2019年08月17日

たもと


「たもと」は,

袂,

と当てる。「袂」(漢音ベイ,呉音マイ)の字は,

「会意。『衣+夬(切り込みを入れる,一部を切り取る)』。胴の両脇を切り取ってつけた,たもと」

とある(漢字源)。「たもと」の意で使うのは我が国だけらしい(漢字源)。

「たもと」は,

手本(たもと)の意(広辞苑),
タ(手)モト(本)の意(岩波古語辞典),
手本(たもと)の義。手末(たなすゑ)に対す(大言海),
テモト(手許)の轉(和語私臆鈔),

とある。「たなすゑ」は,

手之末の義,

で,

手の端,
手の先,
手先,

の意である(大言海)。岩波古語辞典には,

手末,
手端,

と当て,

「タは手の古形。ナは連体助詞」

とする。だから,「たもと」の本来の意味は,

肘より肩までの間,即ち肱(かいな)に当たるところ,

を指すとし,

「上古の衣は,筒袖にて,袖の肱に当たる邊を云ひしが如し」

とする(大言海)。つまり,

かいなの部分→そこを覆う着物の部分,

となり,さらに,

袖,

の意にまで広がり,

「袖の形が変わるにつれ,下の袋状の部分をいうようになる」

という(岩波古語辞典)。平安時代以降,和服の部分を指すようになった(語源由来辞典)ものらしい。

「たもと」は,その意味では,

手先,

の対であると同時に,

足元,

にも対している(日本語源広辞典)。

「たもと」にかかわる言い回しで,

袂の露,
袂を絞る,

は意味が分かるが,「関係を断つ」「離別する」意で使う,

袂を分かつ,

は,和服の,



身頃,

の接続部分,つまり,

袖付け,

を斬りはなすことを指す。「袂を分かつ」には,どこか,単なる,

関係を立つ,

よりは,身を切るような,あるいは,捨てるというような,思いがあるように思われる。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル: たもと
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