2019年04月02日

あえる


「あえる」は,

和える,

と当てる。「和え物」の「あえ(へ)る」である。「和え物」は,

「アエル(和える)+物」

「和える」は,

混ぜ合わす,

意である。「和」の字を当てたのは,「和」(呉音ワ,唐音オ,漢音カ)の字は,

「会意兼形声。禾は粟(アワ)の穂のまるくしなやかに垂れたさまを描いた象形文字。窩(カ 円い穴)とも縁が近くかどだたない意を含む。和は『口+音符禾』」

で,やわらぐ,丸くまとまった状態の意の他に,一緒に解けあったさま,また,成分の異なるものをうまく配合する,またその状態,の意があるためかと思われる。それにしても,「あう(ふ)」という字に当てた漢字の多いこと。かつて柳田國男が,

「日本語の表記で『どんな漢字を使うんですか』という質問をする人がいますが、これを柳田國男は『どんな字病』とよんでなげいていました」

とか(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1317424013)。和語は,文字を持たなかったので,その場にいる人に通じさえすればよかった,文脈依存性が強いので,

会う,
遭う,
遇う,
逢う,
合う,

も,「あう」でしかなかった。

「合う」は“一つに合する。調和する。適合する”の意。「彼とは気が合う」「サイズが合う」「相性が合う」 
「会う」は“顔を合わせる。対面する”の意。「先輩に会う」「打ち合わせのため喫茶店で会う」
「逢う」は“出会う。落ち合う”の意。「恋人に逢う」「会う」とも書く。
「遭う」は“好ましくないことに出会う”の意。「にわか雨に遭う」「交通事故に遭う」

等々(大辞林 第三版)とか,

ぴったりあう,互いに~する意は「合」,
人とあう意は,「会」「逢」
偶然あう場合は,「遭」「偶」

等々(『広辞苑第5版』)という区別は,漢字によって,使い分けたにすぎない。『岩波古語辞典』は,

二つのものが互いに寄っていき,ぴったりぶつかる意,
二つのものが近寄って,しっくりと一つになる,

と大きく意味を二つに分けるが,そんな微妙な差は,口頭での会話では,言外に共有し合っていた。文字として,それを表現するのでなければ,それで済んだ。ちょうど,

さよなら,

が,

さようなる次第ですのでお別れします,

の「左様なる次第」を共有できているから,「さようなら」「さらば」で済んだりと似ている。このことは「さようなら」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/402221188.html)で触れた。

『大言海』は,「あふ」について,

「合ふ」
「嫁ふ」(合ふの意)
「會ふ」「遭ふ」「遇ふ」(顔の合の意)
「闘ふ」(會ふの意)
「饗ふ」(遭ふの他動,待遇の意)
「和ふ」「韲ふ」(合ふの他動詞,雑ズの意)
「敢ふ」

と,項を分けている。出発点は,「合」を当てた「あう」である。『日本語源広辞典』は,

「上下の唇が自然に相寄る音,あるいは様子から」

というのが有力な説,とする。

「『二つのもののアイ(間)がなくなること』がアウです」

とする。これを,漢字で意味を使い分けなければ,文字化したとき意味が伝えられないからに他ならない。当てた漢字は,たとえば,

「遇」はふと生きふなり,期せずして會するを遇といふ,偶字の意を兼ぬ,
「逢」「遭」「値」は,略々同じ,両方り行き逢うなり,
「合」は,ひたりと符を合わせる如く,よく合ふなり,吻合,符合と連用す,
「會」は,総べ聚る義,會計は総算用なり,朝會,會同と熟す,

とある(『漢字源』)。「あう」の語源は,二つの唇説以外に,

フタアエフ(二肖経)の上略(日本語原学=林甕臣),
アアフツの略。フツはフタツ(二つ)の意(本朝辞源=宇田甘冥),
アイ(間)からアフ(逢)からアイ(間)となった(和句解),

等々ある(『日本語源大辞典』)が,やはり,

上下のが唇自然に相寄るときの音,あるいは様子,

がいいのではないか。因みに,「饗ふ」は,

アフ(遇)の他動詞,
アハセ(合)の義,

であり,「敢ふ」は,

合ふの義,

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:和える あえる
posted by Toshi at 04:43| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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