卯の花
「卯の花」は、
卯の花の 匂う垣根に
時鳥(ホトトギス) 早も来鳴きて
忍音(しのびね)もらす 夏は来ぬ
という童謡でお馴染みの、
うつぎ、
の別名であり、「うつぎ」は、「うづき」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/457762501.html)で触れたように、
空木、
の意味で、茎が中空であることからの命名であるとされる。しかし、異説もあり、
ウ(兎)の毛のような白い花が咲くから(名語記・本朝辞源=宇田甘冥)、
ともある(日本語源大辞典)。陰暦四月の、
「卯月」は、
卯の花月、
とも呼ばれ、「卯月」の由来は「うつき」とする説があるほどである。ただ、「卯の花」説は、他の月の命名との一貫性が損なわれる気がするので、ちょっと難点があるが。
また「卯の花」は、
おから、
の別名でもある。さらに、
襲(かさね)の色目、
の意ともされる。「色目」とは、
十二単などにおける色の組み合わせ、
をいい、
衣を表裏に重ねるもの(合わせ色目、重色目)、
複数の衣を重ねるもの(襲色目)、
経糸と緯糸の違いによるもの(織り色目)、
等々がある(http://www.kariginu.jp/kikata/kasane-irome.htm)。その代表的なものは表裏に重ねる、
襲の色目(かさねのいろめ)、
がある。
卯の花襲(かさね)、
とは、
は女房装束の袿(うちき、うちぎ)の重ねに用いられた襲色目に、四月薄衣に着る色のひとつとしてある(http://www.kariginu.jp/kikata/5-2.htm)、山科流では、表は白、裏は萌黄(もえぎ)。四五月にもちいる、という(広辞苑)。
当時の絹は非常に薄く裏地の色が表によく透けるため、独特の美しい色調が現れる。襲色目は、http://www.kariginu.jp/kikata/5-2.htmに詳しい。
「おから」を、「卯の花」と呼ぶのは、
「絞りかすの意味。茶殻の『がら』などと同源の『から』に丁寧語の『御』をつけたもので、女房言葉のひとつ。『から』の語は空(から)に通じるとして忌避され、縁起を担いで様々な呼び名に言い換えされる。白いことから卯の花(うのはな、主に関東)、包丁で切らずに食べられるところから雪花菜(きらず、主に関西、東北)などと呼ばれる。『おから』自体も『雪花菜』の字をあてる。寄席芸人の世界でも『おから』が空の客席を連想させるとして嫌われ、炒り付けるように料理することから『おおいり』(大入り)と言い換えていた」
とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E3%81%8B%E3%82%89)。
「おからのカラ(空)をきらって、ウ(得)の花としたという説もあるが、これは良くない。ウは『憂』に掛けたりすることが多い」
と一蹴したたべもの語源辞典は、
「雪花菜というのも、雪の白いことで、雪見菜は白い花、卯の花も白い花である。白い卯の花をおから(白い色が似ている)と見立てたのが正しい」
と言う。ひねくらず、卯の花に見立てた心持でいいのかもしれない。
参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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