2019年03月04日

みどりご


「みどりご」は,

嬰児,
緑児,

と当てる。

三歳くらいまでの幼児(『広辞苑第5版』),
四五歳くらいまでの幼児にもいう(『岩波古語辞典』)

の意とあるが,

生まれたばかりの子供,
あかんぼう,
ちのみご,

とある方が近いのかもしれない(『大辞林』)。

「近世初期まではミドリコ。新芽のように若々しい児の意」

とある(『広辞苑第5版』)のだから。

孩児(かいじ),

とも言う,とある。

「大宝令では三歳以下の男・女児を緑と称すると規定してあり、奈良時代の戸籍には男児を緑児と記している」

とある(『精選版 日本国語大辞』)ので,由来は古い。

りょくじ,

とも言う。万葉集に,

「彌騰里児(ミドリこ)の 乳乞ふがごとく 天つ水 仰ぎてそ待つ」

とあるので,やはり,

乳飲み子,

のようだ。ただ幅は広く,『大言海』は,

「和訓栞『萬葉集に緑子と書り,稺弱(ちじゃく)にして松の蕋(みどり)などの如きを云ふなるべし』と嫩葉(わかば)の擬語」

としており,

小児の四五歳までの者の称,

とする。

「嬰児,孩児,美止利古,始生小児也」(和名抄),
「阿孩児,彌止利子」(字鏡),

を見る限り,幅があるように見える。

「嬰」(漢音エイ,呉音ヨウ)の字は,

「会意。嬰は『女+貝二つ(貝をならべた首飾り)』。首飾りをつけた女の子のこと。また,えんえんとなくあかごのなき声をあらわす擬声語ともかんがえられる」

とし,みどりご,あかごの意で,ここでもは幅ある。

「緑」(漢音リョク,呉音ロク)の字は,「みどり」http://ppnetwork.seesaa.net/article/464438658.html?1551558562で触れたように,

「会意兼形声。右側の字(ロク・ハク)は竹や木の皮をはいで,皮が点々と散るさま。緑はそれを音符とし,糸を加えた字で,皮をはいだ青竹のようなみどり色に染めた糸を示す」

で,「靑竹や草の色で,青と黄の中間色」とある。

「孩」(漢音ガイ,呉音カイ)の字は,

「会意兼形声。亥(ガイ)は,ぶたの骨組を描いた象形文字で,骸(ガイ 骨組)の原字。孩は『子+音符亥』で,赤子の骨組ができて,人らしい形になること」

で,ようやく骨組のできた乳飲み子の意。当てた漢字の意味の幅は,「みどりご」の年齢層の幅をしめしているようである。

「赤ん坊を『みどりご(みどりこ)』と呼ぶの は、大宝令で三歳以下の男児・女児を『緑』と称するといった規定があったことに由来する。大宝令で『緑』と称するようになったのは、生まれたばかりの子供は、新芽や若葉のように生命力にあふれていることから喩えられたものである。」

とする(『語源由来辞典』http://gogen-allguide.com/mi/midorigo.html)は,説明が逆立ちはあるまいか。「みどり」で触れたように,

「ミドが語根で,『瑞々し』のミヅと関係あるか」(『広辞苑第5版』)
「元来、新芽の意で、そこから色名に転じたといわれる」(『デジタル大辞泉』)
「本来色の名であるよりも,新芽の意が色名に転じたものか」(『岩波古語辞典』)

という由来にあり,

「みどり(緑)+子」(『日本語源広辞典』)

と,新緑の緑のように瑞々しの未熟な子の意味であり,その背景があって,大宝令で『緑』と規定したに過ぎないのではあるまいか。しかし,もっと踏み込めば,古くは,「みどり」は「あを」に含められていた。その「あを」は,

「アカ・クロ・シロと並び,日本の木椀的な色彩語であり,上代から色名として用いられた。アヲの示す色相は広く,青,緑・紫,さらに黒・白・灰色も含んだ。古くは,シロ(顕)⇔アヲ(漠)と対立し,ほのかな光の感覚を示し,『白雲・青雲』の対など無彩色(灰色)を表現するのはそのためである。また,アカ(熟)⇔アヲ(未熟)と対立し,未成熟状態を示す。名詞の上につけて未熟・幼少を示すことがあるのは,若葉などの色を指すことからの転義ではなく,その状態自体をアヲで表現したものと考えられる」

という(『日本語源大辞典』),「あを」のもつ,

未熟・幼少を示す,

という含意の翳を,「みどり」も引きずっているとみていい。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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