ちゃぶだい


「ちゃぶだい」は、

卓袱台、

と当てるが、この他に、

茶袱台、
茶部台、
食机、
餉台、
食卓、

等々とも当てる。洋風化したため、今日はほとんど見かけない。

「四本脚の食事用座卓である。一般的に方形あるいは円形をしており、折り畳みができるものが多い」

もので、

「1887年(明治20年)ごろより使用されるようになり、…1895年(明治28年)ごろになると折畳み式の座卓に関する特許申請が出るようになり、徐々にではあるが、座卓が家庭へと進出し始めた1920年代後半に全国的な普及を見た。しかし1960年(昭和35年)ごろより椅子式のダイニングテーブルが普及し始め、利用家庭は減少していった」

とあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%A1%E3%82%83%E3%81%B6%E5%8F%B0が、既に、

「1870年(明治3年)に仮名垣魯文が著した『萬國航海西洋道中膝栗毛』に既にチャブダイという言葉が西洋料理店の食卓を指す俗語として登場していることから、名称としてはこの頃には広まっていた可能性がある」

ともある(仝上)。

卓袱台折り畳みの.jpg

(折り畳みの卓袱台 https://www.yuraimemo.com/4327/より)

この語源には、

チャブは「茶飯」の中国音Cha-fanの訛り、
チャブは「卓袱」の中国音Cho-fuの訛り、
中国料理をいう米国語Chop-sueyの転、

等々諸説ある(日本語源大辞典)。大言海は、

食卓、

と当て、

チャブ(喫飯)、或いは卓袱台の支那音の訛、

とする。「チャブ(喫飯)」について、

「チャブは、茶飯の支那音(cha-fan)の訛か、或いは云ふ、支那語卓袱(チャオフ Cho-fu)の訛か、又、米国辺にて支那料理のことをチャブスイ(Chop-suey)と云ふより、転ぜしならむと」

としている。諸説を並べた形になる。「卓袱(しっぽく)」は、

テーブルクロスの意の中国音zhuō fú、

からきて、転じて、

食卓、

の意となったもので、「茶飯」は、

吃飯(チャフン、ジャブン)、

と表記し、

ご飯を食べること、

を意味する。「チャブスイ(チャプスイ)」は、

中国人移民からアメリカへ広まった料理(英語: Chop Sui、チョップスウイ、チョプスイ)、

であるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%A1%E3%82%83%E3%81%B6%E5%8F%B0、という。

「ちゃぶだい」は、

卓袱台、

と表記するように、

しっぽく(卓袱)、

と関わるとみる説が多い。たとえば、

「卓袱台と書くように,卓袱(しつぽく)料理(卓袱)の食卓を日常生活に導入したもので,〈チャブ〉とは卓袱の原義であるものという。伝統的に銘々膳方式の食事をしていた日本人にとって,数人で一つの卓を囲み料理をとり分ける卓袱の食事形式はかなり特異で衝撃的なものであったが,やがてその利点を認識する階層も広くなり,日常的に身分差別を必要とせぬ家庭生活の中で使われるようになった」

とする(世界大百科事典)し、

「『ちゃぶ台』の『ちゃぶ』という言葉は、中国料理の食卓を意味していた『卓袱(zhuo-fu)』の読みから来ているというのが有力な説である。中国語の『卓袱』はほんらいは、食卓にかける布、つまりテーブルクロスのことで、それがテーブルの意味にも用いられるようになったものらしいが、現代中国語ではなじみの薄い言葉である」

とある(笑える国語辞典)し、

「中国語の『卓袱(テーブルかけ)』に台を加えたもの」

とある(日本語源広辞典)。

「ちゃぶだい」の呼称は、地域によって異なり、

「富山県、岐阜県、三重県、兵庫県、佐賀県、長崎県、熊本県などの一部ではシップクダイ、シッポクダイ、ショップクダイ」

とある(仝上、https://www.yuraimemo.com/2773/等々)ところを見ると、「卓袱(しっぽく)」との関連が、やはりありそうである。

日本語の語源は、

「タブルダイ(食ぶる台)をチャブダイ(卓袱台)」

とするが、「ちゃぶだい」に「卓袱台」と当てるには、「卓袱(しっぽく)」が、食卓の意味であることを承知していたからこそではないか、と思える。

「撥脚台盤などといった大きな食卓を使う習慣は、奈良時代には既に中国より入っており、貴族社会においては同じ階級のものが同一食卓を囲む場合があったが、武士が強い支配力を持つようになると上下の人間関係がより重要視されるようになり、ほぼ全ての社会において膳を使用した食事が行われはじめた。
江戸時代に入ると出島などでオランダ人や中国人などの食事風景を目にする機会が出るようになり、それらを真似た洋風料理店では座敷や腰掛式の空間に西洋テーブルを置き、食事を供する場が登場しはじめる。享保年間以降はこうした形式の料理屋が江戸や京にも出現し始め、そこで用いられるテーブルや座卓を『シッポク台』とか『ターフル台』などと呼称するようになった」

という経緯https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%A1%E3%82%83%E3%81%B6%E5%8F%B0もあり、また江戸語大辞典には、「しっぽく」の項で、

中国風の食卓、

の意で載り、

「高さ三尺余、四脚、朱漆で塗り周りに布帛を垂らす」

とあり、

しっぽく台、

とも言ったとある。この前提で、「ちゃぶだい」が名付けられたと考えていいのではあるまいか。ただ音は、

吃飯(チャフン、ジャブン)、

に近い。大言海が、三説併記したのがわかる気がする。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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