2019年01月17日

つくづく


「つくづく」は,

熟,
熟々,

と当てる(『広辞苑第5版』)。『大辞林』には,

「つくつく」とも,

とある。

念を入れて見たり考えたりするさま, よくよく,つらつら,じっと,
物思いに沈むさま,つくねんと,よくよく,
深く感ずるさま,

という意味で,

つらつら,

と重なるところがある。「つらつら」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/456542777.html)については,以前触れた。

『岩波古語辞典』は,

尽,

の字を当て

「尽(つ)く尽ぐの意。力尽きはててが原義」

とし,

力尽きた気持であるさま,
(力なく)じっとしているさま,
物淋しげなさま,
じっと思いを凝らすさま,

とある。「文明本節用集」には,

「熟,つくづく・つらつら」

と載っている(『岩波古語辞典』)ようであるので,意味の転化に応じて,

尽から熟へ,

と当て替えたものと思われる。

疲れ果てている,

じっとしている,

という状態表現が,価値表現へ転じ,

物淋しい,

となり,そのじっとしているさまから,

じっと思いを凝らすさま,

に転じ,

念を入れて見たり考えたりするさま,

と転じたことになる。どこで,

尽から熟へ,

当て替えたのかははっきりしないが,『大言海』は,

熟,

を当て,

「就くを重ねたる語」

とし,

熟視,
熟思,

の意としている。

「熟」(呉音ジュク,漢音シュク)という字は,

「会意。享は,郭の字の左側の部分で,南北に通じた城郭の形。つき通る意を含む。熟の左上は,享の字の下部に羊印を加えた会意文字で,羊肉にしんを通すことを示す。熟は丸(人が手で動作するさま。動詞の記号)と火を加えた文字で,しんに通るまで軟らかくすること」

とある。「熟」は,煮るとか熟(う)れる,という意味だが,

熟考,
熟視,

といった,「つらつら」と同じ,「奥底まで詳しいさま」の意でも使う。この当て字は慧眼である。

「尽(盡)」(呉音ジン,漢音シン)の字は,

「会意。盡は,手に持つ筆の先から,しずくが皿に垂れ尽くすさまをしめす」

とある。つきる意で,当初の「疲れ果てる」の意を表すには適した字を当てたことになる。しかし,「つくづく」の意味が,転じるにつれて,「つらつら」(熟々,倩々と当てる)と同じ字を当て替えたたことになる。

『日本語源広辞典』は,したがって,

「尽く+尽く」

とし,

「尽きるまでじっとを,更に重ねたものです。よくよく,じっとの意です」

とする。これが妥当に思える。『日本語源大辞典』も,

ツク(突く)の終止形を重ねたものか(小学館古語大辞典),
尽く尽くの意(岩波古語辞典),

を載せる。「つく」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/448009954.html)で触れたように,尽く,突くは,は「付く」に繋がり,同源である。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:熟々 つくづく
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