2019年03月05日
ちび
「ちび」は,
身体のちいさい,
意だが,
幼い,
意でも,
軽んずる,
意にも,
親しみをこめる,
意でも使う。
ちびっちょ,
ちびっこ,
ちび助,
等々ともいう。
禿び,
と当てて,
ちびたもの,すりへったもの,
の意で,
多く他の語に付いて,
ちび下駄,
ちび鉛筆,
等々と用いられる。
たとえば,
「動詞『禿びる(ちびる)』の 連用形が名詞化した語で、漢字では『禿び』とも書かれる。動詞『禿びる』は先がすり切れて短くという意味で、名詞の上に付いて擦り減ったものを表す言葉に『ちび下駄』や『ちび鉛筆』がある。『小さくなる』『短くなる』という意味が転じ、小さい物や背の低い人などを『ちび』と言うようになった」
という(『語源由来辞典』http://gogen-allguide.com/ti/chibi.html)説がある。やはり同様に,
「チビとは先がすりへる、すり切れるといった意味の『禿びる(ちびる)』からきた言葉で、小さいという意で使われる。例えば、年齢が小さいということから、幼い子供をチビと呼んだり、背が低い人のこと指して用いる。また、人以外でも小さい物を指しても用いる(『ちびっこい』ともいう)。」
とある(『日本語俗語辞典』http://zokugo-dict.com/17ti/chibi.htm)。『日本語源広辞典』も,
「チビル(すりきれて小さくなるの連用形)」
を採る。しかしどうも,「小さい」状態を指す,
ちび助,
の「ちび」と,小さくなったという変化を指す,
ちび下駄,
の「ちび」は,語感が異なる気がする。確かに,「禿」を当てる,
ちび,
は,「擦り減る」意で,
古形ツビ(禿)の転,
とあり(『岩波古語辞典』),「つび(禿)」は,
ツビ(粒)の動詞形,
で,
角が取れて丸くなる,
意である。これは,
ちび下駄,
の含意と合う。ついでだが,「禿」(トク)の字は,
「会意。『禾(まるいあわ)+儿(人の足)』。まるぼうずの人をあらわす」
で,「ちび下駄」の含意とも重なる。しかし,
小さい,
意の,「ちび」は別系統ではないか。『日本語の語源』は,
「チヒサシ(小さし)は,関東ではチッサイ・チッチャイになり,上の二音のチヒをとってチビになった」
とし,『日本語源大辞典』は,
チビリ・チビルなどの語源で,チョビに同じく小・少の意の擬態語(上方語源辞典=前田勇),
を挙げる。『日本語源大辞典』は「ちび(禿)る」の語源は,別に,
ツブルと通ずる(和句解・和訓栞),
キフル(髪斑)の義(言元梯),
を載せるが,こちらの「ちび」は,
粒,
から来ているとみていい。「つぶ」は,
「ツブシ(腿)・ツブリ・ツブラ(円)・ツブサニと同根」
とし(『岩波古語辞典』),
ツブラ(円)義(東雅・夏山談義・松屋筆記・箋注和名抄・名言通・国語の語根とその分類=大島正健・大言海),
等々から見て,「粒」の意から出ているとみていい。ややこしいのは,
「ちび(チビ)とは、身長の低いこと、また身長の低い人、あるいは、子どもを呼ぶときの愛称としても用いられる。チビの語源は『丸くて小さいもの』を意味する「ツブ(粒)」の動詞形で『角がすりへって丸くなる』という意味の『つび(禿び)』であり、すり減って小さくなるところから『ちび』となったものという。」
とある(『笑える国語辞典』)ように,
粒→小さい→擦り減る,
と意味ありげに繋がることだ。しかし,
ちびちび飲む,
という擬態語の「ちび」は,
少ない,
小さい,
の意味である。「ちびちび」は,
(おしっこを)ちびる,
の「ちび」で,
少しずつだす,
出し惜しむ,
少しずつ飲む,
意で,擦り減る意の,
ちび(禿)る,
とは,今日でも使い分けている。同じ「ちび」のはずはない。「ちびちび」について,
「江戸時代に現れる語で,『少しずつ出す』意を表す『ちびる』という語『おしっこをちびった』の『ちびる』も是と関係がある。『和漢語林集成』には『金をちびちび渡す』と,『ちびちび酒を飲む』の例が挙がっている」
とある。「ちび助」の「ちび」は,
ちびちび,
の「ちび」であり,「ちび鉛筆」の「ちび」は,
ちびる(禿),
の「ちび」と別系統である。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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