2019年12月12日

いざよい


「いざよい」は、

十六夜、

と当てると、

十六夜の月、

の意である。

十三夜月(十三日月)

小望月(十四日月)

満月(十五日月、望月)

十六夜月(十六日月、既望)

立待月(十七日月)

居待月(十八日月)

寝待月(十九日月、臥待月)

更待月(二十日月)

下弦の月(二十三夜月)

と続く、陰暦十六日月である。

十六夜の月.JPG

(十六夜の月)


満月よりも遅く、ためらうようにでてくるのでいう、

とある(広辞苑)。

月の出を早くと待っても、月が猶予うという気持ちから、

ともある(岩波古語辞典)。大言海は、

日没より少し後れて出づるに因りて、躊躇(いさよ)ふと云ふなり。イサヨフは、唯、やすらふの意の語なれど、特に此の月に云ふなり。…和訓栞、いさよひ『ヨヒを、青に通ハシ云ふ也』。十七夜の月を立待の月と云ひ、十八夜の月をゐまち(居待)の月と云ふ、

とする。「いさよふ」とあるのは、「いざよう(ふ)」が、

上代ではイサヨイと清音。鎌倉時代以後イザヨイと濁音。

であることによる(岩波古語辞典)。「十六夜月」も、

いさよひ、

と清音であった。「いざよふ」は、

(波・雲・月・心などが)ぐずぐずして早く進まない、動かず停滞している、

という意味である(仝上)が、「いさよふ」の語源を、岩波古語辞典は、

イサはイサ(否)・イサカヒ(諍)・イサヒ(叱)と同根。全身を抑制する意。ヨヒはタダヨヒ(漂)のヨヒに同じ、

とし、大言海は、

不知(いさ)の活用にて、否(イナ)の義に移り、否みて進まぬ意にてもあらむか。ヨフは、揺(うご)きて定まらぬ意の、助動詞の如きもの、タダヨフ(漂蕩)、モコヨフ(蜿蜒)の類、

とし、微妙に違う。「よひ」は、

ただよひ、
かがよひ、
もごよひ、

などの「よひ」で、動揺し、揺曳する意(岩波古語辞典)として、「いさ」は、

否、
不知、

と当て、

「イサカヒ・イサチ・イサヒ・イサメ(禁)・イサヨヒなどと同根。相手に対する拒否・抑制の気持ちを表す」

とあり(仝上)、相手の言葉に対して、

さあ、いさ知らない、
さあ、いさわからない、

という使い方をしたり、「いや」「いやなに」「ええと」など、相手をはぐらかしたりするのに使う(岩波古語辞典)、とある。これだと、月が、

はぐらかしている、

という含意になる。どちらとも決めかねるが、個人的には、「はぐらかす」よりは、「出しぶる」意味の方がいいような気がする。

日本語源大辞典は、

「いさ」は感動詞「いさ」と同根。「よふ」は「ただよふ(漂)」などの「よふ」か、

とする。「いさ」は、

さあ、

と人を誘うときや、自分が思い立った時、

の言葉だが(岩波古語辞典)、通常、

いざ、

と濁る。大言海は、

率、
去来、

と当て、

イは、発語、サは誘う声の、ささ(さあさあ)の、サなり。いざいざと重ねても云ふ。…発語を冠するによりて濁る。伊弉諾尊、誘ふのイザ、是なり。率の字は、ひきゐるにて、誘引する意。開花天皇の春日率川宮も、古事記には、伊邪川(いざかはの)宮とあり、

とする。そして、「いさ」(不知)と「いざ」(率)と混ずべからず、としている(大言海)。やはり、感嘆詞は、無理があるかもしれない。

因みに、「いざ」に、

去来、

と当てるのは、「帰去来」からきている。帰去来は、

かへんなむいざ、

と訓ませるが、

訓点の語、帰りなむ、いざの音便。仮名ナムは、完了の助動詞。來(ライ)の字にイザを充(あ)つ。來(ライ)は、助語にて、助語審象に『來者、誘而啓之之辞』など見ゆ(字典に『來、呼也』、周禮、春官『大祝來瞽』。來たれの義より、イザの意となる)。帰去来と云ふ熟語の訓点なれば、イザが語の下にあるなり。史記、帰去来辞(ききょらいのことば)、など夙(はや)くより教科書なれば、此訓語、普遍なりしと見えて、古くより上略して、去来の二字を、イザに充て用ゐられたり、

とある(大言海)。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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