「かがみもち」は、
鏡餅、
と当てる。
平たく円形の鏡のように作った餅。大小二個重ね、正月に神仏に供え、または吉例の時などに用いる。
とあり(広辞苑)、古くは、
餅鏡(もちひかがみ)、
といい、
かがみ、
おそなえ、
おかざり、
円餅、
もちい、
ぐそくもちい、
ともいう(仝上)、とある。「もち」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/456276723.html)で触れたように、「もち」は、古くは。
モチイヒ、
といい、「もち」は、
「『モチイヒ』の略で『モチヒ』とよばれていた。鎌倉時代に入ってもモチヒの形が見られるが、平安時代中期にはハ行転呼の現象により、既に『モチヰ』の形をとっていたと思われる。②鎌倉時代にはヰとイの混乱が生じており、『モチイ』は末尾の母音連続を約して『モチ』となった。③室町時代の辞書類を見ると、モチ・モチイ両方の形をのせているものが多い。」
とある(日本語源大辞典)。
円鏡との関係からか、
円鏡の形に似ているのでいう、
とする説(岩波古語辞典)が、他にも多く、
大きさと形が鏡に似た餅(日本語源広辞典)、
形が鏡に似ているから(滑稽雑談・本朝世事談綺・物類称呼・歴世女装考)、
鏡餅は、丸く平らで鏡の形に似ていることからこの名がついた。 現代の鏡は四角いもの が多いが、古くは円形で祭具として用いられ、特別な霊力を持つものと考えられていた。 現在でも神社の御神体として、円形の鏡が祭られている(語源由来辞典)、
等々多数派である。しかし大言海は、
元旦の歯固(はがため)のモチヒカガミを略して、カガミと云ひしに、再び、下に、モチを添えたる語ならむ」
とする。
もちかがみ→かがみ→かがみもち、
ということらしい。源氏物語には「歯固めの祝ひして、餅鏡をさへ取り寄せて」32.の一節があることによるのかもしれない。鏡餅が現在のような形で供えられるようになったのは、家に床の間が作られるようになった室町時代以降である(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8F%A1%E9%A4%85)、とされる。
しかし、餅鏡、鏡餅のいずれにせよ、
鏡、
の円に準えたものに違いはない。かつての銅鏡を考えるまでもなく、鏡は円であった。
日本においては、
「鏡は神道の信仰の対象となっている。日本神話に登場するものとしては、三種の神器の一つの八咫鏡や日像鏡・日矛鏡などがあり、鏡を神体として社に祀っていることがある。
平安時代以降、鏡面に仏像を線彫りにして信仰礼拝の対象とした「鏡像」(きょうぞう)が盛んに製作され、これは後に銅板に半肉彫りの彫像を取り付けた「懸仏」(かけぼとけ)に発展した」
とあり(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8A%85%E9%8F%A1)、鏡は神体であったり、神代、神器として、信仰の対象であった。鏡餅にしろ、鏡餅にしろ、
「昔の鏡の形に似ていることによる。昔の鏡は青銅製の丸形で、神事などに用いられるものであった。三種の神器の一つ、八咫鏡を形取ったものとも言われる。また、三種の神器の他の二つ、八尺瓊勾玉に見立てた物が橙(ダイダイ)、天叢雲剣に見立てた物が串柿である」
とされ(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8F%A1%E9%A4%85)、
「穀物神である「年神(歳神)」への供え物であり、『年神(歳神)』の依り代である」(仝上)。
なお、和漢三才図会(1712年)には、
「天武天皇4年からの習俗として、『しとき餅』の項に『御鏡是也』と解説された祭餅の図がある。これは、稗や黍餅のことで、稗(きび)団子の類。古人は黍や稗を多用したが、江戸時代には鏡に似せて糯米で円形に作るため、俗に御鏡と呼ばれた」
とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8F%A1%E9%A4%85)、とか。
鏡餅飾りを神棚、具足、床の間、鏡箱と信仰するところや愛好する具に供えることが流行したのは江戸時代、
という(たべもの語源辞典)。
「鏡餅の上置きとして、ダイダイ・コンブ・クシガキなどを載せ、関西では櫛型に切った豆腐を載せた」
とある(仝上)。
参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
ラベル:かがみもち