2019年07月31日

しゅうと


「しゅうと」は,

舅,
姑,

と当てる。「舅」は,

夫または妻の父,外舅(かいきゅう),

「姑」は,

夫または妻の母,外姑(がいこ),しゅうとめ,

の意である。文語では,

しうと,

で,

シヒトの音便,

とある(広辞苑)。「舅」(漢音キュウ,呉音グ)は,

「形声。『男+音符臼』で,年長の男性の意」

で,

母親の兄弟,母方のおじ(「舅父(キュウフ)」),
母の兄弟の妻(「舅母(キュウボ)」)
妻から見て,夫の父親,
夫から見て,妻の父のこと(「外舅(ガイキュウ)」),

と意味の幅が,日本とは異なる。「姑」(漢音コ,呉音ク)は,

「会意兼形声。『女+音符古』。年老いて古びた女性の意から,しゅうとめやおばの称となった」

とあり,

夫の母(「小姑(ショウコ 夫の妹)」,「外姑(ガイコ 妻の母)」),
おば(姨(イ 母の姉妹の当たるおば)に対して,父の姉妹(「姑母(コボ)」)),
父の姉妹の夫,夫の姉妹の夫(「姑夫(コフ)」),

と,やはり意味の幅が広い(漢字源,字源)。

「しゅうと」は,

シヒト→シウト→シュウト,

の音便だとして,

しひと,

は何か。岩波古語辞典には載らないが,大言海は,

「大人(ウシヒト)の約と云ふ,朝鮮語,舅,しゅい」

とする。日本語源広辞典も,

「ウシ(大人)+ヒト(人)」

とし,

ウシヒト→シフート→シヒト→シウト→シュウト,

と変化したと見なす。「うし」とは,

大人,

と当て,

領有・支配する人の称,転じて人の尊称,

さらに転じて,

師匠または学者の尊称,

の意である。日本語源広辞典は,

ヌシの変化,
ウ(大)+シ(人),

の二説を挙げ,

「近世の国学者が上代の古語を復活させた語」

とし,本居宣長らが,

師匠,

の意で再現したものと思われる。日本語源大辞典は,

「『ぬし』とそらく同源であるが,『うし』の上代単独例は少なく,動詞『うしはく(領)』の形で現れることが多い。中古から中世にかけて用例がなく,近世に復活して主に文学方面に用いられる。国学者たちが復古趣味に依って古典から再生させた語のひとつである」

とする。「ぬし」は,

「之大人(のうし)の約と云ふ。後誤りて,ノシと云ふ」(大言海),
「~の主人のつづまった『~ぬし』が独立して名詞となったものか」(岩波古語辞典),
「うし(大人)の転」(和字正濫鈔・言葉の根しらべの=鈴木潔子・国語の語根とその分類=大島正健),

等々とある。「うし」は,「ぬし」と同源というより,「うし」があるから,「ぬし」がまれたというべきである。ならば,

ウ(大)+シ(人),

説が着目される。大言海は,「う」の項で,

大,

を当て,

「おほの約まれる語。おほけ,うけ(食)。おほみ,うみ(海)。おほし,うし(大人)。おほば,うば(乳母)。おほま,うま(馬)。おほしし,うし(牛)。おほかり,うかり。沖縄にておほみづ,ううみづ(洪水)。おほかみ,ううかめ(狼)」

とする。「うし」の単独用例が無いとの日本語源大辞典の説明とも合致する。この「うし」の変化と考えると,

支配者,

という意味が生きてくる。字鏡に,「しうと」の古名「しひと」について,

「婚,呼昆反,婦人之父,志比止」

とある。これを,

「『しひと』とは、恐らく『し(る)ひと』、つまり、『知る(領る、とも。治める、という意味)人』、一家の長という意味だったのではないでしょうか」

と解釈(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1019780760)するものがあるが,

ウシヒト→シフート→シヒト→シウト→シュウト,

との転訛とみなせば,

ぬし,

との関係から見ても,家族の中の長の意はある。「ぬし」は,

之主人(うし),

の約なのだから。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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