2019年08月10日

ぬかす


「ぬかす」は,

抜かす,
吐かす,

と当てる。

「言う」「しゃべる」の意を卑しめていう語,

として,

言いやがる,

という意味である。室町末期の日葡辞書にも,

ナニヲヌカスカ,

と載る。しかし「抜かす」には,

追い抜かす,

というように,

仲間から抜かす,
居ない人は抜かして回覧,
順番を抜かす,

という,

外す,
間を飛ばす,

という意で使う言い方もある。あるいは,

現金を抜かす,

という使い方の,

抜き取る,

意や,

腰を抜かす,

という使い方の,

力をなくす,

という意もある。更には,

ある場所から逃げ出させる,

意の,

「権三様をもあの婆が、見ぬやうにそっと抜かして往 (い) なせませ」〈浄・鑓の権三〉

という用例もある。日本語源広辞典は,

「語源は『ヌクの未然形+ス(語尾)』です。順番をヌカス,腰をヌカス,のように使います。罵る言葉のヌカスも同源です。不満や怒りなどを言葉にして抜くとみる動詞で,吐カスの字を当てます」

とするが,「ぬかす」は,

不満や怒りなどを言葉にして抜く,

という含意ではない。どちらかというと,すでに触れた,

ほざく(http://ppnetwork.seesaa.net/article/468674126.html?1565289594),

という同じく,相手の言動を揶揄しているにすぎない。

大言海の「ぬかす」の項は,

抜きて除くる。漏らす,

で,

脱,

を当てる。さらに,

漏らす意より転じて,物言ふ,口に出す,

の意とし,

罵る鄙語,

とする。用例を見ると,

「その上,男をうつけたとぬかす,おのれの堪忍がならぬ」(狂言記・河原新市)

とある。

ヌカス,ヌカサスは口より漏洩の義(俚言集覧),

も同趣旨である。

抜き取る→漏洩する→漏らす→しゃべる,

と,「ぬかす」の意味が転訛していった,と見るのが妥当に思える。

抜けさせるい,その転用(上方語源辞典=前田勇),

もその流れで見ると分かりやすい。笑える国語辞典の,

「抜かすとは、大阪あたりで『なに、ぬかしとんねん』(「あなたは何を言っているのですか?(私には理解しかねます)」の意)などと使われるように、『言う』の俗語的表現である。『抜けさせる』の意味で、口から言葉を抜けて出させる、つまり、あまりよく考えもせずに言葉を口から出してしまうというニュアンスがあり、主に、そんな『抜かした』発言を受けた相手が、発言者を非難するために用いる」

とあるのも,「抜けさせる」を「しやべらせる」と考えると,何となく納得がいく。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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