摘む


「つむ」という和語は,

集む,
詰む,
摘む,
抓む,
積む,
切む,
齧む,

と当て分けているが,

摘む,

とあてる「つむ」は,

抓む,

とも当てる。

指先または詰め先で挟み取る,
つまみ切る,

意であるが,転じて,

ハサミなどで切り取る,刈り取る,

意でも使うし,

爪先や箸で取る,

意にも使う。更にそれに準えて,

摘要,

の意にも広げる。

「摘」(漢音テキ,タク,呉音チャク)の字は,

「会意兼形声。帝は,三本の線を締めてまとめたさま。締(しめる)の原字。啻は,それに口を加えた字。摘はもと『手+音符啻』で,何本もの指先をひとつにまとめ,ぐいと引き締めてちぎること。」

とあり,「指先をまとめてぐっとちぎる,つまむ」意である。

「抓」(漢音ソウ,呉音ショウ)の字は,

「会意兼形声。爪(ソウ)は,指先でつかむさま。抓は『手+音符爪』で,爪の動詞としての意味をあらわす」

で,「つまむ,つかむ」意である。

「つむ」(口語つまむ)は,

つま(爪)を活用させた語,

である(広辞苑第5版)。

「指の先で物を上へ引っ張り上げる意。転じて,植物などを指の先で地面から採取する意」

ともある(岩波古語辞典)。「つま(爪)」は,

「ツマ(端)・ツマ(妻・夫)と同じ。『つめ』の古形。複合語として残る」

とあり,「つま(爪)音」「「つまさき(爪先)」「つまづき(爪突き 躓き)」「つまぐる(爪繰る)等々に残る。

大勢は,

ツメ(爪)の活用語化(国語本義・国語溯原=大矢徹・大言海),
ツマ(爪)を活用させた語。指の先で物を上へ引っ張り上げる意(岩波古語辞典),
ツマメ(爪目)の義(名言通),
爪で毟る意か(和句解),

と,「ツメ」または「ツマ」に関係づける。異説は,

つむ(積む)と同源,

とし,

上に先の伸びる意の〈積ム〉のを,阻んで切る〈摘ム〉から(続上代特殊仮名音義=森重敏),

とする説がある。つまり,「積む」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/465341125.html?1556046435)で触れたように,

集む→詰む→積む,

の先に,

集む→詰む→積む→摘む,

と意味を拡げたという意である。面白いが,少し理屈に傾き過ぎではあるまいか。やはり,その語意から見ても,

ツマ(爪),

の動作から来ている,

爪ム,

でいいのではあるまいか。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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