あがく
「あがく」は,
足掻く,
跑く,
と当てる。「あがく」の「あ」は,
足,
である。万葉集に,
「アの音せず行かむ駒もが葛飾の真間の継橋やまず通はむ」(安能於登世受 由可牟古馬母我 可豆思加乃 麻末乃都藝波思 夜麻受可欲波牟)
とある。この「あ(足)」の用例は,
足占(あうら),
足結(あゆひ),
等々,多く下に他の語をともなった複合語をつくる(岩波古語辞典),とある。「あゆひ」は,
あしゆひ,
とも言い,
動きやすいように,袴を膝頭の下で結んだ紐,鈴や玉をつけ,装飾とした,
とある(広辞苑)。
あよひ,
とも言い,この対が,
手結(たゆひ),
になる。「足占(あうら)」は,やはり,
あしうら,
とも言い,
「古代の民間占法。一歩一歩に吉兆の辞を交互に唱え,目標の地点に達した時の辞によって,吉兆をうらなったものかという」
とある(仝上)ので,花びらで,「來る,来ない」とやる占いみたいである。岩波古語辞典には,
「歩いて行って,右足・左足のどちらで目標の地点につくかによって吉兆を定めるものらしい」
ともある。
もともと,「あがく」は,
ア(足)+カク(掻く),
で,
馬が前足で地面を掻く,
意とある(日本語源広辞典)。つまり,
轡をくわえさせられ,手綱で御される,
馬の自由にならない状態を前提に,馬が,
足で地面を掻いている,
というのがこの言葉の前提である。とすると,
「(馬などが)足で地面を掻いて進む」(岩波古語辞典)
は正確ではない。それなら,それが転じて,
自由になろうとしてやたらに手足を動かす,もがく,
意となり,それをメタファに,
悪い状態から抜け出そうとして,どうにもならないのに,いろいろやってみる,あくせくする,
子どもが悪戯して騒ぎまわる,ふざける,
意としても使うという意味の外延の広がりとつながらない。万葉集に,
「武庫川の 水脈を早みと 赤駒の 足掻く激(たぎち)に 濡れにけるかも」
は,早い川の流れに,乗り手は進もうと手綱で指示するが,馬は立ちすくみ足踏みしているさまである。本来は,「あがく」は,意味の転化の変化から鑑みても,この意味だったと思われる。
「ふざける」意では,今日使わないが,
「ヤイ,ヤイ,ヤイ。よつぽどにあがけよ,其所なぬくめ」
「(子供は)早く寝て疾く起し,昼あがかせたが万病円」
という用例がある(ともに近松・鑓権三)。
なお,「足」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/453183118.html?1565827214)については,触れたが,
タチ(立)の転(玄同放言),
が最もいいところをついていると思う。「立つ」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/399481193.html?1501986945)は,
「タテにする」
という意味である。それを「あし」とつなげるのは,自然に思えるが,どうだろう。二足歩行は,まず立つから始まる。たとえば,
tatu→tasi→asi
といった転訛をしたとは考えられまいか,とは臆説ではある。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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