2019年07月04日

着る


「着る」は,

著る,

とも当てる。「着」(漢音ジャク,呉音ジャク)の字は,

著が本字,

とあり,

「会意兼形声。者は柴を燃やして,火熱をひと所に集中するさまくっつくこと。著は,『艸+印符者(つまる,集まる)』で,ひと所にくっつくの意を含む。着は俗字。箸(チョ 物をくっつけて持つはし)の原字。チャクの音の場合,俗字の着で代用する」

とある(漢字源)。別に,

「会意兼形声文字です(艸+者(者))。『並び生えた草』の象形と『台上にしばを集め積んで火をたく』象形(『多くのものを集める』の意味)から、草の繊維でつくられた衣服を集め、身に付ける、『きる』の意味と、多くのものを集め、はっきりした形に『あらわす』、『あきらかにする』を意味する『著』という漢字が成り立ちました。」

とある(https://okjiten.jp/kanji1004.html)ほうが分かりやすい。

「きる」は,

身に着ける,着用する,

意だが,

「『きる』は本来、衣服などを身につける意で、着物以外に袴 (はかま) ・笠・烏帽子・兜 (かぶと) ・布団・刀などについても用いられた。現代では主としてからだ全体や上半身に着用するものをいい、袴やズボンなどは『はく』、帽子や笠などは『かぶる』、刀などは『おびる』というように、どの部分につけるかによって異なる語が用いられる。」

と区別(デジタル大辞泉)し,

「現代では,袴・ズボン・靴下などは『はく』,帽子は『かぶる』,手袋は『はめる』」

と使い分ける(広辞苑)。しかし,

「下衆の紅の袴きたる」(枕草子),
「笠をきてみなみな蓮にくれにけり」(古梵),

という用例もあり,

(袴などを)はく,
(笠や烏帽子などを)かぶる,

意でもつかっていて,使い分けが厳密だったかどうか。

「もと,広く,頭から下半身まで,帽子や笠や衣服・袴類をつけることをいった。室町時代から江戸時代には,『かぶる』『かづく』『はく』が次第に『きる』の領域を侵すようになり,明治時代には,帽子や笠は専ら『かぶる』,袴は『はく』を用いることが多くなるなど,『きる』は次第にその使用領域を狭めて来た」

とあり(日本語源大辞典),「きる」と「はく」「かぶる」の使い分けは,新しいものだ。

和語「きる」の語源は,はっきりしない。しかし,

「キル(着る・本来の二音節語)」

とある(日本語源広辞典)のは,どうであろう。「きる」は,文語では上一段活用で,

き(着) き(未然形) き(連用形) きる(終止形) きる(連体形) きれ(仮定形) きろ・きよ(命令形),

と変化する。語幹は「き」である。

きもの(着物),
きぬ(衣),
きぬいた(衣板・砧),

等々「きるものの」頭に付く。

「き」の語源については,

キはツキ(付)の義(言元梯),
キはキヌ(衣)の下略。ルは用いる意か(和句解),
コロモ(衣)のコの轉キの動詞化(国語の語根とその分類=大島正健),
カクル(被)の義(名言通),

と諸説あるが,「きぬ」は,

「絹の意。それゆえ,衣服の意の場合も,布地として柔らかい感触,すれあう音などを,感覚的に賞美する気持ちで使われる傾向がある。類義語コロモは,モ(裳)が原義で,身にをつつみまとうことに重点があり,衣服としての意味に重きをおいて使われる」

とある(岩波古語辞典)。大言海は,「きぬ」は,

「着布(きぬの)の略」

とし,「き」を前提にしている。「ころも」は,

きるもの(服物・着物)の義(日本釈名・名言通・和訓栞・柴門和語類集),
キルモ(着裳)の転呼(日本古語大辞典=松岡静雄),
クルムモ(包裳)の意(国語の語根とその分類=大島正健),

と,その語源は,「き」を前提にしてしか成り立たない。敢えて言えば,この中で,「くるむ」に着目するなら,

ku→ki,

という音韻変化が可能なら,「くるむ」が,

kurumu→kuru→kiru

と転訛することはあるだろうか。臆説である。

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:着る
posted by Toshi at 03:40| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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