2019年07月28日

みね


「みね」は,

タニは峰(ヲ)の対,

とある(岩波古語辞典)。「を」は,

峰,
岡,

と当て,

みねつづき,尾根,
山の小高い所,

の意である。大言海は,「を」を,

峯,
丘,

と当て,

山の高き處,みね,

とし,「尾」とあてる「を」の,

山の裾の引き延へたる處,
山尾,

とつなげる。古事記に,

「山の尾より,山の上へ登るひとありき」

とあるところを見ると,

山尾,

の意で,

山峰,

とも当てる。

山の峰続き,
山の稜線,

の意となる。山の峰の意とほぼ重なるが,

峰々の連なり,

に焦点を当てており,

尾根,

と重なるし,

稜線,
脊梁 (せきりょう) ,

とも重なる。「尾根」は,

「谷と谷に挟まれた山地の一番高い部分の連なりのことである。山稜(さんりょう)、稜線(りょうせん)とも言う」

とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%BE%E6%A0%B9)が,山登りの人から見ると,

「尾根」は登るものだが「稜線」は歩くもの,

という感覚らしい(https://www.yamareco.com/modules/diary/21844-detail-92607)。視点の違いだろう。

800px-Mt.Yarigatake_from_Enzansou.jpg

(「尾根」と「峰」(飛騨山脈の燕岳付近) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%BE%E6%A0%B9より)


となると,「を(峰)」は,

尾,

と重なり,

尾根,
稜線,
脊梁 (せきりょう) ,

であり,「みね(峰)」は,

山の頂の尖ったところ,

の意であり,「を(峰)」とは由来を異にする言葉らしい。谷に対なのは,

峰々の連なり,

であって,

みね(峰),

ではない,ということになる。大言海は,

「ミは發語。ネは嶺なり」

とするが,岩波古語辞典は,

「ミは神のものにつける接頭語。ネは大地にくいいるもの,山の意。原義は神聖な山」

とし,日本語源広辞典も,

ミ(御)+ネ(嶺),

とする。

ミは褒称。ネは高峻の義(箋注和名抄・東歌疏=折口信夫),
ミは尊称,ネは止まり動かない意(東雅),

も同趣旨である。かつてヤマはご神体であった。とりわけ尖った頂は神聖視された。「ミ」はその名残りかも知れない。

ミネ(御根)の義。山上に神のあるところから(名言通),
ミは神の略,ネはナル(成)の転(和語私臆鈔),
ミはマシの約で美称,ネ(根)は山の義(和訓集説),

はその趣旨である。やはり,

ご神体,

の意味であると見ていい。

「ね(嶺)」は,

「ネ(根)と同根。大地にしっかり食い込んで位置を占めているものの意。奈良時代には東国方言になっていたらしく,独立した例は東歌だけに見える。大和地方ではミネという。類義語ヲは稜線の意」

とある(岩波古語辞典)。ちなみに「ね(根)」は,

「ナ(大地)の転。大地にしっかりと食いこんでいるものの意」

とある(仝上)。大言海は,

「の上(うへ)の約ならむ。常に根と書す」

とあるので,

ナ(大地)→ネ(根)→ネ(嶺),

といった転訛なのであろうか。

因みに,「みね」には,

峰(峯),
嶺,
岑,

等々当てる。「峰(峯)」(漢音ホウ,呉音フ,ブ)は,

△にとがった山,

の意で,

「会意兼形声。夆は,△型に先の尖った穂の形を描いた象形文字に夂(足)印を加えて,左右両側から来て△型に中央でであうことを示す。逢(ホウ 出あう)の原字。峰はそれを音符とし,山を加えた字で,左右の辺が△型に頂上で出会う姿をした山。封(ホウ △型の盛り土)ときわめて縁が近い」

とある(漢字源)。刀の背を峰というのは我が国だけの使い方である。

「嶺」(漢音レイ,呉音リョウ)は,

「会意兼形声。領(レイ)は,人体の上亡,頭と胴をつなぐ首のこと。嶺は『山+音符領』で,人体の首に当たる高い峠」

とあり,

髙い峰のつづき,

を言い,稜線の意に近い。「岑」(漢音シン,呉音ジン)は,

山のじくざぐ切り立った高い所,

だが,

山の小にして髙きもの,

ともある(字源)。

「会意。今はふさがって暗いことを示す。岑は『山+今(ふさがる)』」

とある(漢字源)。

なお,「やま」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/418594092.html?1562715970)については,触れた。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:みね
posted by Toshi at 03:45| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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