すそ


「すそ」は,

裾,

と当てる。「裾」(漢音キヨ,呉音コ)は,

「会意兼形声。『衣+音符居(しりをおろす,したにすわる)』」

とある(漢字源)。別に,

「会意兼形声文字です(衤(衣)+居)。『身体にまつわる衣服のえりもと』の象形(「衣服」の意味)と『腰かける人の象形と、固いかぶとの象形(「固い、しっかりする」の意味)」(「しっかり座る」の意味)から、座る時に地面につく『すそ』を意味する『裾』という漢字が成り立ちました。』

ともある(https://okjiten.jp/kanji2062.html)。で,

長い衣服の,下の垂れた部分,

つまり,

すそ,

の意から,転じて,

物の下端,

の意味となる(漢字源)。これは,和語「すそ」とも同じである。

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衣服の下の縁,

の意から,

物の端,
髪の毛の末端,
山のふもと,
川下,

と意味が転じていく。岩波古語辞典には,

「上から下へ引くように続いているもの,髙くたつものなどの下の部分」

とある。大言海は,

裾,

の他に,

裔,
裙,
襴,

を当て,

「末衣(すえそ)の略か,又,末殺(すえそぎ)の略か。はたばり,はば。かたはら,かは」

とする。日本語源広辞典は,

末衣(スエソ)の略,

を採る。大言海の二説以外には,

スリサル(摺去)の義か(名言通),
スソ(摩衣)の義か(国語の語根とその分類=大島正健),

があるが,言葉の意味から見れば,

末衣(スエソ)の略,

が妥当かもしれない。「すそ」に絡む言葉は結構あり,

裾高,
裾付,
裾継,
裾張り,
裾被(かつぎ),

等々の中で,

(お)裾分け,

という言い回しは現代でも使う。

もらいものの余分を分配する,
利益の一部を分配する,

といった意だが,中世末期の日葡辞書にも,

スソワケヲスル,イタス,

とあり,

お裾分け,

は近世後期からみられる(語源由来辞典),という。岩波古語辞典が,

下配,

とも当てるように,

多く,卑下(めした)に対して云ふ,

とあり,上位者に対しては使わない。

「『すそ』とは着物の裾を指し、地面に近い末端の部分というところから転じて『つまらないもの』という意味がある。よって、本来目上の人物に使用するのは適切ではない」

と(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%A1%E8%A3%BE%E5%88%86%E3%81%91)。

「『すそ(裾)』は、衣服の下端の部分から転じて、主要ではない末端の部分も表す。 そこから、品物の一部を下位の者に分配することを『裾分け』というようになり、下位の者に限らず、他の人に一部を分け与えることを『おすそわけ』というようになった」(語源由来辞典)。

「『裾』は衣服の末端にあり重要な部分ではないことから、特に、上位の者が下位の者に品物を分け与えることを『裾分け』といい、…現在では本来の上から下へという認識は薄れ、単に分け与える意味で用いることが多い」(由来・語源辞典)

ということらしい。しかし,「お裾分け」は,

お福分け,

ともいい,

「お福分けは『福を分ける』意味であるゆえ目上の人物に使用しても失礼に当たらないとされている」

とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%A1%E8%A3%BE%E5%88%86%E3%81%91)。物は言いようである。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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