2019年08月03日

みずくさい


「みずくさい」は,

水臭い,

と当てる。文字通り,

水っぽい,
水分が多くて,味が薄い,

という状態表現だが,これをメタファに,人と人の関係の,

よそよそしい,
他人行儀,

の意で使う。大言海は,

濃き情の淡淡しくなる意か,

とし,

厨人の語。壺の内の鹽氣淡し(越前大野郡にても云ふ),

として,

又,水多くして,味あわし,

とする。もともと料理人の言葉であったのか? とすると,

「食べ物や飲み物の水分が多く、『味気ない』『まずい』ことを『水臭い』と言うことから、比喩的に人に対しても用いられ、愛情の薄いこと、親しい間柄なのによそよそしいことを『水臭い』というようになった」

とする(語源由来辞典)のは違うのではないか。「味のない」ことは,

味が薄い,

とは言うが,

水臭い,

とは言わない気がする。それなら,酒杯をやりとりのやりとりで,

「盃洗(水の入ったどんぶりのようなもの)で杯を洗ってから相手に差し出したのです。それが礼儀なのですが、盃洗で洗った杯で酒を飲むと、酒に微妙に水の味が残り、『水臭い酒』になります。このことから他人行儀なことを『水くさい』というようになった」

という説(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q118920906)の方が,

「この酒,水っぽい」

という意で,

水臭い,

ということはあり得なくもないが,あまり使わない。

「水臭いの『臭い』は、『〜の臭いがしてやな感じ』という意味の形容詞であり、『カビ臭い』『生臭い』『バタ臭い』などと用いる。したがって、『水臭い』とは直訳すれば『水の臭いがしてやな感じ』となるが、水は臭いがしないので、『何の臭いもしないほどやな感じ』、つまり『親しい間柄なのによそよそしくてやな感じ』とか『水のように味のしない酒』といった例えに用いられる」

というの(笑える国語辞典)が「水臭い」の解釈では,わかりやすい。

「みずくさい」が,

よそよそしい,

の意とすると,その反対は,

親しい,
仲がいい,
あるいは,
睦まじい,

である。室町時代までは,濁らず,

むつまし,

立ったようであるが,「むつまじい」は,

水入らず,

とも言う。大言海は,

親しきものの中に,疎きものの混じるを,油に水の入りたる如しという譬えより出づ,

とある。そういう譬えがあるかどうかは分からないが,語源由来辞典も,

「質が違っていてしっくり解け合わないさまを『油に水』というのに対し、親しい者だけが集まった状態を、油に水が入っていないところからいうようになったもの。 つまり、『水入らず』で水が混じっていないといっているものは油で、『油』が『内輪の者』『親しい者』を、『水』が『他人』を表している」

としている。江戸語大辞典も,「水入らず」の意を,

近親者ばかりが集まっていること,
他人を交えないこと,

とし,

転じて,

きわめて親しき者の間柄にもいう,

とあるので,油と水の喩えは,当たっているようである。俚言集覧にも,

「親しい者の中に疎い者のはいるのを,油に水の混じった状態にたとえるのに対し,水の入らない親しい者ばかりの意」

とある。

水を差す,

というのは,

上手くいっているのに,邪魔して不調にする,

意であり,相撲の,

水入り,

とは,

双方を分ける,

意である。冷たい「水」には,

冷ます,

効果が,確かにある。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
芳賀矢一校閲『日本類語大辞典』(講談社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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