2019年11月20日

手前味噌


「手前味噌」は、

手味噌、

ともいう。

自分のことを誇ること、
自慢、

の意である。一般には、「手前味噌」の語源は、

自前の味噌、
自家製の味噌、

の意味とされる。「手前」は、

自分の手の前、
目の前、

の意で、そこから、目線で、

自分に近い方、
こちら、

あるいは、

自分の手元、

の意となり、

相手に対してこちらの立場、

の意となり、より近づいて、

自分の持ち物、
抱えている者、

の意となり、それをメタファに、

自分の腕前、
技倆、

の意となり、

点前、

と書いて、

茶道の所作、作法、

に特定されたりするが、点前は、手前とも当てるので、あるいは逆に、点前の用例から、腕前の意になったのかもしれない。さらに、内々の意から、

家計、
暮らし向き、

の意としても使われる。その意味では、「手前味噌」の「手前」は、

自前、
あるいは、
自家製、

といった意味であったとみられる。それは、

昔は味噌は各家庭で作られており、それぞれがおいしくなるようにと工夫を凝らしていました。
そして、おいしく出来た味噌を「手前(わたし/自家製)の味噌おいしくできたから食べてみて」と自慢し合うようになった、

とみるhttps://eigobu.jp/magazine/temaemisoのが自然である。戦前までは、多くそうであった。もう少し踏み込めば、

自家製の味噌を独特の味があると自慢する、

意とみる(デジタル大辞泉)、ことになる。

赤味噌の一つ・江戸甘味噌(左)と淡色系の信州味噌(右).jpg

(赤味噌の一つ・江戸甘味噌(左)と淡色系の信州味噌(右) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%91%B3%E5%99%8Cより)

しかし、異説を、

「手前味噌という際の「手前」は、…『自家製』や『自前』、また一人称の『自分』のことである。 手前味噌の『味噌』は食品の味噌のことだが、現代でも『ポイント』の意味で『味噌』が使われるように、『味噌』には『趣向をこらしたところ』の意味がある。これは各家庭で味噌を作り、それぞれかよい味を出すために工夫を凝らしていたためで、近世には『趣向をこらしたところ』の意味から、人に自慢する様子にも『味噌』が使われた。『手前どもの味噌は…』と自家製の味噌を自慢することから、『手前味噌』という言葉が生じたとするのも間違いではないが、『味噌』という言葉自体に、『自慢』の意味が含まれることから、自分を自慢する言葉として『手前味噌』が使われるようになったと考える方がよいであろう」

と述べるものがある(語源由来辞典)。しかし、逆ではあるまいか、

手前味噌、

という言い方があったから、それをメタファに、

特色とする点、
得意に思っている箇所、

という意味でも使われるようになっただけなのではないか。ことわざに、

手前味噌で鹽が辛い、

というのがある。

自分で作った味噌なら、塩が辛くてもうまいと思うこと、

転じて、

自慢話ばかりするので聞いていて苦しいことのたとえ、

の意である。

「味噌」の「噌」(漢音ソウ、呉音ショウ、慣ソ)は、

会意兼形声。「口+音符曾(層をなして重なる)」

としかない(漢字源)が、別に、

「噌」の字.gif

(「噌」の字 https://okjiten.jp/kanji2400.htmlより)


「会意兼形声文字(口+曾)。『口』の象形(「言葉」の意味)と『蒸気を発する為の器具の上に、重ねたこしきから、蒸気が発散している』象形(「かさねる」、「かさなる」の意味)から、『言葉が積み重なる』、『やかましい』を意味する『噌』という漢字が成り立ちました」

とあるhttps://okjiten.jp/kanji2400.html

「味噌」は、わが国だけで使うようである。字源には、

大豆を煮て米又は麦の麹と鹽とを和して醸す、

と載り、

豉(シ)、

と同じとある。「豉」は、

豆と鹽とを和して作りし食品(幽尗)、味噌の類、

とある。「豉」は、

くき、

と訓ませ、新撰字鏡に、

「豆を原料とした食物。味噌・納豆(なっとう)の類とも、たまりの類ともいう」

とある(精選版 日本国語大辞典)が、「納豆」http://ppnetwork.seesaa.net/article/470884655.htmlで触れたように、

「中国では、納豆を『鼓(し)』といった。これは後漢時代の文献に現れている。日本に伝わったのは古く平安時代の『和名鈔』に和名クキとしてある。鼓をクキとよんだ」

ので(日本語源大辞典)、

塩鼓、

つまり、

浜名納豆、
寺納豆、
大徳寺納豆、

の意味である。「味噌」については、項を改める。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
簡野道明『字源』(角川書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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posted by Toshi at 04:56| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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