきどき」は,

ハラハラドキドキ,

の「どきどき」である。

激しい運動、または不安・恐怖・驚きなどで心臓の動悸が速くなるさま,

を示す擬態語だが,心臓の動悸の,

ドキドキ,

の擬音語にも思える。『大言海』は,

鼓動,

と当て,

心臓の鼓動の甚だしきに云ふ語,

とある。で,「こころときめき」の項とつなげ,「こころときめき」に,

心悸,

と当てて,こう書く。

「トキは,心臓の鼓動を形容して云ふ語(今,ドキドキすると云ふ)。メキは,むくむく(蠢),ほのめく(閃)などのメクの,名詞形なるべし(トキメクと云ふごもあり)。されど,終止形なるを見ず,又,心を冠せざるを見ず」

「ときめき」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/448077304.html)で触れたように,「ときめく」は,

「『どきどき』は『はらはら』『わくわく』と合わせて使うことも多い。…また,『どきどき』からできた語に期待や喜びなどで心がおどる意の『ときめく』がある。」

とある(『擬音語・擬態語辞典』)「どきどき」が,

どき(どき)めき→ときめき,

と,転訛したことになる。

さて,「どきどき」は,

「どきどき」は,

激しい運動や病気で心臓が鼓動する音,
あるいは
心臓の鼓動が聞こえるほど気持ちが高ぶる,

の意味で,心臓の「ドキドキ」の擬音語である(仝上)。

「室町末期の『日葡辞典』では,『だくだく』の項目に『胸がだくだくする』という用例を挙げている。これは現在の
『どきどき』と同じ意味だと考えられる。」

とある(仝上)。「だくだく」は,

「汗だくだく」

というように,

「汗・血などが盛んに流れ出るさま」

で使う。しかし『広辞苑第5版』には,その他に,

「動悸がしておちつかないさま,どきどき」

の意も載る。これについて,『擬音語・擬態語辞典』は,

「『だくだく(dakudaku)』のように『d-k』という子音の組み合わせを繰り返した語は,体液の激しい流動を表すものが多い。『どきどき』『どくどく』。また,これらは,まず口の中の開き方が大きい広母音ア・オがきて,次に口の中の開き方が小さい狭母音イ・ウ(daku・doki・doku)が来る点でも共通しており,母音の広狭のくり返しがまるで血管の伸縮のくり返しを写すような印象を与える。」

とする。まさに,擬音である。

「だくだく」は,

「室町時代から見られる語。ただし,当時は疾走する音または様子や,激しく脈打つ様子を表した。『馬の足音がだくだくと致す』(『日葡辞典』),体液が流れ出す様子を表すのは江戸時代以降だが,当初は汗に限らず乳や血にも用いた。『乳母は乳をだくだくこぼす初の首尾』(『知恵車』)」

と,「どくどく」と「どきどき」の意味を重ねもっていたようである。

「どくどく」は,いまでは,

「液体の盛んに流れ出るさま」

の意だが(『広辞苑第5版』),『擬音語・擬態語辞典』には,

興奮や怒りなどで心臓が高鳴ったり,脈が激しく打ったりする音,

という意味も持っているようなので,「どきどき」へと純化するプロセスでは,

だくだく→どくどく→どきどき,

の意味が重なっているようである。『江戸語大辞典』の「どくどく」には,

大型の徳利から酒を出すときの音によっていうか,

とすでに意味がシフトしている。さらに「どきどき」は,

「なんじゃまたどきどきと分からぬことが出来て来たと泥八も尻もぢもぢ」

という用例が載り,意味が,擬音という状態表現から価値表現へとシフトして,

ややこしいさま,

の意に転じている。因みに,「だくだく」は,

汗・血などの盛んに流れるさま,
胸の轟くさま,
足のがくがくするさま,

と,「どきどき」と重なる意味を保っている。

参考文献;
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)
山口仲美編『擬音語・擬態語辞典』(講談社学術文庫)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:どきどき
【関連する記事】
posted by Toshi at 05:16| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください