2019年03月03日

みどり


「みどり」は,

緑,
翠,
碧,

と当てる。

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「緑」(漢音リョク,呉音ロク)の字は,

「会意兼形声。右側の字(ロク・ハク)は竹や木の皮をはいで,皮が点々と散るさま。緑はそれを音符とし,糸を加えた字で,皮をはいだ青竹のようなみどり色に染めた糸を示す」

で,「靑竹や草の色で,青と黄の中間色」とある。

「翠(翆)」(スイ)の字は,

「会意兼形声。『羽+音符卒(シュツ ちいさい,よけいな成分を去って,小さくしめる)』。からだの小さくしまった小鳥のこと。また,汚れを去った純粋な色」

で,「よごれのないみどりの羽。『翡翠』(水辺に棲む小鳥の名。全身青緑色の美しい羽毛をもつ。雄を翡,雌を翠という),かわせみ」とある。

「碧」(漢音ヘキ,呉音ヒャク)の字は,

「会意兼形声。『玉+石+音符白(ほのじろい)』。石英のような白さが奥にひそむ青色。サファイア色」

で,「あおくすんで見える石。『碧玉』」とある(『漢字源』)。

「緑」は,萌黄,「翠」はかわせみ,「碧」は石,に由来する。

「みどりは」

「ミドが語根で,『瑞々し』のミヅと関係あるか」(『広辞苑第5版』)
「元来、新芽の意で、そこから色名に転じたといわれる」(『デジタル大辞泉』)
「本来色の名であるよりも,新芽の意が色名に転じたものか」(『岩波古語辞典』)

とあり,どうやら「みどり」は「緑」に合うように思えるが,『大言海』は,

「翠鳥色(そびどりいろ)の略轉かと云ふ,或は,水色の略轉か」

とするので,

翠,

が妥当ということになる。『日本語源広辞典』は,二説挙げている。

「水+トオル(通・透)の連用形」で,緑の字を当て,木の葉などが,水に濡れているようなミズミズシサをミドリといったのが語源です。洗い髪のみずみずしさを緑の黒髪,みずみずしいミドリゴ,みずみずしい松の若葉のミドリ,楓の若葉を下から見上げて透き通るようなミドリ」

と,いまひとつは,

「『カワセミの古語,ソニドリ,ソミドリ』が語源」

とする。「そにどり」は,

鴗鳥,

とあて,カワセミである。しかし,色は,今日でいう

青色,

である。「あお」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/429309638.html)で触れたことだが,「あを」は,

「一説に,古代日本では,固有の色名としては,アカ,クロ,シロ,アオがあるのみで,それは,明・暗・顕・漠を原義とするという。本来は,灰色がかった白色を言うらしい。」(『広辞苑第5版』)

とあり(『広辞苑第5版』),「あを」の範囲は広く,

晴れ渡った空のような色,
緑色,
青毛の略。馬一般にも言う。
若い,未熟の意,

とある。『日本語源大辞典』には,

「アカ・クロ・シロと並び,日本の木椀的な色彩語であり,上代から色名として用いられた。アヲの示す色相は広く,青,緑・紫,さらに黒・白・灰色も含んだ。古くは,シロ(顕)⇔アヲ(漠)と対立し,ほのかな光の感覚を示し,『白雲・青雲』の対など無彩色(灰色)を表現するのはそのためである。また,アカ(熟)⇔アヲ(未熟)と対立し,未成熟状態を示す。名詞の上につけて未熟・幼少を示すことがあるのは,若葉などの色を指すことからの転義ではなく,その状態自体をアヲで表現したものと考えられる」

としている。「あを」の中に,

みどり,

も含められていた,ということである。『語源由来辞典』(http://gogen-allguide.com/mi/midori.html)が,

「元来、『新芽』や『若枝』を 表す具体名詞であったことから、『みづみづし(みずみずしい)』と関係のある語と考えられている。『新芽』や『若枝』の色から、青色と黄色の中間色である『緑色』を表すようになった。それまで緑色を表していたのは『青』である。」

と,「緑色を表していたのは『青』である。」としているのはその意味である。『大言海』の語源説は,「アヲ」の包含されていた時代のことをいっているとしか思えない。その意味で,「あを」が広すぎて,

瑞々し,

を「みどり」色として分化させていったのだと思われる。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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