つくづく
「つくづく」は,
熟,
熟々,
と当てる(『広辞苑第5版』)。『大辞林』には,
「つくつく」とも,
とある。
念を入れて見たり考えたりするさま, よくよく,つらつら,じっと,
物思いに沈むさま,つくねんと,よくよく,
深く感ずるさま,
という意味で,
つらつら,
と重なるところがある。「つらつら」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/456542777.html)については,以前触れた。
『岩波古語辞典』は,
尽,
の字を当て
「尽(つ)く尽ぐの意。力尽きはててが原義」
とし,
力尽きた気持であるさま,
(力なく)じっとしているさま,
物淋しげなさま,
じっと思いを凝らすさま,
とある。「文明本節用集」には,
「熟,つくづく・つらつら」
と載っている(『岩波古語辞典』)ようであるので,意味の転化に応じて,
尽から熟へ,
と当て替えたものと思われる。
疲れ果てている,
↓
じっとしている,
という状態表現が,価値表現へ転じ,
物淋しい,
となり,そのじっとしているさまから,
じっと思いを凝らすさま,
に転じ,
念を入れて見たり考えたりするさま,
と転じたことになる。どこで,
尽から熟へ,
当て替えたのかははっきりしないが,『大言海』は,
熟,
を当て,
「就くを重ねたる語」
とし,
熟視,
熟思,
の意としている。
「熟」(呉音ジュク,漢音シュク)という字は,
「会意。享は,郭の字の左側の部分で,南北に通じた城郭の形。つき通る意を含む。熟の左上は,享の字の下部に羊印を加えた会意文字で,羊肉にしんを通すことを示す。熟は丸(人が手で動作するさま。動詞の記号)と火を加えた文字で,しんに通るまで軟らかくすること」
とある。「熟」は,煮るとか熟(う)れる,という意味だが,
熟考,
熟視,
といった,「つらつら」と同じ,「奥底まで詳しいさま」の意でも使う。この当て字は慧眼である。
「尽(盡)」(呉音ジン,漢音シン)の字は,
「会意。盡は,手に持つ筆の先から,しずくが皿に垂れ尽くすさまをしめす」
とある。つきる意で,当初の「疲れ果てる」の意を表すには適した字を当てたことになる。しかし,「つくづく」の意味が,転じるにつれて,「つらつら」(熟々,倩々と当てる)と同じ字を当て替えたたことになる。
『日本語源広辞典』は,したがって,
「尽く+尽く」
とし,
「尽きるまでじっとを,更に重ねたものです。よくよく,じっとの意です」
とする。これが妥当に思える。『日本語源大辞典』も,
ツク(突く)の終止形を重ねたものか(小学館古語大辞典),
尽く尽くの意(岩波古語辞典),
を載せる。「つく」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/448009954.html)で触れたように,尽く,突くは,は「付く」に繋がり,同源である。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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