2019年03月22日

へつらう


「へつらう」は,

諂う,
諛う,

と当てる。

人の気に入るように振舞う,媚びる,おもねる,

意である。

「諂」(テン)の字は,

「会意兼形声。臽(カン・タン)は,くぼむ,穴に落すの意をあらわす。諂はそれを音符とし,言を加えた字。わざとへりくだって足いてを穴に落すこと」

とあり(『漢字源』),へつらう,人の気にいるようなことをいってこびる意である。

「諛」(ユ)の字は,

「改憲形声。臾(ユ)は,両手の間から物がくねくねとぬけることを示す会意文字。諛は『言+音符諛(くねくねとすりぬける)』」

とあり(仝上),意味は,へつらうだが,言葉を曲げて相手のすきにつけこむ,とあるので,「諂」より,多少作為が際立つのかもしれない。

『大言海』には,

「謙(へ)りつらふの略。…ほとりへつくやうの略。とかくに君の方によりそひて,心をとらむとする形容より云ふ」

とあり,

利のために,他の心を喜ばせ敬う,

意とある。さらに,「つらふ」において,

拏,

と当てて,

「万葉集『散釣相(サニツラフ)』同『丹頬合(につらふ)』の釣合(つら)ふにて,牽合(つりあ)ふの約(関合(かかりあ)ふ,かからふ),縺合(もつれあ)ふの意なり。」

と指摘し,

「争(すま)ふ。かにかくとあつかふ。此語,他語と熟語となりて用ゐらる。『引つらふ』(牽)。『挙げつせふ』(論),『関づらふ』『為(し)つらふ』『詫びつらふ』『言ひづらふ』『謙(へ)つらふ,へつらふ』(諂)などの類あり」

とする。「へ(謙)る」は,

減ると同根,

らしく(『岩波古語辞典』『大言海』),

おのれを卑下す,

つまり,

おのれを削る,

意である。こう見ると,

へつらう,

は,

おのれを引き下げて,相手を持ち上げ,あれこれと言葉と振舞いで「つらひ」て,媚びる,

意となり,同義の,

おもねる,

の,

迎合する,

意に比べると,かなり意図的に自分を下げ,相手を持ち上げている作為が目立つ。

諂う,
諛う,

の字を当てた所以である。『日本語源広辞典』は,二説挙げる。

説1は,「へ(謙)+つらふ」,
説2は,「へ(辺)+つらう(連なる),

『日本語源大辞典』は,これを,

「動詞『へる(謙)』の連用形『へり』に接尾語『つらふ』が結合した説」
「動詞『へつかふ』と語構成が類似し,意味にも共通性がかんじられるところから,『あたり』を意味する『へ(辺)』に『つらふ』が連接したとみる説」

と整理する。しかし「へつかふ」は,

そばにつく,
舟が岸につく,

意である。そこにへりくだる意はない。語呂からの類推に過ぎない気がする。

「『阿る』は『上司に阿る』『権力に阿る』といったように人に対しても見えないものに対しても使いますが、『諂う』は『権力に諂う』といったように見えないものに対しては使いません。『上役に諂う』『リーダーに諂う』と人に対して使います。『諂う』は『人に気に入られるように、自分を必要以上に卑下して振る舞う』と、マイナスな意味が含まれます。『阿る』よりも『諂う』の方が、自尊心の低さや偏屈さが感じられます。」

と比較している(https://eigobu.jp/magazine/omoneru)。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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