2019年01月10日

した


「した」は,

下,

である。「下」(漢音カ,呉音ゲ)の字は,

「指事。おおいの下にものがあることを示す。した,したになるの意を表す。上の字の反対の形」

である(『漢字源』)。

『岩波古語辞典』には,「した」について,

「『うは』『うへ』の対。上に何か別の物がくわわった結果,隠されて見えなくなっているところが原義。類義語ウラは,物の正面から見たのでは当然見えないところ。シモは,一連の長いものの末の方をいう」

とある。で,

その上や表面に別の物が加わっているところ,

の意で,

内側,
物の下部,

の意があり,

隠れて見えないところ,

の意で,

物陰,
(人に隠している)心底,

という意味が,載る。空間的な位置としての「した」の意は,その次に,

程度の劣ること,
地位・身分などが劣ること,

の意がくる。しかし,『大言海』になると,

上(ウエ)の対,
表(オモテ)の対,
低いこと,

という意味が載るので,「内側」「物陰」の意から,意味が少しずつ位置にシフトしていることがわかる。

カミ(http://ppnetwork.seesaa.net/article/446980286.html)で触れたが,『日本語源広辞典』は,

「シ(下の意)+タ(名詞の語尾)」

とし,

「置いた物の内側,転じて,物の下,下方を意味します」

と,意味のシフトを説明しているが,

シ(下の意),

ではちょっと説明不足な気がする。『岩波古語辞典』は「し」を,

下,

と当て,

「シタ(下),シモ(下)などのシ」

とし,

他の語につき複合語をつくる,

とある。で,

下枝(シズエ),

の例を挙げる。他の例が見当たらないが,複合語の場合,重なることに依って音韻変化を起こすこともあり,ちょっと分からない。

『日本語源大辞典』には,

シリトマリ(尻止)の義か(名言通),
シタルの略(言葉の根しらべ),
シリト(尻所)の義(言元梯),
シに下の義があり,それに名詞語尾タを添えた語(国語の語根とその分類=大島正健),
シホタルからか(和句解),
タは落ちて当たる時の音かまたタル(垂)の義が(日本語源=賀茂百樹),

等々が載るが,いまひとつ決め手はない。「うへ(上)」が,

「う(浮)」+接尾語「へ」

とする説が大勢だが,上代特殊仮名遣いから,接尾語「へ」は「fe」と訓み,「うへ」の「へ」は「fë」と訓み,別音,別語であった。このことから考えると,「上」の,

うは(へ),

と,「下」の,

した,

は,対で,分解できないのではないか,という気がしてならない。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:した
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