2020年01月15日

トリ


「トリ」は、「とり」http://ppnetwork.seesaa.net/article/458483418.html?1577499423で取り上げた「鳥」ではなく、

取り、

と当てる、

寄席で、最後に出演する者、

の意である。これをメタファに、

最後に上映または演ずる呼び物や番組、又それを演ずる人、

の意に広げて使われる(広辞苑)。「寄席」は、

「講談・落語・浪曲・萬歳(から漫才)・過去に於いての義太夫(特に女義太夫)、などの技芸(演芸)を観客に見せる興行小屋」

であるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%84%E5%B8%AD

「始まりは18世紀中頃で、演目は浄瑠璃、小唄、講談、手妻(手品)などで、寛政年間(18世紀後半)以後、落語が主流となった。場所が常設小屋になったのは文化年間(19世紀初頭)ごろからで、天保の改革で数が制限されたが、安政年間(19世紀後半)には約400軒と急増した)」

とあり(仝上)、古いのは講談らしい。寄席の起源は、

「一般的には江戸初期に神社や寺院の境内の一部を借りて、現在の講談に近い話を聞かせる催し物が開かれていたもの(講釈場)である。ただ、これは不定期に催されるものであったようである。これが原型となって、初めて専門的な寄席が開かれたのは、寛政10年(1798年)に江戸下谷にある下谷神社の境内で初代・三笑亭可楽によって開かれたものとされ、当神社には現在の定席四席による寄席発祥の石碑がある。当初は『寄せ場(よせば)』と呼ばれ、後に寄席と呼ばれるようになった。」(仝上)

「トリ」とは、

興行の一番最後に出る芸人。主任ともいわれる、

と落語芸術協会のホームページhttps://www.geikyo.com/beginner/dictionary_detail.html#toriには載る。だから、

「主任格であることから『トリ』には『主任』が当てられていた」

ともある(語源由来辞典)。

「トリ」は、

真打、

の意ともある(広辞苑)。で、日本語源大辞典には、

主任格の真打は当夜の収入を全部取り、芸人たちに分けていたところから取り語りまたは真ヲ取ルの略(すらんぐ=暉峻康隆)、

と載る。日本語源広辞典も、「トリ」は、

取り前、

の意とし、

寄席で、一晩の収入を、会場費と真打の取り前とに、分けて取ります。これがトリです。不入りの時、自腹を切って出演費の面倒を見ます。そこで、真打の俗称となりました、

とする。「トリ」は、真打の意である。トリを取れるから真打というわけである。江戸語大辞典には、

真を打つ、

と載り、

眞は心、中心の意。一座の中心になって最後に出演する。打つは。演ずる、興行する意、

と載る。あるいは、

落語、講談などの一座の主任、またはその格式ある者をさす、

とある。「心打」と当てたりするが、「心」の意の、

真ん中、中心、

の意のようである。ただ別に、「真を打つ」は、

「昔、夜の寄席での高座の明かりはすべてロウソクでした。寄席で最後の演者が落語を終える時に、明かりのロウソクの火を消すためにロウソクの芯を切り落としていた様子から真打と伝えられています。つまり、真打とは高座で主任(トリ)を勤めることができる実力のある噺家のことを指します。落語の修業の成果を自分の師匠だけでなく数多くの落語関係者に認められ、たくさんのご贔屓さんができた結果、真打となることが許されます。」

ともあるhttps://allabout.co.jp/gm/gc/207013/

和蝋燭.jpg


ローソク云々の是非はともかく、「真打」は、不入りなら、自腹で賄うだけの力量があるからこそ、

トリをとる、

ことができる、ということなのだろう。

「真打」は、今日、

前座→二ツ目→真打、

と、落語家の資格制度のような意味合いになっているが、本来は、

トリ、

と同義で使われていたようである。前出の落語芸術協会には、「真打」は、

落語家の位。真打ちになると寄席で主任になれる。また、弟子を取ることもできる、

とある。確かに資格としての「真打」を言っている。

「この語は、天保(1830‐44)ごろから使用されるようになった。現在は、前座、二ツ目、真打と昇進するが、大正時代までは、二つ目の古参で真打目前の者を三つ目、準真打と称した」

とある(世界大百科事典)。

なお、寄席の舞台を、

高座、

と呼ぶが、

「もとは仏教語で、釈尊(しゃくそん)が成道(じょうどう)したという金剛宝座をかたどり、説教のときに一般席より高く設けた台。これが話芸の世界に導入され、落語や講談など寄席芸を演ずる者が座る台をいうようになった。文化四年(1807)講釈師の初代伊東燕晋(えんしん)が(徳川家康の偉業を読む尊厳を理由にした出願を寺社奉行が許可し)畳1枚(三尺×六尺)の大きさの固定した高座をつくったが、文化・文政(1804‐30)ごろの初期の寄席は高座がないのが普通で、小さな壇がある程度だった。天保(1830‐44)ごろから、間口9尺(約2.7m)から2間(約3.6m)、奥行9尺ぐらいの高座ができ、明治以後現在までの大きな寄席では、間口3、4間となった。」

とある(日本大百科全書、世界大百科事典、http://www.rakugo.or.jp/kouza-kamishimo.html)。

因みに、前座は、

仏教における前座(まえざ)説教、

が語源。二ツ目は、

前座と真打の間。前座に続き、二番目に高座に上がるため、

そう呼ばれるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%90%BD%E8%AA%9E%E5%AE%B6、とか。

参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:真を打つ トリ
posted by Toshi at 05:36| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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