2019年01月13日

しみじみ


「しみじみ」は,

染み染み,
沁み沁み,

と当てる。

心に深くしみるさま,つくづく,よくよく,
静かに落ちついているさま,

の意味が載る(『広辞苑第5版』)が,『デジタル大辞泉』には,

心の底から深く感じるさま,
心を開いて対象と向き合うさま,
じっと見るさま,

と,前者が状態表現なのに対して,後者は,主体の価値表現,感情表現にシフトしている。今日の使い方からすると,後者の方がピンとくる。『大言海』の意味を見ると,

静かに,しめやかに,

心に滲みて,心に深く滲みて,

しんみり,

つくづく,

よくよく,

と,主体表現へと少しずつシフトして意味が広がっていく流れが見える気がする。

『日本語源広辞典』は,

「『染みる+染みる』です。しみ込んでいく様子を重ねた語です。深く心に感じる状態を表す副詞です」

とある。『擬音語・擬態語辞典』は,

「平安時代から見られる語。動詞『染む』の連用形『染み』が重なったものと考えられ,本来は擬態語ではない。しかし,『しとしと』『じめじめ』などに形が類似したり,『しんみり』と類義的であったりするなど擬態語と関連が強いために,現在では,擬態語と意識されている。」

とある。類義語「しんみり」は,

心の底まで情感がしみいる様子,あるいは心の底から心情が湧きおこる様子,

だが,「しげしげ」は,

心を込めてよく物を見る様子,

の類義語。「しげしげ」と比べると情趣なく,細かく観察する意となる(『擬音語・擬態語辞典』)。

「染」(セン,漢音ゼン,呉音ネン)の字は,

「会意。『水+液体を入れる箱』で,色汁に柔らかくじわじわと布や糸をひたすこと」

で,染める意である。

しみる,
しみこむ,

という意や,しみじみのように,

心に深く感じ入る,

意はない。我が国だけの使い方である。

「沁」(シン)の字は,

「会意兼形声。心は,心臓を描いた象形文字で,細い脈のすもずみまで血をしみ通らせる意を含む。沁は『水+音符心』で,水がすみずみまでしみわたること」

で,しむ,意である。

「滲」(シン)の字は,

「形声。『水+參』」

で,「參」(漢音サン,呉音ソン)の字は,

「象形。三つの玉のかんざしをきらめかせた女性の姿を描いたもの。のち彡印(三筋の模様)を加えて參の字となる。いりまじってちらちらする意を含む」

で,まじわる,いりまじる,意である。

「しむ」は,

浸む,

とも当てる。「浸」(シン)の字は,

「会意兼形声。右側の字(音シン)は,『又(手)+ほうき』の会意文字で,手でほうきを持ち,しだいにすみずみまでそうじをすすめていくさまを示す。浸はそれを音符として水を加えた字で,水がしだいにすみずみまでしみこむこと」

とある。字から言えば,

浸み,

を当ててもよさそうだが,

浸み浸み,

とは当てない。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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