2019年03月09日
ゆらぐ
「ゆらぐ」は,
揺らぐ,
と当てる。「揺(搖)」(ヨウ)の字は,
「形声。䍃は『肉+缶(ほとぎ)』の会意文字で,肉をこねる器。ここでは音をあらわす。搖は,ゆらゆらと固定せず動くこと。游(ユウ ゆらゆら)と非常に近い。」
とある。
「ゆらぐ」は,上代,
ゆらく,
と清音だったらしい。
ゆれる,
ぐらつく,
という意味だが,
玉などが触れ合っ音をたてる,
という意で,
手に取るからにゆらく玉の緒,
という万葉集の用例が載る(『広辞苑第5版』)。語源と関わるのかもしれない。
『岩波古語辞典』には,「揺らぎ」の項で,
「ユラは擬音語。キは擬音語をうけて動詞化する接尾語」
とある。つまり,擬態語ではなく,
音を立てる,
意なのである。「ゆらき」を他動詞化した,
ゆらかす,
も,
鳴らす,
意である。
『大言海』は,「ゆらぐ」に,
搖鳴,
と当てて,
ゆるぎ鳴る意,
とする。
鏘鏘(ゆらゆら)と鳴り響くゆらゆらとして音す,ゆらめく,ゆるぐ,
の意とする。「ゆら」は,
玉などが触れ合った鳴るさま(足玉も手玉(ただま)もゆらに織る機を(万葉集)),
の意と,それを擬態化した,
ゆるやかなさま(大君の心をゆらみ臣の子の八重の柴垣入り立たずあり(記紀歌謡)),
の意がある(『岩波古語辞典』)。
ゆらに,
と副詞化した場合も,
緒に貫ける玉の相触れて鳴り響(ゆら)ぐ音に云ふ語。ゆららに,モを冠らせてモユラニとも云へり,
とある(『大言海』)。つまり,「ゆら」は,
擬音語,
であった。だから「ゆらく」と濁らなかった。しかし,「ゆらぐ」
動ぐ,
と当てる頃には,
ゆるやかなさま,
の擬態語に転じ,
ゆらゆら,
ゆらら,
ゆらりと,
は,
「髪は扇をひろげたるやにユラユラとして」(源氏)
として揺れる擬態語として使われている。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
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書評
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