2019年04月24日
積む
「つむ」という和語に当てる漢字には,
集む,
詰む,
摘む,
抓む,
積む,
等々がある(この他にも,切む,齧むもある)。ここでは「積む」を取り上げてみるが,「摘む」は,「爪」と関わるので,除外できるとしても,上記のいずれかと,語源が重なりそうな気がする。直感的には,
集む→詰む→積む,
といった意味の流れがある気がするが,「積む」は,
「数あるもの,量るものを一まとめにうず高く重ねて置く意。類義語カサネは,ものを,その上その上と順序をもって置く意」
とある(岩波古語辞典)。「詰む」は,
蔵む,
とも当て,
「一定の枠の中に物を入れて,すき間・ゆるみをなくす意」
とある(岩波古語辞典)。「詰む」には,
集(つど)う,
の意味があり(大言海),「集む」は,
あつむ(集)の約,
とある(大言海)ので,「詰む」と「集む」はつながるようである。
「集」(漢音シュウ,呉音ジュウ)の字は,
「会意。もとは『三つの隹(とり)+木』の会意文字で,たくさんの鳥が木の上にあつまることをあらわす。現在の字体は隹を二つ省略した略字体」
とある(漢字源)。「詰」(漢音キツ,呉音キチ)の字は,
「会意兼形声。吉(キツ)は,口印(容器のくち)の上にかたいふたをしたさまを描いた象形文字で,かたく締めるの意を含む。結(ひもで口をかたくくびる)が吉の原義をあらわしている。詰は『言+音符吉』で,いいのがれする余地を与えないように締め付けながら,問いただすこと。また,中に物をいっぱいつめこんで入口をとじること」
とある(仝上)。日本語にある,
間を詰める,
というような間を狭める,意は元々ない。また「江戸詰」という「詰める」の用法も,「大詰め」というドンヅマリの意も,元々持っていない。
「積」(漢音セキ,呉音シャク)の字は,
「会意兼形声。朿(シ セキ)と,とげの出た枝を描いた象形文字で,刺(さす)の原字。責はそれに貝を加えて,財貨の貸借が重なって,つらさや刺激を与えること。積は『禾(作物)+音符責』で,末端がぎざきざとしげきするようにぞんざいに作物を重ねること」
とある(仝上)。
「つむ」(積む)は,他動詞としては,
置いてあるものの上に重ねて置く,
意だが,自動詞としては,
重なって次第に高く積もる,
意となる。「つむ」の語源は,他の辞書にはあまり載らないが,『日本語源大辞典』は,次のように挙げる。
上に先の伸びる意のツム(積)は,伸びるのを阻んで切る意のツム(摘)と同源(続上代特殊仮名音義=森重敏),
ツモルの約(名語記・類聚名物考),
アツムの略(和句解・日本釈名・類聚名物考),
ツム(集群)の義で,一箇ずつ重ねる意からツ(箇)の活用語化(日本語源=賀茂百樹),
一点一個の義のツから(国語溯原=大矢徹),
ツはテ(手)の轉。手で重ね上げる意から(国語の語根とその分類=大島正健),
ツメキ(築目)の義(名言通),
トム(富)の転か(和語私臆鈔),
ツ-ウム(産)の約(国語本義),
タム,マス(名語記),
正直,是非を判別する根拠はない。しかし,へ理屈,こじつけ,語呂合わせは,経験的に無理筋な気がしている。まっとうで,らしく思えるのは,
アツムの略,
ではあるまいか。
集むの略,
だからこそ,
積む,
集む,
詰む,
の意味の重なりと一致する。もちろん素人の臆説である。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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