2019年07月30日

ぼら


「ぼら」は,

鯔,
鰡,

と当てる。

鮱,

と当てると,成長とともに名前を変える出世魚「ぼら」の,

おほぼら,

つまり,

とど,

になる(字源)。「鮱」は国字である。「鯔」(シ)は,出世魚「ぼら」の「ぼら」の前の段階,

いな,

を意味するともある(字源)。「ぼら」は,古名,

クチメ(口魚),

別名,

ナヨシ(名吉),

という。出世魚「ぼら」は,

海から川へ入りだした3~4センチの稚魚を,ハク,

川や池で生活する10センチ前後のものを,オボコ,スバシリ,

生後1年を経過した25センチ余りの未成魚を,イナ,

2~4年魚の30~50センチの成魚を,ボラ,

5年以上の老成魚(雌は90センチ,雄の多くは45センチ以下)を,トド,

という名を変える(日本大百科全書)。呼び名は地域によって異なり,関東では,

オボコ→イナッコ→スバシリ→イナ→ボラ→トド,

関西では,

ハク→オボコ→スバシリ→イナ→ボラ→トド,

高知では,

イキナゴ→コボラ→イナ→ボラ→オオボラ,

東北では,

コツブラ→ツボ→ミョウゲチ→ボラ,

とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%A9)。譚海には,

「川にあるときオボコ,川口にでるときはスバシリ,海に入りてはイナ,成長してナヨシ,秋末にボラ」

と相州三浦の人が語ったとある(たべもの語源辞典)。

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「オボコ」は,

「子供などの幼い様子や、可愛いことを表す『おぼこい』の語源となっており、『未通女』と書いてオボコと読んで処女を意味していた。」

また,「オボコ」は,

「鯯と書き,小矛の義であるとの説」

もある(たべもの語源辞典)。

「スバシリ」(洲走)は,江戸では,

「六月十五日の山王祭の日から漁獲が解禁になったので,『すばしりは御輿の後を追て行き』という川柳がある」

とか(仝上)。

「イナ」は,

「若い衆の月代の青々とした剃り跡をイナの青灰色でざらついた背中に見たてたことから、『いなせ』の語源とも言われる。『若い衆が粋さを見せるために跳ね上げた髷の形をイナの背びれの形にたとえた』との説もある。」

「いなせ」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/414618915.html)で触れたように,

鯔背,

と当て,江戸日本橋の魚市場の若者が,「鯔(イナ ボラの幼魚)の背のような髷を結ったからという。威勢のいいこと,粋で,勇み肌なこと,またそういう気風を指す。その髷を,「鯔背銀杏」といった。

「トド」は,

「遠う遠う」の意味,

とする説(日本大百科全書)があるが,

「『これ以上大きくならない』ことから『結局』『行きつくところ』などを意味する『とどのつまり』の語源となった。」

とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%A9)。

大言海は,「ぼら」を,

腹の大きい意,

とする。「腹」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/455047479.html?1511295116)で触れたように,

「廣(ひろ)に通ず,原(はら),平(ひら)など,意同じと云ふ。又張りの意」

でもある(大言海)。

ホハラ(太腹),ホホハラ(含腹)カラバラになった語か(たべもの語源辞典),

も同趣である。たべもの語源辞典も,

「ボラという名は,江戸で腹太(はらぶと)と呼ぶことと同じで,太腹(ほはら)とか含腹(ほほはら)になった」

という説を採る。その他に,

「中国の春秋時代の北狹(ほくてき)の用語で、『角笛』を意味する『ハラ』という語の転訛であり、法螺貝(ほらがい)の呼称「ホラボラ」と同源同義語らしい。ボラの呼称は、魚形が『角笛』に似ていることから、中国の胡語『ハラ』が転じて『ボラ』になった」

とするものもある(http://www.maruha-shinko.co.jp/uodas/syun/45-bora.html)。ボラの古名には,

口女(くちめ),

があり、『日本書記』にも「クチメ」と出ている。口女とは、口に特徴のある魚「口魚」の意なので,形からくる由来はあり得る。しかし,単独にこの魚の名だけ,外国由来というのはいかがであろうか。

なお,メスの卵巣を塩漬にしたものを,

カラスミ,

という。江戸時代,

長崎野母(のも)産のカラスミ,
越前のウニ,
三河のコノワタ,

が三珍としてもてはやされたそうであるが,野母には,

「天正一六年(1588)豊臣秀吉が肥前の名護屋に来た時,長崎代官鍋島飛騨守信正が野母のカラスミを長崎の名産品として献上した。秀吉がその名を尋ねたので,形が唐の墨に似ているところから『唐墨』と名づけた」

とする伝承があるとか(たべもの語源辞典)。ただ,

「学者によってはカラスミをとるボラをカラスミボラと称して別種のものであるともいう。サワラの子でもカラスミをつくる」

とか(たべもの語源辞典)。また,「ぼら」は,

「海底の餌を泥ごと食べるので胃壁が厚くなっていて硬い玉のように見える。この胃を臼といい,そろばん玉ともいい,へそとも呼び,付焼にして食べる」(仝上)

が,

「ニワトリの砂嚢(砂肝、スナズリ)を柔らかくしたような歯ごたえで珍重される」

という(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%A9)。

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(カラスミ https://kotobank.jp/word/%E3%83%9C%E3%83%A9%28%E9%AD%9A%29-1593753日本大百科全書(ニッポニカ)より)


参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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