2019年03月13日

さか


「さか」は,

坂,
阪,

と当てる。「坂」(阪)(バン,漢音ハン・ベン,呉音バン)の字は,

「会意兼形声。反はそりかえって弓型に傾斜する意を含む。坂は『土+反(そりかえる,傾斜する)』」

で,さか,あるいは,⌒型にそりかえった丘,傾斜した山道,の意である。

『大言海』は,

「級處(シナカ)の約と云ふ(然(しか),さ)」

とする。

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『日本語源大辞典』に載る,

サはサキ(割)などの原語で,刺・挿の義。カは処を意味する語。分割所の意から境の意を生じ,さらに山の境の意から坂の義に転じた(日本古語大辞典=松岡静雄),
サカヒ(堺・境)の転義(古事記伝・山鳥民譚集=柳田國男),

という「境」説は,

「傾斜地,上り下りする道をさす語であるところから,古来さまざまな意味合いで用いられてきた。語源については,〈サカシキ(嶮)〉〈サカヒ(堺,境)〉〈サカフ(逆)〉に発するとか,また,〈サキ(割)〉の原語のサとカ(処)とから成るとかいわれているが定かではない。しかし,坂といわれる場所が地域区分上の境界をなしたり,交通路の峠をなしたりしている事例が少なくないことは,語源に関する諸説の中ではとくに重要とみられる。」

とする考え(『世界大百科事典 第2版』)からみると,重要で,『岩波古語辞典』は「さか(境)」の項,で,

「サカ(坂)と同根」

とし,

「古くは,坂が区域のはずれであることが多く,自然の境になっていた」

とある。「さか(坂)」と「さか(境・堺)」は,漢字を当てはめる前は,いずれも「さか」であったのではないか。その場に居合わせた人にとって,会話の文脈上,その意味の区別は明確であった。

坂の意のサに場所の意のカが複合した語(角川古語大辞典),

る近縁の説である。

他の語源説には,

登降しがたいところから,サカフ(逆)の義(名言通・和訓栞・言葉の根しらべの=鈴木潔子),

がある。『日本語源広辞典』は,「サカフ」説を採り,

「逆さが坂の語源」

とし,

「サカ波,サカ落とし,サカ立ち,などみな逆の意のサカです。下り道の方向を順と考えますと,坂は,逆(サカ)が語源だとするのが。自然な帰結です」

とい。しかし,「サカ立ち」の「さか」と「サカ道」の「さか」が同じというのは,言葉の感覚としても,体感覚としても,ちょっと合わない気がする。逆さは,あくまでひっくり返る感じである。坂に,そんな感覚はない。険しい坂道でも,あくまで傾斜道でしかない。

サカシキ(嶮・嵯峨)意から(和句解・日本釈名・東雅・国語の語根とその分類=大島正健),
サガル(下)の義(言元梯),
シナカの急呼。シナは階級・科,カは処の義(箋注和名抄・大言海),
「さ」は方角を意味する(精選版 日本国語大辞典)

等々の諸説も,ちょっと説得力に欠く。

「坂といわれる場所が地域区分上の境界をなしたり,交通路の峠をなしたりしている事例が少なくないこと」

から見て,

さか(坂)

さか(境・堺)

とは同意であったのではないか。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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