「イルカ」は,
海豚,
と当てる。和名抄では,
江豚 伊流可,
古事記では,
入鹿魚,
と表記している。
「海豚(カイトン)」は,中国語である。
「宛字、〈海豚・江豚〉は中国人の用語で、イルカを〈豚〉に似た形と断じての命名であろう」
と(語源海),とある。「イルカ」に当たる漢字は,一字だけで表す字が数種あるらしい。
「イルカ」の定義は,曖昧で,
「哺乳綱鯨偶蹄目クジラ類ハクジラ亜目に属する種の内、比較的小型の種の総称(なお、この区別は分類上においては明確なものではない)。」
とされ(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%AB),
「分類学上は『イルカ』に相当する系統群は存在しない。一般的にはハクジラ亜目に属する生物種のうち比較的小型の種を総称して『イルカ』と呼ぶことが多いが、その境界や定義についてははっきりしておらず、個人や地域によっても異なる傾向がみられる。」
日本では,
「日本語では、成体の体長でおよそ4mをクジラとイルカの境界と考えることが多い。」
という。総じて,
小形のハクジラ類の総称,
ということらしい。この「イルカ」の定義同様,「イルカ」の語源も,例えば,『語源由来辞典』が挙げるのは,
①イルカ漁をすると大漁の血が流れたり,辺り一面が血の臭いになることから「チノカ(血臭)」が転じた,
②「行く」を意味する「ユルキ」が転じた,
③海面に頭を出し入れすることから,一浮一没の魚の意味で「イリウク(入浮)」が転じた,
④よく入江に入ってくるので「イルエ(入江)」が転じた,
⑤イルカの「イル」は,「イヲ(魚)」で,「カ」は食用獣をいう語,
の五説で,「イルカ」の語源説のすべてである。最も有力な説は,⑤とし,
「古く『ウロコ』は『イロコ』と呼ばれており,『イル』や『イロ』『イヲ』は魚を表す言葉に用いられる。また,食べ物の神は『ウカノミタマ(食稲神)』と呼ばれ,『ウカ』には『食』の意味があり,『稲』が陸上の食『ウカ』とすれば,水中のウカが『イルウカ』や『イロウカ』と呼ばれ,転じて『イルカ』になったことは十分考えられる」
としている(http://gogen-allguide.com/i/iruka.html)。「行く」説も,地方によっては,「イルカ」を「ユルカ」と呼ぶところもある,としている(仝上)が,『日本語源広辞典』は,
「イル(湾や入江に入る)+カ(動物)」
とする。
カは食用獣をいう語(日本古語大辞典=松岡静雄),
とする根拠は分からないが,それを前提にすると,
イル,
が,
行く(ユルキ),
か
入る,
か
イヲ(魚),
となるが,僕は,「イヲ(魚)」と思える。「ゆく」は,
「現在の地点を出発点または経過点として,進行・移動が,確かな目標あるいは広い前方に向かって持続される意。また,時の経過とともに現在の状態が持続し,その程度が増大する意。奈良時代以降,同義のイク(行)よりも広く使われ,特に漢文訓読体ではユクの形を用いた」
とある(『岩波古語辞典』)。「入る」というのは常時ではないので,消極的に「イヲ」かと。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
ラベル:イルカ