2019年06月18日

薙ぐ


「薙ぐ」は,

横ざまに払って切る,

意で,

薙ぎ払う,

といった使い方をする。古くから使い,

「王の佩かせる剣叢雲,自ら抽けて王の傍の草を薙ぎ攘(はら)ふ」(景行紀)

という用例がある。「薙」(漢音テイ,呉音タイ,漢音チ,呉音ジ)の字は,

「会意兼形声。『艸+音符雉(チ からだの短い鳥,寸法が短い,たけが低い)』。剃(テイ 短くそる)と同じ」

とある(漢字源)。これだと分かりにくいが,

「会意兼形声文字です(艸+雉)。 『並び生えた草』の象形と『いぐるみ(矢に糸をつけ鳥や魚を捕らえる狩猟道具)の象形と鳥の象形』(『傷つけ殺す』の意味)から『草を除去する』を意味する『薙』という漢字が成り立ちました。」

ともあり(https://okjiten.jp/kanji2713.html),草を横に払って切る意が伝わる。

和語「なぐ」の語源は,

ナミキ(並木)の義(名言通),
ナミキル(靡切)の義(言元梯),

などがあるが,大言海の,

投ぐに通づるか,

が面白い。「流れる」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/467200004.html?1560710972)で触れたように,「流れ」は,

「ナガシ(長),ナゲ(投)と同根。ナガは主に平面上を,線条的に伸びていくさま」

とあり(岩波古語辞典),「ナゲ(投)」をみると,

「ナガ(長)を活用させた語。ナガレ(流)と同根」

とある。つまり,「なぐ」は,

長の活用,

に繋がり,「流れる」が

平面上を,線条的に伸びていくさま,

を示しているのと同様,

線条的に流れる,

動作を示していて,

投ぐ,
薙ぐ,
流る,

は,すべて,

長いさま,

を示していることになる。

Kyujutsu10.jpg

(『平治物語絵巻』に描かれた薙刀を持つ鎌倉武士 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%96%99%E5%88%80より)


因みに,「薙ぎ払う」動作をする武器「薙刀」は,

「中世の有力武器の一つで、古くは長刀と書き、また刀身の形態から眉尖刀(びせんとう)、偃月刀(えんげつとう)などとよばれた。刃の幅を広くして先反(さきぞ)りをきかせ、刀身の茎(なかご)を長くして長い柄(え)に収めたもので、遠心力を利用して敵をなぎ払い、なぎ倒すのに用いられた。」

とされ(日本大百科全書),

「当初は『長刀』(“ながなた”とも読まれた)と表記されていたが、『刀』に打刀(腰に差す刀)という様式が生まれると、『打刀』を『短刀』と区別するために呼称する『長刀(ちょうとう)』と区別するため、『薙刀』と表記されるようになった。」

とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%96%99%E5%88%80)ので,大言海や日本語の語源のいうように,

「薙ぎの刀の約」
「薙ぎ刀」

ではないのではないか。むしろ,たとえば,

nagagatana(長刀)→nagatana→naginata,

といった転訛ではないか。

ついでながら,薙刀に似た,「長巻」という武器がある。

「薙刀は長い柄の先に『斬る』ことに主眼を置いた刀身を持つ『長柄武器』であるのに比べ、長巻は大太刀を振るい易くすることを目的に発展した『刀』であり、刀剣のカテゴリーに分類される武器である。」

とされる(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%95%B7%E5%B7%BB)。「長巻」は,

「太刀(腰に佩く)り中心(なかご)を長く作り,鍔を入れて,長い柄を加えて,表面を手縄や紐などで巻いたたもの」

で,三尺(約90cm)を超える長大な「大太刀」「野太刀」を,

「より振り回し易いように刀身の鍔元から中程の部分に太糸や革紐を巻き締めたものが作られるようになった。このように改装した野太刀は『中巻野太刀(なかまきのだち)』と呼ばれ、単に『中巻(なかまき)』とも呼ばれた。」

とあり,非力のものにも大太刀を振りやすくしたものである。

中巻→長巻,

という転訛したものらしい(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%95%B7%E5%B7%BB)。

Antique_shinto_samurai_nagamaki_1.jpg

(朱塗鞘、朱塗藤巻柄の長巻 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%95%B7%E5%B7%BBより)


参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
甲冑笠間良彦『図説日本甲冑武具事典』(柏書房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:薙刀 長巻 薙ぐ
posted by Toshi at 03:35| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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