2019年07月25日
と
「と」は,
戸,
門,
所,
処,
等々と当てる。「戸」は,
門,
同義で使われている。「まど」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/468202499.html?1563821625)で触れたように,
門,
戸,
と当てる「と」は,
「ノミト(喉)・セト(瀬戸)・ミナト(港)のトに同じ。両側から迫っている狭い通路。また入口を狭くし,ふさいで内と外を隔てるもの」
とある(岩波古語辞典)。
「所」「処」は,
場所,
ところ,
の意で,
隠処(こもりど→こもりづ),
のように複合語に使われるが,
寝屋処(ねやど),
ではなく,
寝屋戸(ねやど),
と使われたりするので,「戸」と「処」は交換可能のようである。大言海の「と(戸)」の項で,
處の義と云ふ,
とある。さらに「と(戸)」は,
「止むる,又閉づる義。釈名『戸,所以謹護閉塞也』,左傳…注『戸,止也』」
とあり,「と(戸)」は,「止める」の「と」の可能性がある。日本語源広辞典は,
「トは『両側から迫って狭いゐる口』が語源です。戸,門,港のトは同源」
とする。「みなと」は
水門,
湊,
港,
と当てるが,岩波古語辞典は,
「ミは水。ナは連体助詞。トはセト(瀬戸)・カハト(川門)のトと同じ,両側から迫った入口」
とある。「と」は,
閉づ,
の「ト」もある。大言海は,「みなと(水門・水戸)」を,
水之門の義,
としている。「みなと」と関わる言葉に,
つ,
がある。岩波古語辞典は,
「ト(戸)の母音交替形」
とする。これは,
船着き場,港,
の意である。和名抄には,
「津,豆(つ),渡水処也」
とある。船側からみているので,
船の泊(は)つる處,
の意となる。大言海は,
「附く,集(つど)ふ,などの意」
とする。日本語源広辞典も,
舟がツドウ(集)のツ,
舟がツク(着)のツ,
を挙げる。
アツマル(集)の義(日本釈名・東雅・万葉集辞典=折口信夫),
人や船の集まり着く意(日本語源=賀茂百樹),
物のあつまりたまる場所をいうところからタムまたはタマルの約(和訓集説),
なども同趣旨だと思われる。しかし,「つ」が,
to→tu,
と母音交替したのだとしたら,「つ」で語源をさぐることは意味がない。結局,「と」の,
門,
戸,
所,
の,
閉づ,
か
止む,
の「と」ということになる。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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