2019年07月29日

鰯の頭


「鰯の頭」は,

いわしのかしら,

と訓ませるが,「あたま」とも訓む。

鰯の頭も信心から,

の「鰯の頭」で,

鰯の頭のようなつまらないものでも,信仰するとひどくありがたく思える,

意である(広辞苑)が,

鰯の頭のようにつまらないものでも,それを信仰するヒトには尊く,神仏同様の霊験を持つに至る,

という説明の方(故事ことわざ辞典)が,正確かもしれない。さらに,

「頑固に信じ込んでいる人をからかう場合にもいう」

ともあり,

「節分の夜に,鰯の頭を柊(ひいらぎ)の枝にさして門口に置くと,悪鬼を追い払うという風習があったりしたことなどから言われた」

ともある。

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(門口に挿した柊鰯 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%8A%E9%B0%AFより)


「信心から」は,

信心がら,

ともいい,

信じ方次第,

の意の「信じがら」の転じたものとある(仝上)。「信心から」は,「信心がら」以外に,

信じから,
信仰から,

ともいう(江戸語大辞典)ので,この説は妥当かどうかは分からない。

白紙も信心から,

ともいう,とある(仝上)。鰯の頭を柊の枝にさす風習は,

柊鰯(ひいらぎいわし),

という。

「節分に魔除けとして使われる、柊の小枝と焼いた鰯の頭、あるいはそれを門口に挿したもの。西日本では、やいかがし(焼嗅)、やっかがし、やいくさし、やきさし、ともいう」

とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%8A%E9%B0%AF)。

「柊の葉の棘が鬼の目を刺すので門口から鬼が入れず、また塩鰯を焼く臭気と煙で鬼が近寄らないと言う(逆に、鰯の臭いで鬼を誘い、柊の葉の棘が鬼の目をさすとも説明される)」

という(仝上)。ヒイラギを厄除(やくよ)けに使う風習は平安時代からあり、土佐日記は,元日に,

「今日は都のみぞ思ひやらるる、小家の門のしりくめなわ、なよしの頭、ひひらぎいかにぞと言ひあへなる」

と書く。「なよし」は,

名吉し,

らしい。ぼらは,

「成長にしたがって呼び名が変わるので,『名吉し』と言って出世魚とされた」

とある(岩波古語辞典)。つまり,正月の門口に,飾った注連縄と柊の枝に「なよし」(ボラ)の頭を刺していた。現在でも,

「伊勢神宮で正月に売っている注連縄には、柊の小枝が挿してある」

のだとか(仝上)。江戸時代の古今要覧稿には,

「中むかしよりは鯔をいはしにかへ用ゐたりしは藤の為家郷の歌に、ひひらぎにいはしをよみ合せ給へるものによれば、是も六百年前よりの事なり」

と載るとか(https://fm0817.com/hiiragiiwasi-kigen),鰯に変わったのは結構古い。

節分は,

「季節の移り変るときをさし,立春,立夏,立秋,立冬のそれぞれ前日であった。しかし太陰太陽暦では立春を年の初めと定めたので,立春の前日すなわち大寒の最後の日を特に節分 (太陽暦の2月3日か4日) として重視した。したがって節分は太陰暦の大晦日 (おおみそか) にあたり,その夜を年越しといって民間ではひいらぎ (柊) の枝にいわしの頭をつけて門戸にかざし,また日暮れに豆まきをして追儺 (ついな。厄払い) を行う習慣がある」

のは,季節の変わり目には邪気が生じるという考えから,鬼払いなどの儀式が行われたのである(ブリタニカ国際大百科事典)。ヒイラギを節分に飾るのは,

「鬼の目を突き退散させるためとされるが、鋸歯(きょし)のないトベラの葉も同様に使われ、平安時代に正月の習俗であったこととあわせると、中国の爆竹と同じく、葉を火にくべてはぜる音で鬼払いしたのが原型と考えられる」

だとある(日本大百科全書)。ヒイラギそのものが,

「葉に鋭い刺があり、触れるとずきずきするから疼(ひいら)ぐ木の意味であり、柊は日本でつくった和字で、初冬に花を開く木の意味」

とか(日本大百科全書)。

「江戸時代にもこの風習は普及していたらしく、浮世絵や、黄表紙などに現れている。西日本一円では節分にいわしを食べる『節分いわし』の習慣が広く残る。奈良県奈良市内では、多くの家々が柊鰯の風習を今でも受け継いでいて、ごく普通に柊鰯が見られる。福島県から関東一円にかけても、今でもこの風習が見られる。東京近郊では、柊と鰯の頭にさらに豆柄(まめがら。種子を取り去った大豆の枝。)が加わる。」

とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%8A%E9%B0%AF)。

なお「いわし」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/460405863.html)で触れたように,古くから馴染みの魚であったらしく,「鰯」にからんだことわざは多い。

鰯網で鯨を捕る,
鰯食ったる鍋の鉉(つる),
鰯俵も俵の中,
鰯で精進落ち,
鰯煮た鍋,
鰯の頭をせんより鯛の尾に付け,
鰯のたとえに鯨,

等々。

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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