あつい
「あつい」は,
厚い,
と当てる「あつい」である。
熱い,
暑い,
とは,
「アクセントが異なるうえ,語源も関連づけにくいため」
別語と考えられる(日本語源大辞典)。
篤い,
と当てる,「病が,篤い」の「あつい」は,かつて,
アヅシ,
とも言ったらしい(岩波古語辞典)が,
「アツユの轉。連用形しか文献に見えない」
あつ(篤)い,
という言い方もあったらしい(岩波古語辞典)。
容態が重くなる,
意だが,
「中世にはすでに難解な語だったらしく,古写本の本文にアツカヒと訂している本もある」
ほど使われていない。「あつゆ」は,
あつえひと(篤癃),
しか載らず,
「アツエはアツ(篤)に自発のユ(見ユ・肥ユ。映ユなどのユ)の付いた語。おのずと病が篤くなる意。『癃』は病の重い意」
とある。しかし「あつゆ」は,
「熱(アツ)を活用す」
とあり(大言海),「篤し」は,
「(暑い・熱いの)語の活用を変じて(著(いちぢる)き,いちじるしき。喧(かまびす)き,かまびすしき),ただ病の重ぐなる意となれるなるべし(類聚名物考)。悶熱(あつか)ふ,あつゆ,あつしるなども同趣也,説文『人疾甚曰篤』。」
とある(大言海)のを見ると,「篤い」は,「熱い」「篤い」からの転化という見方もできる。漢方では,
「寒けのする病を寒といい,発熱する病を熱という」
とある(漢字源)のとも関わるかもしれない。『日本語源広辞典』は,
「アツ(厚い・篤い)は,主題とするものが『集まり重なる』意の『アツ』」
と,
篤い,
と
厚い,
を同源とするが,上記に見たように,「厚い」の語源としてはともかく,「篤い」の語源は別と掌考えるべきだろう。他には,
アツル(当)から出た形容詞。当てた物が重なったさまをいう(和句解・国語の語根とその分類=大島正健),
アツムルシキ(集如)の義。ツムの反ツ。シキの反シ(和訓考・名言通),
アツム(弥積)の約(言元梯),
イヤツミシ(弥積如)の義(日本語原学=林甕臣),
アメツチ(天地)の略伝(和語私臆鈔),
等々ある。どうも多くは,
集む,
と関わらせる。「集む(める,まる)」は,
厚(あつ)の活用か(長むる,広むる),
としている(大言海)ので,「集む」と「厚い」は重なる気配である。『日本語源広辞典』は,二説挙げる。
説1は,「アツ(厚くなる・重なる)」+ム」。厚と集が同じアツの語源。同じ物質がどんどんむ集まると厚くなるという語が生まれ,人がどんどん多くなり厚くなると,集まるという語がうまれた,
説2は,「ア(接頭語)+積む」,
あ,積む,
は,『大言海』も挙げる,和訓栞の説だが,面白いが,如何であろうか。しかし,
集む,
と
厚い,
がかなり重なり,それが,
積む,
とも意味が重なるようである。そう見ると,
面の皮が厚い,
の意味は,なかなか厚みが増す。
「厚」(漢音コウ,呉音グ)の字は,
「会意。厚の原字は,髙の字をさかさにした形。それに厂(がけ,つち)を加えたものが厚の字。土がぶあつくたかまったがけをあらわす。土に高く出たのを高といい,下にぶあつくたまったのを厚という。基準面の下にぶあつく積もっていること」
「篤」(トク)の字は,
「会意兼形声。竹は周囲を欠けめなくとりまいたたけ。篤は『馬+音符竹』。全身に欠けめのない馬のことをいい,行き届いた意」
とある。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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