2019年10月20日

八寸


「八寸」は、

1寸の8倍の長さ。約24.2センチ、

の意味だが、

八寸角の折敷(をしき ヘギ製の角盆)、

を指す(たべもの語源辞典)。「折敷」は、

片木(へぎ)を四方に折り廻して作った角盆、食器を載せるのに用いる。杉などのほか種々の香木でつくる、

とある(広辞苑)が、

「四角でその周囲に低い縁をつけたもの,すなわち方盆のこと。その名は,上古に木の葉を折敷いて杯盤にしていたことが残ったものであるといわれる。高坏(たかつき)や衝重 (ついがさね) よりは一段低い略式の食台として平人の食事に供されたもので,8寸(約 24cm)四方のものを『大角』または「八寸」,5寸(約15cm)四方のものを『中角』,3寸(約9cm)四方のものを「小角(こかく)」といい,角(かど) 切らないものを「平折敷」,四隅の角(すみ)を切ったものを『角切の折敷』あるいは『角』と呼び,ほかに足がつけられた『高折敷』『足付折敷』などの種類もみられた」

とある(ブリタニカ国際大百科事典)。

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(折敷 デジタル大辞泉より)


「折敷」(をしき)は、

ヲリシキ(折敷)の約で、柏、椎などの葉を折り敷いて食物を盛った古の風俗から(大言海・名語記・万葉代匠記・和字正濫鈔)、

が由来とみられる。「へぎ」は、

削ぎ、

で、

「減ると同根。一部を削り取る意」(岩波古語辞典)

からきていると思われる。名詞「へぎ」には、

片木
片器、

と当て、

薄く削いだままの板で作った折敷、

とある(仝上)。大言海は、「へぎ」に、

折、

を当て、

折(へ)ぐこと、また、ヘギイタ、ソギ、片木、

としている。

「八寸」は、寸法の意から、「折敷」の意となり、さらに、

それに盛られる取肴、

意となり、さらに、

料理献立の一つ、

となる。

「懐石料理(茶料理)で主客が盃のやりとりをするとき、木地の八寸四方の片木(へぎ)盆に取肴を盛って出したので、『八寸』という器に盛る肴が、決まった」

らしい(たべもの語源辞典)。懐石料理の中の八寸は、たとえば、

「八寸…に、酒の肴となる珍味を2品(3品のこともある)、品よく盛り合わせる。2品の場合は、1つが海の幸ならもう1品は山の幸というように、変化をつけるのがならわしである。亭主は正客の盃に酒を注ぎ、八寸に盛った肴を正客の吸物椀の蓋を器として取り分ける(両細の取り箸が用いられ、それぞれの端が酒肴によって使い分けられる)。酒と肴が末客まで行き渡ったところで、亭主は正客のところへ戻り、『お流れを』と言って自分も盃を所望する。その後は亭主と客が1つの盃で酒を注ぎ合う。亭主は正客の盃を拝借するのが通例である。正客は自分の盃を懐紙で清め、亭主はその盃を受け取り、そこに次客が酒を注ぐ。その次は、同じ盃を次客に渡し、亭主が次客に酒を注ぐ。以下、末客が亭主に、亭主が末客に酒を注ぎ合った後、亭主は正客に盃を返し、ふたたび酒を注ぐ。このように、盃が正客から亭主、亭主から次客、次客から亭主、と回ることから、これを『千鳥の盃』と称する。客が上戸の場合は、さらに『強肴』(しいざかな)と称される珍味が出される場合もある(強肴は『預け鉢』の前後に出される場合もあり、『預け鉢』そのものを『強肴』と称する流派もある)」

という具合であるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%87%90%E7%9F%B3

「一汁三菜(さらにあれば預け鉢)などの食事が済み箸洗いが出たあと、亭主と客が酒の献酬(けんしゅう)をする際に肴(さかな)として珍味などを盛った(八寸)を亭主が持ち出し、客に一人ずつ取り分ける。動物性のものと植物性のもの2種を盛ることが多い」

ともある(食器・調理器具がわかる辞典)。

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(八寸盛り付け例 【春】蛍いか旨煮、菜の花昆布じめ https://oisiiryouri.com/hassun-imi/より)


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(八寸盛り付け例 【秋】さばの小袖、干し柿鳴門巻き https://oisiiryouri.com/hassun-imi/より)


「八寸」の考案者は、利休で、

京都洛南の八幡宮の神器からヒントを得て作ったといわれる、

らしいhttps://kyoto-kitcho.com/event/madrid_fusion_05/mf_008_jp.htmlが、はっきりしない。ただ、上記にあるように、

「一期一会の好機を得て主となり客となった喜びをこめて、亭主と客が盃をかわす場面でだされるものをいいます。正式には八寸四方の杉のお盆を使い、酒の肴として、海のもの(生臭もの)と山のもの(精進もの)を合わせて出すことが決まりとされています。「八寸」は、十分に湿らし、右向こうに海のもの、左手前に精進のものを盛り、手前に両細の青竹箸を濡らし、露をきって添えます。また、客の数よりも多く(通常、お客さんの人数+御代わり1名分+亭主用1名分)盛り付けるようにします。」

ともある(仝上)。

その後、明治になって、「八寸」は、

「八寸四方の片木盆に盛るといった八寸ではなく、八寸という献立の中の名称であって、その料理は、煮物でも焼物でも何でもよい。つまり、焼物といえば、魚鳥肉を焼いたものといった風に、その料理法は決まっているが、八寸と称したとき、その料理法に決まりはなく、何か一つの料理を出すための看板として八寸という名称が用いられるようになったといえよう。その器も、八寸四方の片木盆など昔のことはまったく忘れられて、八寸皿とよぶ器に盛られるようになった」

という献立に変わってしまった。ただ、懐石料理に「八寸」はあるが、会席料理にはないようである。

ちなみに、「へぎそば」は、へぎ(片木)」と呼ばれる、剥ぎ板で作った四角い器に載せて供されることからこの名が付いているhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%B8%E3%81%8E%E3%81%9D%E3%81%B0

参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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