2019年03月08日

ずんぐりむっくり


「ずんぐりむっくり」は,

ずんぐりして肉が盛り上がっているさま,

の意(『広辞苑第5版』)だが,人の体格を言い表わすのに使う。「ずんぐりむっくり」は,

「ずんぐり」を強めていう語,

ともある(『大辞林』)。「ずんぐり」が,

太くて短いさま,

というか,

太って背の低い人,

を意味するので,それに「むっくり」を加えて,

横巾の広い筋骨の逞しさ,

を加味しているのだろうか。二葉亭四迷『浮雲』には,

「横巾の広い筋骨の逞しい、ズングリ、ムックリとした生理学上の美人で」

とあるので,男性ばかりを指したのではなかったらしい。

「むっくり」は,

唐突に起き上がるさま,
肉づきよく肥えたさま,

の意で,「むっちり」とは違う。「むっちり」は,

肉づきがよく弾力があるさま,

とある(『広辞苑第5版』)。『擬音語・擬態語辞典』には,

「むっちり」は,

腕や腿などの肉づきがよく中味が詰まった感じの様子,

とあり,それに準えて,

張りと重量感があって歯ごたえがある様子,

の意で使う。

むっちりした歯ごたえのある,

とたべものの表現に使うが,

むっくりした歯ごたえ,

とは言わない。「むっくり」は,「むくり」「むくっ」と同様,動作の擬態表現から来ている。

「『むっくり』は動作が大きいのに対して,『むくり』はそれより動作が小さい。促音「っ」が入ることで動作が大下差になる例には,『がくり-がっくり』『ぐたり-ぐったり』などがある。また『むっく』は『跳ね起きる』にかかる例が目立つので,『むっくり』よりも勢いよく起き上がる様子を表す」

とある(『擬音語・擬態語辞典』)。「むっくり」は,「ずんぐりむっくり」と,

「背が低くて太った意の『ずんぐり』と組み合わせて使われる場合が多い」

らしく,この場合は,動作の表現ではなく,「太った」の強調の意味になっている。そして,

「『ずんぐり』と『むっくり』の単独例は江戸時代からあるが,『ずんぐりむっくり』の例は,明治以降である」

とあり(『江戸語大辞典』は,「ずんぐり」「むっくり」で載る),

「『ずんぐり』と『むっくり』は共に太っている様子を示し,その二語を重ねて強調した」

言い回し,とある。二葉亭の表現も,

ズングリ、ムックリ,

と切れているので,使われ始めのように見える。『岩波古語辞典』には,「ずんぐり」は載らず,「むっくり」の代わりに,「むくっと」が載り,

むくとの促音化,

とあり,『大言海』も,

むくと,
むくっと,
むっくりと,

と転訛のプロセスを載せている。何れも擬態語と見ていい。「ずんぐり」は載らず,「ずんぐりのむっくり」が,

背が低くて,肥満(ふと)りたる體を云ふ語,

と載る。「むっくり」は,

むくと→むくっと→むっくりと,

と,擬態語とみていい(独楽の古名『つむくり』で独楽の形から」(語源由来辞典)とする説もあるが)。ただ,「ずんぐり」は,『日本語源広辞典』に,

「『ずん(くひせれていない)+ぐり(盛り上がっている)』です。短身で太っている様子を表す言葉です」

とある。これだと分からない。「ずんどう」ということばがあり,

寸胴,

と当てる。

腹から腰にかけて同じように太くて不格好なこと,

の意(『広辞苑第5版』)が載る。「寸胴」には,

「陶芸界では、焼き物(陶磁器)を形成する際の途中の形で、円筒形のものを寸胴(ずんどう)と言う。」
「直径と深さがほぼ同じ、円筒形の深鍋は、寸胴鍋(ずんどうなべ)あるいは単に『寸胴』といわれる」

等々がある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%B8%E8%83%B4)が,「ずんぐり」の語源には,

「上から下まで太さが変わらない意味の『ずんど・ずんどう(寸胴)』の『ずん』と,擬態語の語尾に使われる『くり・ぐり』が組み合わさった」(『語源由来辞典』http://gogen-allguide.com/su/zungurimukkuri.html

とある。しかしこれは,「寸胴」を前提にしているような気がする。

『日本語源広辞典』は,「ずんどう」について,

「『髄(真ん中)+胴』の変化です。真ん中を輪切りにした胴の意です。腰の括れていない胴を言います」

とある。この輪切りを,

ずんどぎり(寸胴切),

といい,

ずんぎり(寸切),

という。「寸切」は,

「『髄(ずん)切り』の意。『寸』は当て字という。一説に『すぐきり(直切り)』の音変化とも」

とあり(『デジタル大辞泉』),『大言海』には,「すんきり」を,

「直切(すぐぎり)の音便転かと云ふ」

とし,

「勾配も無く,面も取らず,真直ぐに断ち切ること。つつぎり」

とある。筒切り,つまり,

輪切りである。この表現は,室町末期の『日葡辞典』に,

まるくて長いものを横に切ること,

とあり,この断ち方から,

大木の幹を切って下だけ残し,茶室の庭などに植えて飾りとするもの,

とか(『デジタル大辞泉』),

筒型の花活けの総称,

とか(『江戸語大辞典』),

茶桶の蓋を立上がりがほとんどない程浅くした「頭切(ずんぎり)」(筒切・寸胴切),

というのは,あくまで,筒切りになぞらえたことばと見ていい。どうやら,「ずんぐり」は,

寸胴(ずんどう),

に行き着くが,微妙なのは,「寸胴」について,

「太鼓の音から,太鼓そのもの,さらにその形状に似たものをいうようになった(松屋筆記),

とあることだ(『日本語源大辞典』)。ふと,太鼓が先かもしれない,と思えてくる。となると,擬音ということになる。

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(寸胴は寸筒とも記し、太い竹を水平に切った花器 https://item.rakuten.co.jp/kadosha/c/0000000178/より)

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:58| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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