2018年11月26日


「ど」は,接頭語で,

「或る語に冠して,嘲り卑しむ意を表す語」(『大言海』)
「ののしりいやしめる意を表す」(『岩波古語辞典』)

等々とある。確かに,

ど近眼,どあほ,ど素人,どけち,ど下手,どスケベ,どブス,ど貧民,ど腐れ,

等々というように(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E3%81%A9),「罵倒」の言葉になることもあるが,

ど根性,どまんなか,ど迫力,ど肝(を抜く),どつぼ(にはまる),

と言ったり,

ど演歌,

と言ったり,

どえらい,どぎつい,どでかい,どあつかましい,ど派手,

と言ったりするような(仝上),必ずしも嘲罵したりするのではなく,

強調,

する遣い方もある。確かに,

「名詞や形容詞の意味を強調する。語によっては品性に欠けるニュアンスが強い。」

という側面(仝上)はあるにしても。

『広辞苑第5版』は,

「近世以来,関西で」

として,

ののしり卑しめる意を表す(「ど阿呆」「ど畜生」),

の意以外に,

その程度が強いことを表す(「どぎつい」「どまんなか」),

の意も載せている。

「『ど』を単語の前につけた場合は、後の単語の意味を強調する場合が多い。」

ともある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%A9)。

この「ど」はどこから来たのか。

『日本語の語源』は,

「イト(甚)はト・ド(甚)に省略されて強調の接頭語になった。ドマンナカ(甚真中)・ドテッペン(甚天辺)・ドコンジョウ(甚根性)・ドショウボネ(甚性骨)・ドギモ(甚肝)・ドエライ(甚偉い)・ドデカイ(甚大きい)・ドギツイ(甚強い)・ドヅク(甚突く)など。
 とくに嘲罵の気持ちを強調するときによく用いられたので,卑しめののしる接頭語になった。名詞に冠らせてドアホ(甚阿呆)・ドギツネ(甚狐)・ドコジキ(甚乞食)・ドシャベリ(甚喋り)・ドタヌキ(甚狸)・ドタフク(甚お 多福)・ドタマ(甚頭)・ヂチクショウ(甚畜生)・ドテンバ(甚お転婆)・ドヌスット(甚盗人)・ドブキヨウ(甚不器用)・ドチャッコ(甚奴。子供の罵称)。
 形容詞に冠せられてドアツカマシイ(甚厚かましい)・ドイヤシイ(甚卑しい)・ドシブトイ(甚しぶとい)・ドビツコイ(甚執こい)・ドベラコイ(甚腹黒い)・ドスコイ(甚狡い)・ジギタナイ(甚汚い)。
 強調のあまり長母音を添加することもある。ドーアホー(甚阿呆)・ドーコジキ(甚乞食)・ドーシブトイ(甚しぶとい)・ドーチクショウ(甚畜生)・ドーヌスット(甚盗人)・ドーブルイ(甚震い)・ドーベラコイ(甚腹黒い)・ドースケーベ(甚助平。助平は『好き者』の転)。
 イトモ(甚も)の転トモはドンに転音して強調・嘲罵の接頭語になった。ドンゾコ(甚も底)・ドンボーズ(甚も坊主)・ドンビャクショウ(甚も百姓)・ドンガラ(甚も躰)・ドンケツ(甚も尻)・ドンジリ(甚も尻)・ドンツベ(甚も尻)・ドンパラ(甚も腹)・ドンヅマリ(甚も詰まり)。」

と,イト(甚)の転訛系の中に位置づけている。ただ,他に,「ど」を「いと(甚)」の転訛とする説がなく,是非の判断はしかねる。

素人が言うのもおこがましいが,「ど」の強調は,程度の度外れを言っている気がする。

度が外れる,
度が過ぎる,

の「度」は,多様な意味があるが,

物事の基準・標準とすべきもの,

の意で,

ほど,
ほどあい,

の意味がある。程度・限度と使う「度」である。僕には,この,

度,

に思える。「度」(呉音ド,漢音ト,タク)の字は,

「形声。『又(て)+音符庶の略体』で。尺(手尺で長さをはかる)と同系で,尺とは,しゃくとり虫のように手尺で一つ二つと渡って長さをはかること」また,企図の図とは,最も近く長さをはかる意から転じて,推しはかる意となる。」

で(『漢字源』),尺度の意である。「度」はこの漢字から来ている。

程度,

の意である。どう考えても,

罵倒の「どあほう」にしても,
強調の「ど迫力」にしても,

度が外れるの,「度」に思えてならない。「度胸」は,我が国の作った言葉だか,この「度」は,まさに,

ど肝の,

「ど」ではないか。『広辞苑第5版』は,「どぎも」に,

度肝,

と当てている。

参考文献;
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 05:15| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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