「かまど」は,
竈,
竃,
と当てる。「竈(竈)」(ソウ)の字は,
「会意。『穴+土+黽(ソウ 細長い蛇)』。土できずいて,細長い煙穴を通すことを示す」
とあり,「焦(こげる)・燥(ソウ 火が盛んに燃える)などという同系」ともある。
かまど,
かまどの神,
の意である。「かまど」は,
「日本では古墳時代中期ごろの竪穴(たてあな)住居跡に竈の施設が見られ,以後,奈良・平安時代を通じ長く用いられてきた。西日本では竈形土器と呼ばれる半円形の焚口のある土師器(はじき)が発見されている。竈は清潔にしておくべきもので,火が汚れると竈神が不幸をもたらすと信じられ,別棟(むね)に竈をおく地方もある。」
とある(百科事典マイペディア)ほど古い。
以前,「釜の蓋」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/426837190.html)で,「かまど(竈)」は,
竈處
で,井を井戸というのと同じ使い方らしい,と述べた。「かまど」の「ど」は,
場所を意味する語,
である(広辞苑)。つまり,
カマ(竈)ド(処),
の意である(岩波古語辞典)。「かま」は,
竈,
釜,
とも当て,
かまど,
の意であるが,
湯をわかしたりする金属製の器,
の意でもある(仝上)。岩波古語辞典は,
朝鮮語kama(釜)と同源,
とする。大言海は,「かま(竈)」を,
「気間(ケマ)の轉にて,烟気の意か」
とし,「かま(釜)」を,
「竈(かま)に載するより移れる語か。或は,竃(かま)がなへなどと云ひし略か,朝鮮語にも,釜をカマと云ふ」
とする。「かま(釜)」は,古名,
まろがなへ,
といったらしい。つまり「竈」の上に載せる金属の器の意が,そのまま「かま(竈)」となった,ということらし(允恭紀「盟神探湯(くがたち)『埿納(ウヒヂヲ)釜煮沸』(まろがなへなり)」)。
「かま(釜)」の由来を考えると,「かまど(竈)」は,
竈處,
もあるが,日本語源広辞典のいう,
カマ(釜)+處,
もあり得る。日本語源広辞典は,「カマ(釜・竈)」の語源を,三説挙げる。
説1は,「火+間」。火をたくところの意,
説2は,「カ(烟・気)+間」。煙を出すところの意,
説3は,「カ(炊しぐ)+間」。炊ぐところの意,
とである。また,
カナヘト(鼎所)の義,カナヘドコロ,
カマドノ(竈殿)の誤伝,
等々もある。しかし,「かま(釜)」「かま(竈)」同源からみれば,
竈處,
が妥当のようである。それよりは,「かまど(竈)」には,
くど,
へっつい,
へ,
という異名がある。「くど(竈)」は,
竈のうしろの煙出しの穴,
の意らしい。それが転じて,
かまど,
の意となることはあり得る。「へっつい(竈)」は,
ヘツヒ(ヘツイ)の轉,
とある(岩波古語辞典,大言海)。「へつひ」は,
竈(へ)つ霊(ヒ)の意,
であり,
竈の神,
の意である(岩波古語辞典)。「へつひ」は,
「本名ヘナリ,竈(へ)之靈(ヒ)の転,海之靈(わたつみ)の海(うみ)となりしが合法と意」
とある(大言海)。
「『つ』は「の」の意の古い格助詞、『ひ(い)』は霊威の意」
ともある(精選版 日本国語大辞典)。
ヘツヒ→ヘッツイ,
で,竈の神が,
神霊の火を扱うかまど→かまど,
略して竈となったということになる(日本語源広辞典)。
(江戸後期の商家の銅壷付へっつい(深川江戸資料館)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8B%E3%81%BE%E3%81%A9より)
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
この記事へのコメント