2019年12月26日

ワカメ


「ワカメ」は、

若布、
和布、
稚和布、

等々と当てる。漢名は、

裙帯菜、
石蓴(かため)、
海葱、
稚海藻、

また、古くは、

にぎめ、

と呼んだ。「にぎめ」は、

和布、

とあてる。褐藻綱コンブ目チガイソ科の海藻である。

「ワカメは乾燥が容易で、軽く運搬も容易であったこともあり、先史から日本で広く食べられていたことが確認されている。縄文時代の遺跡からは、ワカメを含む海藻の植物遺存体が見つかっており、この時代から食されていたことが明らかになっている。」

とありhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%82%AB%E3%83%A1、古くから食べられてきた。

海中を漂うワカメ.jpg

(海中を漂うワカメ https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%82%AB%E3%83%A1より)


大言海は、

ワカキメの略、又、ワケメの轉かとも云ふ。荒布に対する名、

とし、古名は、

にぎめ(和布)、

とする。

「荒布」(あらめ)は、

和布(にぎめ)に対して、皺の粗きを云ふ、

とする。「荒布」は、

コンブ目 レッソニア科アラメ属に属する褐色の褐藻、

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%83%A1

「古くは大宝律令や正倉院の文書にも登場し、現在でも薬品原料、肥料、食料品などとして用いられている。」

とある(仝上)。

荒布.png



黒菜、

ともいい(大言海)、和名抄に、

滑海藻、俗用荒布、阿良女、

とある。大言海は、「藻」の項で、

海布(め)と通ず、

とし、「め(海布)」の項で、

芽の義かと云ふ、或は云ふ、藻の轉。

とし、「布の字を用ゐること」について、「昆布」の項で、

「蝦夷(アイヌ)の語、Kombuの音訳字なり、夷布(えびすめ)と云ふも、それなり。海藻類に、荒布(あらめ)、若布(わかめ)、搗布(かちす)など、布の字を用ゐるも、昆布より移れるならむ。(中略)コブと云ふは、コンブの約なり」

とする。

「和語では古くは、藻類の『も』に対し、食用の海草一般を『め』と呼んでいた」

とする説もあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%82%AB%E3%83%A1が、「め(海布)」は、

海藻(め)、

とも当てる。「め(海布)」は、「も(藻)」と通ず、ということになる。岩波古語辞典も、「め(海布)」は、

も(藻)の転か、

としている。この「め(海布)」は、

芽、

であり、「芽」は、

目と同根、

である(岩波古語辞典)。

「わかめ」は、大言海の言うように、

ワカキメの略、

ワケメ、

の二説に分かれるが、「若(わか)」は、

動詞ワク(分)の派生形(語源辞典・形容詞篇=吉田金彦)、

という説もある。となれば、「ワカキメ」と「ワケメ」は区別せず、

「わかめの『め』は、海藻の総称『メ(海布)』のことで、『モ(藻)』に通じる語。わかめの『わか』は、羽状に分裂した姿から、新生であることを表す『ワカ(若)』や、分かれ出た意味の『ワカ(分)』である。つまり新しく分かれ出た海布という意味から、『わかめ』と呼ばれるようになったものと考えられる。」

とする(語源由来辞典)こともできる。

「マコンブとワカメと比較すると、マコンブには周囲にさけめはない。ワカメは深い切り込みがあり、…分けめが甚だしいから、ワカメの名はこのワケメからで、しかも、メと海布の称であるからワカメとなると考えられる。しかしワカメの古名和布(にぎめ)であることを考えると、昆布や荒布に比してワカメは、柔らかい海藻であることが特徴であった。それで柔らかい海布(め)というのでニギメとなったものである。それが羽状に分裂しているという形の上から、ワカメとなり、文字はニギメの意から『若』を用いるようになったものである。また、ニギメの若いものを賞味したからワカメともよんだ」

とある(たべもの語源辞典)ところからも、

「わか」は、

「分」

「若」

「和」(にき、荒の対)
と、

三重の意味が重なっている、ということになる。

和海藻(にぎめ)、

とも呼ばれたわけである。ただ、延喜式で、

海藻(にぎめ)・稚海藻(わきかめ)また和布(わかめ)・海藻(にぎめ)、

と併記されているように、

ニギメ、

ワカメ

が別になっている。

「古くは、海藻の総称である『メ』に、新生であることを表す『ワカ』という美称を冠したもので、特定の海藻をさす名称ではなかった可能性もある。中世になって現在のように特定の海藻の名称として載せられるにいたったと考えられる。『節用集』諸本や、『温故知新書』(1484)等に『和布』の訓として、また『運歩色葉集』(1547~8)等に『若和布』の訓として見え、『日葡辞書』にも『vacame(ワカメ)』とある」

とある(日本語源大辞典)。江戸時代になっても、料理本に、

カジメ、

として、

ワカメの意と思われるものがある(たべもの語源辞典)、という。

ところで、

「万葉集には『和可米』『稚海藻』(いずれも訓は『わかめ』)の他、『和海藻』(『にぎめ』、やわらかいワカメのこと)が見られる。他に、万葉集に頻出する『玉藻(たまも)』も、歌によってはワカメを指すかも知れない」

とあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%82%AB%E3%83%A1。たとえば、「石見の海の角の浦」とはじまる人麻呂の長歌に、

「和多津(にきたづ)の 荒磯(ありそ)の上に か青なる 玉藻奥(おき)つ藻 朝はふる 風こそ寄せめ 夕はふる 浪こそ来(き)寄せ…」

とある「か青なる玉藻」は、

真っ青な海藻はアオノリの類、

らしい(たべもの語源辞典)。

奥津島荒磯の玉藻潮干満(ひみ)ちて隠らいゆかば念(おも)ほえむかも、

とあり、潮が満ちて海水に隠れるという意で、そんな浅瀬に「和布」はない(仝上)。

うつせみの生命を惜しみ浪に濡れ伊良虞の島の玉藻刈り食む、

の「玉藻」は、

「浪にぬれてあるから、深いところの海藻であろう。若布をとっているかんじがする」

とある(仝上)。

磯に立ち沖辺を見れば海藻刈舟(めかりぶね)海人榜ぎ出(づ)らし鴨翔る見ゆ

の、「海藻刈(めかり)船」は、

ワカメとり、

である(仝上)。

ワカメ.jpg



なお、「芽」については「目」http://ppnetwork.seesaa.net/article/453951631.htmlで触れた。

参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 05:46| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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