2020年01月04日

かる


「かる」は、

狩る、

と当てるだけではなく、

刈る、
駆る、

等々とも当てる。「狩る」は、

紅葉狩り、

の「狩る」である。

歌川国貞の‘紅葉がりノ図.jpg

(歌川国貞・紅葉がりノ図 http://izucul.cocolog-nifty.com/balance/2010/11/post-5a95.html


「紅葉狩り」http://ppnetwork.seesaa.net/article/429896560.htmlで触れたように、紅葉狩りは、

山野に紅葉を尋ねて鑑賞すること、観楓、

とある(広辞苑)。「狩り」は、岩波古語辞典、大言海には、

「駆りと同根」

とあるので、「追い立てる」という意味があり、本来は、

鳥獣を追い立てて獲る、

で、『大言海』では、

弓矢、鳥銃などにて、鳥獣を採り、打捕ること、

転じて、

魚など漁(いさ)り、又薬草、茸など、探りて採ること、

更に転じて、

野山に入りて、花など、探りて観ること

という意味がある。広辞苑には、

薬草・松茸・蛍・桜・紅葉などを尋ね捜し、採集、または鑑賞すること、

と、載る。いまは、紅葉狩りの他は、

ぶどう狩り、
いちご狩り、
蛍狩り、
茸狩り、
薬狩り、

等々と言った言葉に残っているが、

狩猟採集、

と対で言っていたのには意味があるらしい。

かつては、桜にも、

桜狩り、

と言ったようで、『方丈記』に、

「桜を狩り、もみじをもとめ」

という一説があり、藤原定家の和歌に、

桜狩り 霞の下に今日くれぬ 一夜宿かせ 春お山もり

という歌があるらしく(岩波古語辞典)、春の『花見』ことを『桜狩り』といっていたこともあるようだ。今では「紅葉狩り」以外に、「眺める意味」としてはあまり使われない。桜を狩る(折る)ことは、いつの間にか風習として禁止されたのも大きいかもしれない。ただ、「狩り」というのは、

「平安時代には実際に紅葉した木の枝を手折り(狩り)、手のひらにのせて鑑賞する、という鑑賞方法。」

だったとされ、その意味では、紅葉だけは、「狩り」を可能にしたのが大きいのかもしれない。

梅にも、現在でも、梅狩りという言葉があるようだが、これは、梅の実を狩ることで、文字通り収穫である。

この「狩り」と当てる「かり」と、

刈、
苅、

と当てる「かる」とは、どうも使い分けられているようである。「狩り」は、上述のように、岩波古語辞典は、

駆ると同根、

で、

鳥獣を追い立てて取る、
花や草木をさがし求める、

意であるとする。日本語源広辞典も、同趣旨で、

動植物を収穫するで、動物を追い立ててトル、狩る、駆る、と、植物をカルと同源と考える、

としている。多少のニュアンスの差はあるが、

獣をカル(駆)意(名言通)、
何でもカリモトムル(駈覓)意から(雅言考)、
カイリ(鹿射)の約(言元梯)、

等々、狩猟の意にちなむものが多い。もちろん、

カはカクルか。リはトリ(取)か(和句解)、
獅子をカリといい、獅子は百獣を食うところから猟の意に転じたもの(和語私臆鈔)、

という異説はあるが。他方、

刈、
苅、

と当てる「かり」は、

稲、茅(かや)、薦(こも)など、刈り取ること、

の意で、万葉集に、

三島江の、入江の薦を、苅にこそ、吾れをば君は、思ひたりけり、

とあり、古くから使われる(大言海)。岩波古語辞典には、

(草木や毛など、伸び茂っているものを)根元を残して切ること、

の意とあり、やはり万葉集に、

少女(をとめ)らに行相(ゆきあひ)の早稲(わせ)をかる時になりにけらしも萩(はぎ)の花咲く、

と使われている。どうやら、「刈る」は、

切り離す、

意であり、日本語源広辞典は、

離る、狩る、涸る、と同源、

とする。確かに、

離(か)る、は、

切るるの義、

とあり(大言海)、「刈る」は、

切る、伐(こ)るに通ず、

とある(大言海)。「伐(こ)る」は、名義抄に、

「伐、キル・コル」

とあるので同義と見ていい。ただ、岩波古語辞典には、

「(離るは)空間的・心理的に、密接な関係にある相手が疎遠になり、関係が絶える意。多く歌に使われ、『枯れ』と掛詞になる場合が多い」

と、メタファとして使われるとし、万葉集に、

珠に貫く楝(あふち)を家に植ゑたらば山ほととぎす離れず来るかも

とある。

「枯(涸・乾)る」は、

「カラ(涸)と同根。水気がなくなってものの機能が弱り、正常に働かずに死ぬ意。類義語ヒ(干)は水分が自然に蒸発する意だけで、機能を問題にしない」

とあり、万葉集に、

耳無(みみなし)の池し恨めし吾妹子が来つつ潜(かづ)らば水は涸れなむ、

とある。こう見ると、

刈ればそのまま枯れるという意から、カル(枯)に通じる(和句解)、

涸る、

離る、

はつながるし、

刈る、

ともつながるが、

狩る、

とは少し離れすぎている。あくまで、「刈る」は、

キル(切)、

であり、「狩る」は、

駆る、

のようである。両者、状況依存の文脈では、会話の当事者にとって、間違いようのない言葉であった、と思われる。文字化に伴って、漢字を当て分ける必要ができた。と思われる。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 05:36| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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