2019年05月17日
いきる
「いきる」は,
生きる,
活きる,
と当てるが,古くは,
生く,
である。「生く」は,
「息」と同源,平安中期までは主に四段活用,
とある(広辞苑第5版,岩波古語辞典)。
生か(未然形-)生き(連用形)生く(終止形)生く(連体形)生け(已然形)生け(命令形)
しかし,鎌倉時代以降上二段活用,
生き(未然形)生き(連用形)生く(終止形)生くる(連体形)生くれ(已然形)生きよ(命令形)
が現れ結局,上一段活用,
生き(未然形)生き(連用形)生きる(終止形)生きる(連体形)生きれ(仮定形)生きろ・生きよ(命令形)
に転じた(岩波古語辞典),という。大言海は,
「(生くは)平安末期に出現したる語なりと思はる」
とする。
「いき(息)」について,岩波古語辞典は,
「生くと同根」
とあるが,大言海は,
「生く(四段活用)の名詞形。日本釈名(元禄)『息,生(いき)なり』,和訓栞『生の義,韓詩外傳,人得気則生,失気則死』」
とする。しかし,必ずしも,「いき(息)」が「いく(生く)ではない。日本語源広辞典は二説挙げ,
説1は,生+気,
節2は,出+気,
で,「生きものの吐き出す気体」と,「気」に力点がある。同趣のものは,
イズルキ(出気)の略(日本釈名),
イはイデ(出),キはヒキ(引)から(和句解),
イはイーと引く音,キは気の意(国語溯原=大矢徹),
イキ(息気)の意。イは口よりでる気息の音,キは気(日本語源=賀茂百樹),
イキ(生気)の義(言元梯・日本語原学=林甕臣),
イは気息を意味する原語。キは活用語尾(日本古語大辞典=松岡静雄),
等々ある(日本語源大辞典)が,
息は生,
の方がすっきりする。大言海のように,「いき(息)」を,
生くの名詞形,
とするか,逆に,「いく(生)」が,
イ(息)ク,
と,
「いく(生)」を活用させたもの,
とするかは,ともかく,
いき(息)といく(生)は同根,
とするのがスッキリする。「い(生)く」の語源をみても,
イキ(息)を活用したもの(国語溯原=大矢徹・日本語原学=林甕臣),
イキク(息来)の義(日本語原学=林甕臣),
と「息」絡みが多い。
いき(息)
と
いく(生)
は深くつながっている,とみていい。
「生」(漢音セイ,呉音ショウ)の字は,
「会意。『若芽の形+土』で,地上に若芽のはえたさまを示す。生き生きと新しい意を含む」
とある。「息」(漢音ショク,呉音ソク)の字
「会意。『自(はな)+心』で,心臓の動きにつれて,鼻からすうすうと息をすることを示す。狭い鼻孔をこすって,息が出入りすること,すやすやと平静にいきづくことから,安息・生息などの意となる。生息する意から子孫を生む→むすこのいともなる」
とある(漢字源)。
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