2019年02月04日
かぶれる
「かぶれる」は,
気触れる,
と当てる。
漆にかぶれる,
の,「かぶれる」である。つまり,
漆または膏薬などの刺激で皮膚に発疹や炎症がおこる,
意であり,それをメタファに,
その風に染まる,感化される,
意でも使う。
あの思想にかぶれる,
という使い方をする。
『岩波古語辞典』は,
「黴と同根」
とする。「かび」は,
「ほのかに芽生える意」
とする。さらに,
「かもす,醸の字也。麹や米をかびざせて酒に造る也」(源氏物語・千鳥抄)
「殕,賀布(かぶ),食上生白也」(和名抄)
を引く。『大言海』は,「かび」の項で,
黴,
殕,
の字を当て,
黴(か)ぶるもの,
の意とするがどうも,この語源説は行き止まりに思える。
『大言海』は,「かぶれる」を,
「気触(けぶ)るの転」
とし,「か(気)」は,
気(け)の転,
ということらしい。
『日本語源広辞典』は,
「カ(感)+フレル(触)」
とする。「か」を,
気,
とするか,
感,
とするか,といなら,「気」に思える。その他に,
「蚊触」
とする説もある(和訓栞)し,
「香触」
といる説もある(俚言集覧)。「香」とするものに,
「カは香,ブルはクスブル,イブルのブルと同じ。またはカオブ(香帯)」
というのもある(音幻論=幸田露伴)。
「易林本節用集」も,
「蚊触」
と当てているらしく,「蚊」による仕業という認識があったらしい(『日本語源大辞典』)。
しかし,「感」はともかく,「香」はあるまい。ひとまず,『大言海』の,
「気触(けぶ)るの転」
を採る。この「かぶれる」をメタファにした,
思想にかぶれる,
の意は,「香」ではぴんとこまい。臆説かもしれないが,
被れる,
なのではないか,という気が少ししている。意味だけだが,「黴」が,
黴ぶる,
なら,
被る,
と重ねられる気がする。「かぶ(頭)」を活用させ,
カガフリ→カウブリ→カブリ,
と転訛した「被る」と重なって仕方がない。むろん臆説だが。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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