「着る」は,
著る,
とも当てる。「着」(漢音ジャク,呉音ジャク)の字は,
著が本字,
とあり,
「会意兼形声。者は柴を燃やして,火熱をひと所に集中するさまくっつくこと。著は,『艸+印符者(つまる,集まる)』で,ひと所にくっつくの意を含む。着は俗字。箸(チョ 物をくっつけて持つはし)の原字。チャクの音の場合,俗字の着で代用する」
とある(漢字源)。別に,
「会意兼形声文字です(艸+者(者))。『並び生えた草』の象形と『台上にしばを集め積んで火をたく』象形(『多くのものを集める』の意味)から、草の繊維でつくられた衣服を集め、身に付ける、『きる』の意味と、多くのものを集め、はっきりした形に『あらわす』、『あきらかにする』を意味する『著』という漢字が成り立ちました。」
とある(https://okjiten.jp/kanji1004.html)ほうが分かりやすい。
「きる」は,
身に着ける,着用する,
意だが,
「『きる』は本来、衣服などを身につける意で、着物以外に袴 (はかま) ・笠・烏帽子・兜 (かぶと) ・布団・刀などについても用いられた。現代では主としてからだ全体や上半身に着用するものをいい、袴やズボンなどは『はく』、帽子や笠などは『かぶる』、刀などは『おびる』というように、どの部分につけるかによって異なる語が用いられる。」
と区別(デジタル大辞泉)し,
「現代では,袴・ズボン・靴下などは『はく』,帽子は『かぶる』,手袋は『はめる』」
と使い分ける(広辞苑)。しかし,
「下衆の紅の袴きたる」(枕草子),
「笠をきてみなみな蓮にくれにけり」(古梵),
という用例もあり,
(袴などを)はく,
(笠や烏帽子などを)かぶる,
意でもつかっていて,使い分けが厳密だったかどうか。
「もと,広く,頭から下半身まで,帽子や笠や衣服・袴類をつけることをいった。室町時代から江戸時代には,『かぶる』『かづく』『はく』が次第に『きる』の領域を侵すようになり,明治時代には,帽子や笠は専ら『かぶる』,袴は『はく』を用いることが多くなるなど,『きる』は次第にその使用領域を狭めて来た」
とあり(日本語源大辞典),「きる」と「はく」「かぶる」の使い分けは,新しいものだ。
和語「きる」の語源は,はっきりしない。しかし,
「キル(着る・本来の二音節語)」
とある(日本語源広辞典)のは,どうであろう。「きる」は,文語では上一段活用で,
き(着) き(未然形) き(連用形) きる(終止形) きる(連体形) きれ(仮定形) きろ・きよ(命令形),
と変化する。語幹は「き」である。
きもの(着物),
きぬ(衣),
きぬいた(衣板・砧),
等々「きるものの」頭に付く。
「き」の語源については,
キはツキ(付)の義(言元梯),
キはキヌ(衣)の下略。ルは用いる意か(和句解),
コロモ(衣)のコの轉キの動詞化(国語の語根とその分類=大島正健),
カクル(被)の義(名言通),
と諸説あるが,「きぬ」は,
「絹の意。それゆえ,衣服の意の場合も,布地として柔らかい感触,すれあう音などを,感覚的に賞美する気持ちで使われる傾向がある。類義語コロモは,モ(裳)が原義で,身にをつつみまとうことに重点があり,衣服としての意味に重きをおいて使われる」
とある(岩波古語辞典)。大言海は,「きぬ」は,
「着布(きぬの)の略」
とし,「き」を前提にしている。「ころも」は,
きるもの(服物・着物)の義(日本釈名・名言通・和訓栞・柴門和語類集),
キルモ(着裳)の転呼(日本古語大辞典=松岡静雄),
クルムモ(包裳)の意(国語の語根とその分類=大島正健),
と,その語源は,「き」を前提にしてしか成り立たない。敢えて言えば,この中で,「くるむ」に着目するなら,
ku→ki,
という音韻変化が可能なら,「くるむ」が,
kurumu→kuru→kiru
と転訛することはあるだろうか。臆説である。
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