2019年04月11日

あげつらう


「あげつらう」は,

論う,

と当てる。「論」(ロン)の字は,

「会意兼形声。侖(リン)は『まとめるしるし+冊(文字を書く短冊)』の会意文字で,地を書いた短冊をきちんと整理して,まとめることをあらわす。論は『言+音符侖』で,ことばをきちんと整理して並べること」

とある(『漢字源』)。「評論」「討論」の「筋道を立ててきちんと整理して説く」意であり,「理論」の「理くつをたてたはなし」の意である。「勿論(ロンナク)」は,いうまでもないの意であり,日本語ではモチロンと訓ます。

「論」は,論ずる意で,

あげつらう,

に当てて,

物事の理非をあれこれ言い立てる
とやかく言いたてる,

の意で,「論」の意味からは,少しずれる。しかし,『岩波古語辞典』は,

論ずる,
あれこれと言い合う,

意とするので,もともとは,今日の,どちらかというと,

為にする,

ような意の「あげつらふ」とは違ったのかもしれない。

「『あげ』は挙,『つらう』はあれこれとする意」

とある(『広辞苑第5版』)。『岩波古語辞典』は,

「アゲはコトアゲ(言挙げ)のアゲ,ツラフはイヒヅラヒ・ヒコヅラヒのツラフに同じ」

とする。これだと分かりにくいが, 「ヒコヅラフ」を見ると,

あれこれと力を入れてひっぱってみる,

意で,

「ツラフは連り合ふの約,アゲツラヒフ・カカヅラフのツラフと同じ」

とあり,「イヒヅラフ」は,

あれこれ言う,

意で,

「ツラフはアゲツラフ・ヒコヅラフのツラフと同じ」

とある。「ツラフ」は『岩波古語辞典』には載らないが,『大言海』に,

拏ふ,

と当て,

「萬葉集『散釣相(サニツラフ)』,『丹頬合(ニツラフ)』の釣合(ツラフ)にて,牽合(つりあ)ふ約(関合ふ,かからふ),縺合(もつれあ)ふの意なり。同趣にて,しらふ,しろふという語あり」

とし,

爭(すま)ふ,

の意とし,

「此語,他語と熟語となりて用ゐらる。『引(ひこ 牽)づらふ』『挙げつらふ』『関づらふ』『為(し)づらふ』『詫びづらふ』『言ひづらふ』『譲(へ)つらふ』などの類なり。」

とある。「言挙げ」は,

声高く言い立てること,

であるので,どうやら,元々,

「あげつらふ」

には,

事々しく,ああだこうだと言い立てる,

意があったものと思われる。「論」は「論」でも,

論争,

に近い。『日本語源大辞典』は,

「『あげ』は『挙げ』,『つらふ』は『引こづらふ』などの『つらふ』で動作や状態が強く長く続くことを表す」

とする。『日本語源広辞典』は,

「アゲ(言挙げ)+ツラウ(連なり合う)」

とし,良い悪いを言い立てる,

意とする。「あげ」は,「挙げ」ではなく,「言挙げ」でなくては,意味が通じまい。ただ,

「もともとは負のイメージはなかったが、近世以降、非難をこめて述べ立てる含みが込められるようになり、『欠点をあげつらう』などのように用いられるようになった。」(『由来・語源辞典』)

というように(http://yain.jp/i/%E8%AB%96%E3%81%86),単に言い立てるという状態表現であったのが,事々しく言い立てる価値表現へと転じたということのようである。

因みに,「つらふ」は,

色の映合(さしあ)ふ,

意にも用い,「しらふ」は,

他の色の地に白く出(いで)たる斑(ふ),

と同趣という意味である。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:論う あげつらう
posted by Toshi at 04:07| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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